要旨
  • CMEグループが新たに導入したS&P500 Month-End(SME )指数先物・オプション複合商品は、市場参加者に、月末時点のリスク・エクスポージャー管理・ヘッジ、資金効率の向上、および規制上の自己資本要件への対応に可能にする、特化型の運用ツール群を提供します。
  • 月末の評価時点をより細かく把握することは、パフォーマンス報告の正確性やポートフォリオ管理の精度を高めるうえで極めて重要です。すなわち、SME先物・オプションは、市場インパクトやトラッキングエラーを抑制しつつ、指数終値での現物決済に合成的にアクセスするための有用な手段となります。
  • Month-End 先物・オプション市場における価格発見と流動性は、次のような柔軟な執行チャネルを通じて利用できます。すなわち、指数終値ベース取引(BTIC)、 関連ポジション交換取引(EFRP) および ユーザー定義スプレッド (UDS)です。
  • 特筆すべき点として、お客さまがオプションを単体で取引できるほか、中央注文板(CLOB)[1] を通じた執行、UDSを用いた戦略取引、さらにはオプション・ブロック取引にもアクセスできることです。
  • BTIC取引およびEFRP先物取引は、市場参加者にとって特に重要な役割を果たします。その理由としては、以下の点が挙げられます。:
    • BTIC取引を利用すると、まだ確定していないS&P 500公式終値に対して、合意したベーシズで指数先物を取引することができます。
    • 指数先物を用いたEFRP取引は、合成的な資金調達コストを分散するための有効な代替手段となる可能性があります。

S&P500 Month-End先物・オプションの利用

2025年9月に導入されたS&P 500 Month-End 商品群は、特定のエクスポージャー管理やリスク管理のニーズに対応するために設計されており、精度・スケール・効率性に重点を置いた設計となっています。SME 商品群は、以下の主要な用途や利用シーンにおいて、利用者の利便性を最大化するよう最適化されています。:

1. 月末リバランスをシームレスに実行するポートフォリオ管理

S&P 500 Month-End先物・オプションは、月末および四半期末のリバランス・サイクルに、ヘッジ取引を直接的かつ的確に連動させるように設計されています。これにより運用者は、特定の価格ポイントに対して株式エクスポージャーを正確にヘッジし、潜在的なトラッキングエラーを最小限に抑えることができます。

2. リスク管理

本商品は、BTIC取引を中心に流動性が集まりやすいよう明確に最適化されており、中央注文板(CLOB)での執行、大口ブロック取引、機関投資家規模のポジションにも対応しています。主な特徴は次のとおりです。:

  • より大きな契約価値:SMEの契約乗数は100ドルで、標準的なE-mini S&P 500(ES)先物の2倍に設定されています。[2] これにより、大規模なポートフォリオをヘッジする際の運用効率が一段と高まります。
  • 取引所取引および店頭取引:執行方法は、大口取引をサポートするように設計されています。

3. 資本効率

市場参加者は、S&P 500のエクスポージャーを効率的に拡大・調整することができます。メリットは次のとおりです。:

  • 証拠金相殺の適用可能性:CME清算エコシステム との統合により、SPAN 2 モデル を通じて他の株価指数先物[3] との証拠金相殺が可能となり、資本効率が大幅に向上します。

なぜ今なのか?

S&P500 Month-End 商品群は、月末・四半期末といった特定の評価日に合わせて大規模なヘッジニーズを持つ投資家向けに設計された、日付特化型のヘッジ手段です。この機能により、ポートフォリオ・マネジャーは、パフォーマンス報告と純資産価値(NAV)算定との整合性を確保でき、さらに市場インパクトや潜在的なトラッキングエラーの発生を最小化することができます。以下では、BTIC取引の仕組み、他の株価指数先物でどのように活用されてきたか、そして月末の特定評価ポイントをどのように実現するかについて説明します。

指数終値ベース取引(BTIC)

  • Globex(CMEティッカー:SMET、Bloomberg: SYYA)で取引可能なBTIC取引は、S&P 500の公式終値に対して合意したベーシスで、SME先物を取引できる仕組みで、スクリーン取引とブロック取引のいずれにも対応しています。BTIC取引を使うことで、市場参加者はS&P500の公式終値に対して合意したベーシスでS&P 500 Month-End先物を取引できます。
  • 2025年には、E-mini S&P 500、E-miniナスダック100、E-miniラッセル1000、E-miniラッセル2000、E-miniダウといった主要指数先物におけるBTIC取引が、現物市場における月末のMOC(Market on Close:終値取引)取引フローの42%を占めました。これらの特定の先物契約におけるBTIC取引は、名目金額ベースで見ると、月末時点では通常の平均日次取引量の約2倍に達する傾向があります。図表1をご覧ください。

図表1:月末におけるBTIC名目取引額と現物市場MOC比率(指数先物)

市場参加者は、EFRP取引を通じてSME先物を取引することもできます。

  • EFRP取引は、保有しているエクスポージャーの保有手段(ビークル)を切り替えるために使用される市場中立的な取引です。例えば、S&P 500のロング・エクスポージャーをETFで保有しているアセット・マネージャーは、相対交渉を通じて、そのETFポジションを同等のS&P 500 Month-End先物[4] ポジションに転換することができます。これにより、事前に合意した価格で正確に取引を実行でき、市場インパクトやスリッページを最小限に抑えることができます。
  • 資本負担の大きいETFや株式バスケットのポジションを、より資本効率の高い先物ポジションに転換することで、バランスシートを柔軟に管理でき、資本収益性を高めることができます。
  • EFRP取引は、当事者間で私的に交渉して行うブロック取引であり、スリッページや取引分割リスク(ブレイクアップリスク)を最小限に抑えることができます。EFRP取引は、取引所規則である「ルール538」 によって運用・管理されています。詳細なガイダンスや追加情報については、「ルール538」に関する「市場規制アドバイザリーノーティス」 をご参照ください。

合成的な資金調達コストを分散できる能力

一般的に、資金調達コストは月末にかけてピークに達する傾向があります。図表2では、その例として担保付翌日物調達金利(SOFR )とフェッドファンド 翌日物金利の差を比較しています。株式の調達コストは日々変動するため、S&P 500 Month-End先物の月次限月を活用することで、市場参加者は資金調達コストを分散することができます。

図表2:翌日物金利差  SOFR vs.フェッドファンド (%)

EFRP取引は、従来のレポ取引(現先取引)に代わる効率的な手段を提供します。レポ取引は、証券のバスケットを担保として差し入れ、現金を借り入れる「担保貸付」の一種です。

  • 合成的な借り入れ:S&P 500 ETFを保有していて現金が必要な投資家は、EFRP取引を使って「ETFの売り+S&P 500 Month-End 先物の買い」という取引を行うことができます。この取引により、ETFを売却して即時に現金化しつつ、先物を通じてS&P 500のロング・エクスポージャーを維持することができます。EFRP取引で合意される「金利」とは、取引当事者が取り決めるベーシスのことを指します。
  • 合成的な貸し付け: 余剰資金を持つ投資家は、EFRP取引を使って「S&P 500 Month-End先物の売り+ETFの買い」の取引を行うことができます。この取引により、余剰資金を現物資産に投じつつ、先物のショートポジションで市場リスクをヘッジすることができます。得られるリターンは取引で合意したベーシスそのものです。
  • EFRP取引は、当事者間で一つのベーシスを交渉して決める二本立ての取引であり、そのベーシスがEFRP取引の調達レートとして明示的に示されます。一方、リバーサル側の金利は明示されず、取引構造の中に暗黙的に含まれています。

ユーザー定義スプレッド(UDS)のデルタヘッジ・レッグ - オプションと先物の組み合わせ

市場参加者は、通常の中央注文板(CLBO)でオプションを取引できるほか、必要に応じてユーザー定義スプレッド(UDS)を利用した取引や、オプション・ブロック取引も行うことができます。単体のオプションポジションやオプション戦略に付随するデルタヘッジ取引は、ユーザー定義スプレッド(UDS)を使って実行することができます。ユーザー定義スプレッド(USD)は、気配リクエスト(RFQ)プロセスを通じて作成され、その結果、各UDSごとに専用の中央注文板(CLOB)が生成されます。市場参加者は、流動性の高いE-mini S&P 500(ES)先物市場を利用して、SMEオプションのデルタリスクをヘッジすることができ、これにより両市場の間に「流動性の橋渡し」をすることができます。

参考として、以下の図表3では、2025年12月時点で取引されていた「E-mini S&P 500 の2026年2月第3週限のオプション」に関してGlobex上で提示された「プット・スプレッド・カラー」戦略の実際の例を示しています。このとき顧客は、市場に対して気配リクエスト(RFQ)を送り、次のような構造の取引について価格提示を求めました。

  • 7250コール1枚売り
  • 6750プット1枚買い
  • 6350プット1枚売り

図表3:Globex上で提示された「プット・スプレッド・カラー」戦略の例

CC

(商品コード)

商品

説明

数量

ビッド

テオ

オファー

数量

最新

EW3

E-Mini S&P 500 Fri Weekly Opt

Feb26 Wk3 6750.00/6350.00 v 7250.00 v 7250.00 PSvC

43

19.50

20.47

22.75

43

31.50

出典:CMEグループ、2025年12月3日時点の気配値

S&P 500 Month-End先物オプションでも同様に、市場参加者は特定の戦略に関心があることを市場に知らせるために、気配リクエスト(RFQ)を送信することができます。生成されたユーザー定義スプレッド(UDS)は、中央注文板(CLOB)に登録されます。その板には最大40本のレッグを含めることができ、先物によるデルタヘッジを組み込むことも可能です。トレーダーは、これらの戦略において、ヒット・テイク注文、デイ注文、またはグッドティルキャンセル(GTC)注文を発注することができます。

ポートフォリオを精密にヘッジする方法

S&P 500 Month-Endオプションについては、以下の設計上の特徴が重要です。:

決済:  S&P 500 Month-End先物の最終清算価格は、S&P 500指数の公式終値で、基準時は当該月の最終営業日の東部標準時(ET)午後4時です。

市場構造:本市場の設計は、中央注文板を通じたスクリーン取引に加え、投資家間で個別に条件を交渉して行うブロック取引にも対応するものとなっています。

オプション:  Month-Endオプションはアメリカン型であり、特定の月のS&P 500 Month-End 先物に決済されます。例えば、11月限のオプションは11月限の先物に決済されます。アメリカン型オプションは、買い手が満期日まで任意の日に権利を行使することができます。相反する指示も認められています。特筆すべきは、この仕組みによりオプション利用者は、月末の指数終値をオプションポジションや関連ストラクチャーの満期決済価格として狙うための有用な手段を得られる点です。

結論

S&P500 Month-End (SME)先物・オプションの複合商品は、月末や四半期末の評価ポイントに合わせて緻密なリスク管理を必要とする機関投資家向けに設計された、特化型のツールキットです。この商品は、大きな契約乗数やBTIC取引機能を中心とした先物市場の構造といった独自の設計により、市場インパクトを最小限に抑えたヘッジ用に最適化されています。S&P500 Month-Endオプションを利用することで、市場参加者は関連するストラクチャーにおいて、月末の指数終値を満期決済価格として狙うことができます。ヘッジ用途にとどまらず、SME商品群はEFRP取引を通じた資金調達の管理手段としても活用できます。

参考

[1]CLOB - 中央注文板。
[2] 本稿執筆時点の市場水準では、名目価値は約67万ドル。
[3] 清算された金融先物における証拠金効率。
[4] E-mini S&P 500先物(ES)を使っても実施可能です。
[5]よくある質問(FAQ):S&P 500 Month-End先物・オプション


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