要旨
2026年初め、当社は主要なE-mini株価指数オプション(SER-9625R)の最小価格変動幅を変更し、E-mini S&P 500、Nasdaq-100およびラッセル2000の商品群全体に4段階の価格体系を導入しました。価格体系を2段階から4段階に拡大したことで、低プレミアム契約はより狭い刻みで取引できるようになった一方、高プレミアムのオプションでは広いティックが維持されました。前年比の実証的な市場データは、この市場構造の変更が主要な目的を達成したことを示しています。板の厚みを大きく損なうことなく、ビッド・アスク・スプレッドが大幅に縮小しました。
ティックサイズ変更の実施概要
社内では、特定商品のティック体系を可変ティックテーブル(VTT)と呼んでいます。VTTは、内部システムに対し、所定のオプションプレミアムの範囲で許容される最小価格変動幅を指示します。つまり、ティックは固定ではなく可変であり、オプションプレミアムの上昇に伴って最小価格変動幅も拡大します。
ティックサイズ変更前は、主要なE-miniオプションの最小価格変動幅は2段階のティックサイズのみで運用されていました。E-miniオプションのVTTスケールの初期導入以来、市場は大きく変化しました。多くの新しい参加者が市場に参入し、オプション取引量は大幅に増加しました。特に、値動きが速く価格水準の低い短期オプションが、この成長の大きな原動力となっています。
近年、2つの重要な市場ニーズが浮上しました。第一に、短期・低プレミアムのオプションにおける、よりきめ細かな価格発見への需要です。第二に、マッチングエンジンの遅延を減らしながら顧客注文を効率よく管理する必要性です。
価格水準の低いオプションでは、より小さいティックサイズによって、よりきめ細かな価格発見が可能になる一方、価格水準の高いオプションでは、やや大きいティックサイズによってメッセージ量とシステム遅延が減少します。以下に示す更新後のVTT構造では、ティックサイズが変化するオプション市場の動向により適合するようになっています。
スプレッド動向:日中分析
通常取引時間(RTH)の流動性を前年比で比較すると、E-mini S&P 500オプション市場のあらゆる満期区分およびプレミアム区分において、ビッド・アスク・スプレッドが大幅に縮小したことが確認されます。2025年8月11日から8月15日までのサンプル週と、2026年8月10日から8月14日までのサンプル週を比較することで、本分析ではこうした執行コストの削減効果を抽出し、定量化しています。
本分析では、従来のマネーネス区分(ITM、ATM、OTM)をオプションタイプ別に分けてスプレッド幅や板の厚みを評価するのではなく、流動性指標を絶対プレミアム区分(0-5、5-20、20-100指数ポイント)別に集計しています。
従来のマネーネス指標では、実質的な市場リスク特性やドル・エクスポージャーが見えにくくなることがよくあります。満期特性が大きく異なるにもかかわらず、短期のATMオプションと長期のディープOTMオプションが同じ名目プレミアムとなる場合があります(例えば、いずれも10指数ポイントで価格設定される場合です)。市場マイクロストラクチャーデータを名目プレミアム水準別に分類することで、コールとプットの双方について、ドルベースのリスクを基準に執行コストを標準化でき、マーケットメーカーのリスクエクスポージャーと資本投入を直接反映できます。
短期満期
以下のチャートは、0DTEオプションのビッド・アスク・スプレッドの比較を示しています。より長期の満期区分に関する完全なデータについては、付録Aをご参照ください。
0DTE満期 - コールとプットの合算(RTH)
実証分析の結果は明確です。当社の拡張VTT構造により、カーブ全体でスプレッドが縮小しました。スプレッドの縮小が最も顕著だったのは短期かつ高プレミアムのオプションでしたが、この効率性向上は、中期および長期の満期区分でも、各プレミアム水準にわたって一貫して見られました。
- 低プレミアム契約(0-5指数ポイント):執行コストは極めて低い水準を維持し、0.08指数ポイントから0.07指数ポイントへとわずかに縮小しました(約12.5%低下)。このバケットには、遠いOTMウィングや満期直前の超短期オプションなど、ドルベースの絶対リスクが低い契約が含まれます。
- 中プレミアム契約(5-20指数ポイント):流動性は前年比で改善し、平均ビッド・アスク・スプレッドは0.40指数ポイントから0.31指数ポイントへ低下しました。これは0DTEオプションの取引コストが22.5%低下したことを意味します。
- 高プレミアム契約(20-100指数ポイント):流動性が最も改善したのは高プレミアム契約で、スプレッドは2.36指数ポイントから0.78指数ポイントへ急低下し、前年比67%の縮小となりました。
財務的影響
満期区分とプレミアム水準の両方でスプレッドが縮小したことは、更新後のVTTスケジュールが市場参加者に即時かつ具体的な取引コスト削減をもたらしたことを示しています。経済的な効果は顕著です。例えば、プレミアムが5ドルの0DTE E-mini S&P 500で100ロットの注文を執行する場合、ビッド・アスク・スプレッドは0.09指数ポイント、すなわち0.40から0.31へ縮小します。1指数ポイント当たり50ドルとすると、この1件の注文だけで450ドルのコスト削減となり、高頻度戦略と戦術的戦略の双方で執行コストの負担が大幅に軽減されます。
注文板の流動性と板の厚みの維持
ティックサイズ変更に伴う主要なリスクの一つは、最良気配の板の厚みが低下する可能性です。しかし、レベル1(L1)およびレベル2(L2)の注文板を対象とした実証分析では、板の厚み(契約枚数ベース)は非常によく維持され、一部の満期区分では改善も確認されました。
短期満期(0DTEおよび1~5DTE):流動性は全体として堅調さを維持しました。低プレミアム(0-5ポイント)区分の板の厚みは、0DTEおよび1DTE~5DTEでわずかに低下しましたが、0DTEのよりプレミアムの高い区分(5-100ポイント)は2025年の水準とほぼ同等でした。1~5日満期区分では、低・中プレミアム区分(0-20ポイント)の板の厚みはやや低下した一方、高プレミアム区分(20-100ポイント)の注文板に提示されている流動性は、前年比で堅調さを維持しました。
中期満期(6~20および21~50 DTE):流動性は低プレミアム契約を中心に大幅に拡大しました。この拡大は21~50日満期区分で最も顕著であり、0-5ポイント区分の板の厚みは約790枚から約960枚へ大幅に増加しました。
結論
E-mini S&P 500オプションの過去の市場データは、VTTの強化が市場構造の最適化に成功したことを示しています。より細かなティックサイズ調整を可能にしたことで、VTTの導入は権利行使価格帯および満期区分全体にわたりビッド・アスク・スプレッドを縮小させ、市場参加者に即時の執行コスト削減をもたらしました。一方、流動性の重要指標である板の厚みはおおむね同水準を維持し、複数の主要セグメントでは改善も確認されました。
付録
1DTE~5DTE満期-コールとプットの合算(RTH)
6DTE~20DTE満期-コールとプットの合算(RTH)
21DTE~50DTE満期-コールとプットの合算(RTH)
取引所で取引されるデリバティブ及び清算される店頭(以下「OTC」といいます。)デリバティブは、すべての投資家に適しているわけではなく、損失リスクを伴います。上場デリバティブ及びOTCデリバティブはレバレッジ商品であり、取引に必要なのは契約金額のごく一部であることから、当初預けた金額を超える損失を被る可能性があります。本書は(適用法令の意味する範囲内において)目論見書又は有価証券の公募を構成するものではなく、また特定の投資又はサービスの購入、販売又は起用を推奨、提案、紹介又は勧誘するものでもありません。
本書の内容は、CMEグループが一般的な目的のためだけに作成したものであり、助言の提供を意図したものではなく、助言として解釈されるべきものではありません。本書は、お客様の目的、財務状況又はニーズを考慮したものではなく、本書に記載された情報に基づいて行動し、又はこれに依拠する前に、適切な専門家の助言を得る必要があります。発行日現在における本書内の情報の正確を期するために最善を尽くしていますが、CMEグループはいかなる誤謬や脱漏についても責任を負わず、情報の更新は行いません。さらに、本書に含まれるすべての事例及び情報は説明のためにのみ使用されており、投資アドバイス、実際的な市場経験の結果又は特定の製品若しくはサービスの販売促進とみなされるべきではありません。本書における規則及び仕様に関するすべての事項は、Chicago Mercantile Exchange Inc(以下「CME」といいます。)、Chicago Board of Trade, Inc.(以下「CBOT」といいます。)、New York Mercantile Exchange, Inc.(以下「NYMEX」といいます。)及びthe Commodity Exchange, Inc.(以下「COMEX」といいます。)の公式ルールブック、又は該当する場合にはCMEグループの他の特定の子会社取引システムの各ルールブックに従うものとし、これらのルールブックが優先されます。契約の仕様に関する事項を含め、いかなる場合も現行ルールを参照する必要があります。