はじめに
オプション市場は近年、著しい成長を遂げています。特に上場指数オプション市場は進化を遂げ、現在では毎営業日に満期日が設定されており、行使価格も非常に細かく密集した水準で提供されています。同一市場に対応する複数の手段、すなわち指数先物オプション、ETFオプション、現金決済型指数オプションが存在するため、市場参加者が同じ取引意図を実現するための選択肢に事欠くことはありません。
どの商品を選択するかは、各商品の相対的な流動性、選択に伴う証拠金コスト、商品ごとに異なる運用効率や証拠金効率といった要因に左右されます。そのため、商品選択に影響を与える主要な属性は、より広範な議論の対象となります。
以下のページでは、主にS&P 500指数関連商品を例にして、流動性と証拠金コストについて重点的に説明します。最良執行方針における重要な要素の一つは、不要なコストを回避し、可能な限り価格改善を実現することです。具体的には、「売買スプレッドの内側」で約定することです。この分析手法は他の指数にも適用可能であり、特に投資家が複数の指数を戦略的に組み合わせてポートフォリオを構築する場合に、より有効に機能します。
流動性は、例えば公表される売買スプレッドのような単一の数値で表せることはほとんどありません。全体像は非常に複雑であるため、このテーマをより包括的に理解するには、市場環境について一定の理解を持つことが有益です。従って、市場環境の理解はより広範な議論へ進むための良い「出発点」となります。
CMEグループのオプションを活用した見通し表明とヘッジ戦略の価値に関するハイレベル概要:
- 24時間体制で稼働し、透明性と流動性を備えた電子市場
- 特定のニーズに対応するブロック取引市場の柔軟性
- すべての市場参加者に対してポートフォリオベースの証拠金制度が導入されており、S&P 500、ナスダック100、ラッセル2000、ダウ平均株価などの主要指数に関連するオプションと先物の間でクロスマージンが可能
- 気配リクエスト(RFQ)のプロセスを通じて、投資家が定義したスプレッド(UDS)を扱う複合注文が形成され、(デルタヘッジを含む)複数のポジションを一括で同時に執行できる仕組みが、中央注文板(CLOB)上で提供。これにより複雑な戦略へのアクセスがシームレスに可能
オプション市場における「流動性」の理解
市場マイクロストラクチャーの文献では、流動性を測る決定的な指標として、売買スプレッドや板の厚みなど、さまざまな統計が盛んに取り上げられてきました。各統計は市場流動性の一側面を示すに過ぎません。これらの統計を単独で見ると、単純に解釈されたり誤解を招いたりする可能性があるため、トレーダーは最も効果的な戦略を決定し、資本効率とコスト効率に優れた流動性プールを見極める際には、市場の複数の側面を総合的に考慮する必要があります。
例えば、CMEグループのE-mini S&P 500先物(以下ES)の注文板における流動性は、近年、市場が混乱している局面において疑問視されてきました。注文板の一時的な断面が、証拠として提示されるのが一般的でした。ESは常に1ティック刻みで取引されていることから、市場変動が大きい局面では、注文消化による板の厚みの減少が流動性不足の証拠として示されました。実際には、未約定の注文が消化されるたびに板の厚みが補充されていたため、「流動性が低い」とされた注文板でも取引量は著しく多かったという事実は、通常あまり注目されませんでした。
他の取引所では、S&P 500オプションは売買スプレッドがより狭く優れているとされていますが、実際に取引執行に用いる商品を選ぶ際には、市場マイクロストラクチャーの動態やポートフォリオ証拠金の効率性など、他の要因も考慮する必要があります。
流動性を評価するもう一つの一般的な視点は、表示されている注文板の厚みです。図1aおよび図1bは、ESオプション、SPXオプション、SPYオプション[1]の各注文板の厚みを、2025年第3四半期(低ボラティリティ期)、第2四半期(高ボラティリティ期)、さらに2025年4月(非常に高いボラティリティ期)別に示しています。なお、縦軸はESオプション契約換算での最上位の板の厚み(レベル1)を示しており、SPXオプションとSPYオプションの板の厚みも比較のために換算されていることにご留意ください。
また、ESオプションの板の厚みは、米国取引時間中のSPXオプションおよびSPYオプションの板の厚みと比較されていることにもご留意ください。なお、SPYオプションは米国時間外には取引されないため、ESオプションおよびSPXオプションの板の厚みのみが表示されています。
図1a:2025年第2四半期および第3四半期の米国取引時間中の権利行使価格のマネーネス別の最上位の厚み。縦軸 – ESオプション契約換算での数量。第2四半期(特に4月)の株式市場は、第3四半期と比べてはるかに変動が激しかった。
図1b:2025年第2四半期および第3四半期の米国取引時間外の権利行使価格のマネーネス別の最上位の厚み。縦軸 – ESオプション契約換算での数量。
いくつかの観察結果がすぐに明らかになります。ESオプションの表示された板の厚みは、各期間においてほぼ全ての権利行使価格帯で他よりも厚くなっています[2]。マネーネスによっては、ESオプションの板の厚みは、同等条件のSPXオプションよりも50%以上厚くなっていました。予想どおり、表示された板の厚みは市場変動が小さい市場でより厚くなっていました。この件については後ほど詳しく説明します。
前述のとおり、単一の統計から意味を読み取る際には慎重さが必要な点にご留意ください。実際、米国時間外の板の厚みが米国取引時間中と同等かそれ以上に見えることもありました。米国商品を対象とする取引市場が米国時間外により高い流動性を示すというのは理解しがたいことです。実際、米国時間外に板の厚みが厚い局面では、一般的に売買スプレッドがより広くなっていました。
前述のとおり、市場の流動性は単に売買スプレッドや板の厚みだけで判断できるものではありません。先物のオプションの板の厚みが優れていることは上記で確認されましたが、特定の顧客にとって最適な商品を判断する際には、さらに踏み込んだ分析が必要です。この種のグラフをさらに提示しても、市場流動性の理解が大きく進むわけではありません。その代わりに、オプション市場の市場マイクロストラクチャーについて短く触れるのが適切です。
S&P 500オプション商品の市場マイクロストラクチャー:スプレッド内での約定
S&P 500オプションは豊富に用意されており、トレーダーは多様な契約形態で利用できます。実際、ES先物オプションとSPX現金決済型指数オプションには日次満期があり、さらにMicro E-mini S&P 500先物オプションやSPY ETFオプションなど、S&P 500に連動するETFオプションにも日次満期があります。加えて、S&P 500オプションは店頭(OTC)でも取引されています。
各満期ごとに、非常に多くの権利行使価格が取引可能な形で上場されています。原資産価値に近い権利行使価格帯では、権利行使価格が5ポイント刻みで設定され、各権利行使価格にプットとコールが上場されているため、同時に数千ものESオプションと同数のSPXオプションが気配提示されていると言っても決して誇張ではありません。つまり、オプション市場のマーケットメーカーは、高い相関を持つ数千もの商品に対して、板に置かれた買い注文や売り注文を頻繁に発注・更新しているのです。これらはすべて、CMEグループのES指数先物を基軸とした価格発見に依存しています。この点については後ほど詳しく説明します。例えば、2,000種類のESオプション商品(権利行使価格や満期が異なる銘柄)にそれぞれ5枚の指値注文を出すと、合計で買い・売り合わせて10,000枚の契約が板に並ぶことになります。これは確かに非常に大きなリスク負担を意味する可能性があります[3]。
オプションカーブ全体で流動性を提供・更新する規模感を理解するために、指数や指数先物が1ポイント上昇した場合を考えてみましょう。デルタが+0.5のコールと-0.5のプットは、それぞれ現資産の動きに応じて価値が0.50指数ポイント増減します。S&P 500オプションは権利行使価格や満期が非常に細かく設定されているため、原資産指数が大きく動くとマーケットメーカーは膨大な数の気配を更新する必要があります。もし指数上昇に応じて気配が更新されなければ、コールは過小評価され、プットは過大評価されてしまいます。指数がティックごとに変動するため、オプションカーブ全体の価格を更新する必要があり、これは非常に大きな負担となります。結果として、マーケットメーカーがその時点で提示できるリスク量を制約する要因となる可能性があります。
したがって、市場に大きな値動きの兆しが見えると、オプションのマーケットメーカーと他の市場参加者の間で電子取引上で価格更新を競い合う状況が発生する可能性があります。マーケットメーカーは気配を修正しようとし、プライステイカーは修正前の板注文で取引を成立させようとするのです。
従って、次のことが容易に理解できます。
- 膨大な種類のオプション商品が存在するため、マーケットメーカーは逆選択リスクを管理する必要があり、提示する売買スプレッドの幅や注文数量を調整します。同じリスク許容度であれば、売買スプレッドを広げることで、より大きな注文数量を提示することが可能です。同じリスク水準を維持するためには、より狭い売買スプレッドには、より小さい注文数量を組み合わせる必要があります。
- さらに重要なのは、マーケットメーカーはヘッジコストが要求する水準以上に広い売買スプレッドを維持する必要があるということです。市場の変動が大きくなるほど、バッファーを広げる必要があります。つまり、市場のボラティリティが高まれば、マーケットメーカーは板に表示する注文数量を減らすことで、全体のリスクを抑制することになります。
後者の点には重要な意味があります。つまり、マーケットメーカーが数千もの相関する商品に板注文を置くのではなく、単一の気配リクエストに応答する形で取引するのであれば、売買スプレッドを狭め、ヘッジコストに近い水準まで引き下げる余地が生まれるのです。
第二に、マーケットメーカーは個別性がありながら急速に変動する既存ポジションの在庫を管理しているため、気配リクエストに対して買い側または売り側でより積極的に応答する場合があります。
従って、オプション市場において価格改善が起こる可能性は十分にあります。市場参加者にとって、注文を板に置いて調整しながら「執行する」ことが有利に働くことがよくあります。取引は表示気配ベースの売買スプレッドの範囲内で約定することがよくあるのです。図2は、市場参加者が利用可能なCME Directアプリから取得した、表示気配ベースの売買スプレッド内で約定した取引例を示しています。
図2:表示されて気配ベースの売買スプレッド内で約定した取引例のスクリーンショット: 2025年11月11日
補足 – S&P 500指数市場の流動性と価格発見機能、標準的なヘッジ手段としてのES先物
ES市場では長らく、S&P 500が最速の指標、すなわち価格発見の中心と見なされてきました。
- E-mini S&P 500先物(ES)契約は、取引可能な形で指数を一つの証券にまとめた商品であり、過去数年間で、その取引量はS&P 500 ETF全体の総取引量の最大10倍に達し、構成銘柄の上場市場の総取引量の約5倍、さらに米国株式市場全体(Reg NMSシステム)の総取引量の約1.5倍に達しています。ES先物価格は容易に観測でき、リアルタイムでほぼ瞬時に更新されます。すべての市場データ購読者が同一の価格と板情報を確認できる透明性を備えています。これは、米国株式市場全体(Reg NMSシステム)を構成する銘柄の価格に基づいて計算が必要な数値とは異なります。その場合には必然的に真の価値に遅れをとります。
- 取引活動の大きな違いから明らかなように、ES先物価格が最初に動き、ETF、ESオプション、SPXオプション、SPYオプションなどS&P 500関連市場全体を牽引します。また、ES先物は標準的なデルタヘッジ手段として機能しています。実際、SPXオプションのマーケットメーカーはES先物でヘッジを行っており、ES先物・ESオプション・SPXオプションのポジションは、CMEとOCC(オプション清算機関)のクロスマージン制度により単一のポートフォリオとして証拠金が算出されています。
- ES先物とESオプションはCMEグループに上場されていますが、SPXオプションは別の取引所を利用しているため、またマーケットメーカーがCMEグループ施設の近くにサーバーを設置していることから、ESオプションがES先物の市場変動に最初に目に見える形で反応するのは当然です。取引指示は、たとえほんの一瞬であっても、CMEグループから離れた施設に届くまでには時間を要します。その後、SPXオプションにおいても対応する変化が起こります。先行・遅行の関係を決めるのは人為的な意図ではなく、市場構造という物理法則のような必然性です。
図3:CME GlobexにおけるESオプション戦略タイプの分布(2025年第1四半期から第3四半期のデータ)
オプションのスプレッド取引と組み合わせ戦略
オプション取引において市場の改善につながるもう一つの側面は、多くの取引がスプレッドやコンビネーション取引(いわゆる戦略)の一部として実行されている点です。図3は、2025年第1四半期から第3四半期における各種人気オプション戦略の取引量分布を示しています。オプション取引量の50%弱が、プットやコールのバーティカル、バタフライ、ストラドル/ストラングルなど、よく知られた戦略の一部として消化されました。完全にオーダーメイド型の構造(独自設計の取引戦略)も、CME GlobexにおけるESオプション取引量に非常に大きく寄与しています。
日によっては、マーケット参加者によってGlobexを通じて10,000件以上のスプレッド/コンビネーション取引リクエストが発注されています。さらに、2025年には、ユーザー定義のオーダーメイド型スプレッド戦略(UDS)を通じて、1日あたり50万枚以上のESオプション契約が取引されています(これはE-mini S&P 500オプション市場全体の44%を占めています。)。新しい戦略のリクエストがあると、その戦略専用の注文板が新たに作成され、マーケットメーカーに対して気配リクエスト(RFQ)メッセージが送信され、注文板が埋められる仕組みになっています。
マーケットメーカーによる戦略取引向けの売買気配は、単体銘柄の注文板に示される気配よりも優れていることがよくあります。例えば、バーティカル・スプレッドにおいては、単純に1つ目のコールの買い気配と2つ目のコールの売り気配の差をそのまま価格として提示するのではなく、戦略としてパッケージ化されたネットの売買気配が提示されます。このネット気配は、バーティカル全体のデルタが各レッグ単独よりも(はるかに)低いことを反映しています。このように、参加者から関心の表明に加え、リスクが軽減されることで、マーケットメーカーは単独の注文板から示唆される気配よりも有利な価格を提示する可能性が高くなります。
さらに重要なのは、気配リクエスト(RFQ)がCME GlobexとそのESオプション市場に接続しているすべての市場参加者に配信されることです。この透明性のある仕組みにより、戦略への関心は、特定の取引ピットにアクセスできる一部の参加者に限定されるのではなく、より幅広い投資家層に及ぶことになります。論理的に考えれば、参加者がより広く分布すれば市場の質が向上することにつながります。さらに、他の市場参加者が反対の関心を持っている可能性もあり、その場合には、売買スプレッドの中間水準で取引が成立することになります。
オプションのブロック取引およびデルタ調整済みブロック取引
ESオプションではブロック取引が認められています。大口取引は、Globexの中央注文板(CLOB)以外で合意され、その後CMEに報告され清算されます。これにより、取引は全量が一つの価格で執行されることが保証されます。ここでは取引が分割されてしまう「ブレークアップ・リスク」はありません。他の取引所ではクロス取引の一部を取引ピットに公開し、流動性提供者間で共有される可能性がありますが、そのようなリスクはありません。図4bは、米国時間と米国時間外におけるGlobex取引とブロック取引の割合を示しています。
ブロック取引の交渉が非公開かつ二者間で行われる性質を踏まえると、ブロック取引はさらなる価格改善につながる取引プロセスを可能にします。すなわち、ブロック取引の純プレミアムは、ヘッジとして行う先物取引の約定価格に左右される可能性があります。
コール・バーティカル・スプレッドを考えてみましょう。もちろん、この取引は、ES先物を用いたデルタヘッジを当事者間でやり取りする形で組成することも可能です。例えば、デルタ0.2のESオプション200枚の取引は、40枚の先物を組み合わせて実行することができます。具体的には、200枚のコール・バーティカル・スプレッドを購入し、40枚の先物を同時に取引する形で、オプションの純プレミアムは先物の約定価格に基づいて設定されます。取引のデルタリスクを取り除くことで、バーティカル・スプレッドの価格はより有利になります。
しかし、バーティカル・スプレッドだけを望み取引にデルタヘッジを含めたくない顧客も存在します。一方で流動性提供者は、オプション戦略に伴うリスクを軽減するためにデルタをヘッジしたいと考えています。それによってオプション価格をより有利に提示できるようになるからです。
実際には、このような場合に対応するため、流動性供給者にはデルタを中立化するための事前ヘッジ取引を行うことが認められています。つまり、流動性供給者は自らのデルタ・エクスポージャーを完全にヘッジし、一方でプライステイカー(顧客)はヘッジを行いません。この取引プロセスは、取引当事者に同じリスク軽減機能を提供し、その結果、オプション戦略の価格改善につながります。しかも顧客は不要なデルタヘッジを自ら解消する必要がありません[4]。非常に大口のブロック取引や、相場が大きく変動している局面において、この取引プロセスは取引当事者双方に大きなメリットをもたらす可能性があります。
米国時間外におけるオプション取引の流動性
米国時間外におけるESオプションの取引量は相当な規模に達しています。E-mini S&P 500オプション取引の約17%は米国時間外に成立しており、この時間帯では他のどの市場よりも圧倒的に多い取引量となっています。米国市場が閉じても情報の流れは止まらず、取引活動も続いています。グローバル市場にとってベンチマークが重要であることを踏まえると、市場参加者は透明性の高い電子市場の恩恵を、ブロック取引制度の柔軟性により強化された形で、24時間享受することができます。
図4a:米国時間外に取引された取引量の割合
図4b:2025年1月から10月までに成立した取引のうち、Globex(電子取引システム)で成立した取引の割合とブロック取引として成立した取引の割合の比較
ポートフォリオ・マージニング
ES先物およびES先物オプションの利用者は、標準でポートフォリオ・マージニングの恩恵を享受できます。すべての先物およびオプションのポジションは、CME Clearingで清算される際にポートフォリオ全体としてリスクが評価されます。市場参加者が清算会社からCME-OCCクロスマージン制度への参加を許可されていない場合は、SPXオプションはES先物との組み合わせによるポートフォリオ・マージンの恩恵を受けられません。一方、ESオプションはこの証拠金相殺の恩恵を自動的に受けられます。
CMEグループは、適切な証拠金カバレッジを確保しつつ、資本を効率的に活用できる体制を確保しています。以下の分析で、ポートフォリオ・マージニングの利点を示しています。SPAN2証拠金モデルでは、個々のポジションごとではなく、ポートフォリオ全体の純粋な最大損失想定に基づいてリスクを評価します。
2つのポートフォリオ・マージニング制度によって算出される証拠金要件は、必ずしも一律ではありません。証拠金要件は、保有する具体的なポジションや、算出方式が相殺可能なポジションを認識できるかどうかによって、大きく異なります。以下の例は、CME ClearingのSPAN2証拠金モデルがOCCモデルと比較してどのように機能するかについて、いくつかの知見を提供しています。
この分析では、ロング・バーティカル・コール・スプレッドをショート先物契約でヘッジしたポートフォリオを使用しています。2025年12月某日を例にすると、S&P 500指数は6850で約定し、12月限のE-mini S&P 500先物(ES)は6861の気配値が出され、翌年3月限のES先物は6920で約定していました。この分析では、権利行使価格が300ポイント離れたコールスプレッドを取り上げ、比較を容易にするためにCMEグループのポートフォリオとOCCのポートフォリオの双方で同じ権利行使価格を使用しています。
CMEグループのポートフォリオは、12月限の週末満期オプションを使用したブルコールスプレッドで構成され、2026年3月限のES先物のショートポジションでヘッジされています。CMEグループのポートフォリオの詳細は以下のとおりです[5]:
- 2025年12月限のE-mini S&P500週末満期オプション、権利行使価格6700のコールを2枚買い持ち(満期まで残り18日)
- 2025年12月限のE-mini S&P500週末満期オプション、権利行使価格7000のコールを2枚売り持ち(満期まで残り18日)
- 2026年3月限のE-mini S&P500先物、2枚売り持ち(満期まで残り109日)[6]
OCCポートフォリオでは、疑似的なプットコールコンボを使用しています:
- S&P500週末満期オプション、権利行使価格6700のコールを1枚買い持ち(満期まで残り18日)
- S&P500週末満期オプション、権利行使価格7000のコールを1枚売り持ち(満期まで残り18日)
- 原資産の現在価値に最も近い(ATM)疑似的な先物(満期まで残り109日)
- S&P500週末満期オプション、権利行使価格6850コールを1枚売り、同じ権利行使価格のプットを1枚買い持ち
2つのポートフォリオを比較するために、総初期証拠金、純オプション価値 (ANOV)、および総リスク要件の違いを示す分析を実施しています。以下の表は、CMEグループとOCCの間で、初期証拠金とコスト削減効果に大きな差があることを示しています。
オプション価値を基準にすると、CMEグループは、純オプションクレジットが20,175ドルとなり、OCCの11,680ドルと比較して、資本効率に優れています。純オプションクレジット額は総リスク要件に対する担保として直接機能し、その結果ポートフォリオ全体の初期証拠金要件が軽減されます。これに対して、OCCでは(株価指数先物が存在しないため)疑似的なショート先物ポジションを構築する必要があり、その結果、初期の現金負担が大幅に増加します。具体的には、OCCの疑似ポジションに含まれる権利行使価格6850のATMコール売りが、総リスク要件30,447ドルのうち約28,000ドルを占めています。
図5:証拠金比較
要するに、CMEグループのポートフォリオは標準的にポートフォリオ・マージニングを採用しており、ES先物と週末満期オプションを相殺することができます。コールスプレッドから得られる純オプションクレジットは、初期証拠金と残余デルタを直接減少させます。具体的には、コールスプレッドのデルタ(約+1)がショート先物ポジションのデルタ(-2)を部分的に相殺し、残余デルタは-1となり、その結果ポートフォリオ全体の初期証拠金要件が軽減されます。
図6:ギリシャ指標の合算的なリスク感応度
OCCポートフォリオでは、ショートコール・ポジションが疑似的なショート先物ポジションに含まれているため、証拠金面で大きな不利が生じています。
CMEグループが標準的に採用しているポートフォリオ・マージニングは、相殺関係にあるポジションを含むポートフォリオを取引する顧客にとって有利です。ポートフォリオの規模や複雑さが増すにつれて、相殺効果や証拠金効率が高くなる可能性があり、他の取引所の証拠金制度と比較して有利であることが判明するはずです。読者の皆さまには、CME Clearingが提供するツールCME Coreを使用して、自身のポートフォリオに対する参考証拠金を試算し、それをOCCにおける同等ポートフォリオの証拠金と比較することをお勧めします。
さらに、ポートフォリオ・マージニングはS&P 500関連商品群以外の商品にも適用されます。ナスダック100およびラッセル2000の先物・オプション商品も証拠金相殺の対象となっており、ポートフォリオ全体でさらに大きな証拠金削減の機会が得られます。
結論
これまでの議論は、読者の皆さまを唯一の最良の商品群へと導くことを意図したものでは決してありません。むしろ、市場参加者は代替的な商品群の適合性を評価すべきです。しかしながら、CMEグループのE-mini商品群は、取引アクセス性と資本効率の面で非常に競争力があることが判明するはずです。
- 単体オプション取引とスプレッド取引の双方について透明で公開された注文板が提供―不透明さのない純粋な価格発見の場
- 公開されている注文板に対して、より有利な価格で約定できる可能性
- E-miniオプションは24時間流動性が確保。他の商品群と比べて米国時間外でも取引が活発
- 大口取引制度が利用可能であり、特定のニーズに対応するブロック取引専用のブロックマーケットメーカーも存在
- CMEグループのSPAN2証拠金モデルを使用した効率的なポートフォリオ・マージニングは、CMEで取引されるすべての指数に関連する先物・オプションを対象に、ポートフォリオ全体のリスクを包括的に捕捉
商品群において多様な取引関心を持つ市場参加者にとっては、ポートフォリオ・マージニングによる全体的なコスト改善と取引アクセスの一貫性が、優れた解決策となるはずです。実際、2025年は、ナスダック100関連商品への関心が高まっており、CMEグループのナスダック100先物・オプションは大きな成長を遂げています。他の取引市場では、市場参加者の取引を支えるだけの同等の幅広い商品ラインアップを備えていることはほとんどありません。
CMEグループの株式オプションの近年の成長動向:
- 株価指数先物オプション全体の平均日次取引高(ADV)は、2020年の70万枚超から2025年第4四半期には140万枚へと97%増加しました。
- 同期間中に、E-mini S&P 500オプションの平均日次取引高(ADV)は、67万3,000枚から130万枚へと87%増加しました。
- E-miniナスダック100オプションはさらに大きな成長を遂げ、同期間中に、2020年の1万6,000枚から8万7,000枚へと440%以上増加しました。
参考
[1] SPYオプションは複数の取引所に上場されていることにご留意ください。市場横断的な注文回送ルールや注文フローの対価支払い取決めがあるため、注文板の厚みは実質的にあまり意味を持ちません。ここでは、参考としてNYSE ArcaにおけるSPYオプションの注文板の厚みを記載しています。
[2] 権利行使価格ごとに、「アウト・オブ・マネー」オプション(行使しても損失が出る価格関係にあるオプション)について注文板の厚みの最上位が測定されています。観察期間において測定対象となった商品は、残存期間0~15日のオプションで、ATM水準の98%~102%に位置するものです。
[3] CME Globexでマーケットメーカーに提供されている注文リスク軽減手法については、CMEグループの「大量気配保護機能(Mass Quote Protections)」をご覧ください。
[4] オプション大口取引の事前ヘッジングに関する詳細については、CMEグループの「市場規制アドバイザリーノーティス(MRAN)」に記載されている質問13をご覧ください。
[5] 契約価値を均一化するため、CMEグループのポジションは2倍にスケール調整しています。これは、ES契約が「S&P500指数×50ドル」を表すのに対し、SPXオプションは「S&P500指数×100ドル」を表すためです。
[6] DTEとは「満期までの日数」の略で、契約の残存日数を表します。