CMEグループは、米国債先物取引におけるロールオーバーの進捗状況を日ごとに更新し、そのデータをチャート形式で公開しています。このチャートは、CMEグループの主要な米国債先物商品を対象に、取組高の日ごとの推移を視覚的に表示します。この「ロールオーバー 進捗追跡ツール(ペース・オブ・ロール)」は、国債先物のロールオーバー戦略の分析に役立つよう設計されています。ロールオーバーの期間中は、チャートが日ごとに更新されます。
米国債先物のロールオーバーとは、満期が近づいている四半期限月の取組高が解消され、期先の四半期限月に取組高が移ることをいいます。(例:満期となる9月限の先物から、12月限の先物への乗り換えなど。) 市場参加者は、ロールオーバーの期間中、当限のポジションを決済するとともに、期先のポジションを新たに保有します。
市場参加者は、満期が近づいている当限のポジションを決済し、期先のポジションに乗り換えることによって、国債先物をロールオーバーします。これには、二つの方法があります。
一つ目の方法は、個別の取引を二回行うことです。つまり、満期が近づいている既存のポジションをいったん決済し、期先のポジションを新たに取引することで、限月を乗り換える方法です。この方法では、当限と期先の先物を個別に取引する必要があるため、市場参加者は二重の注文執行リスクを抱えることになります。また、二度目の取引が完了するまでの間、相場の変動リスクにも直面します。そのため、ほとんどの市場参加者は、個別の取引によるロールオーバーを避けています。
二つ目の方法は、カレンダースプレッドによる限月の乗り換えです。カレンダースプレッドを用いることで、異なる先物限月を一度に売買することができます。たとえば、当限の国債先物をショートしている市場参加者は、カレンダースプレッドの買い(当限の買いと期先の売りを同時に実行する取引)を行うことで、ロールオーバーの期間中に期先のショート・ポジションへと乗り換えることができます。反対に、当限の国債先物をロングしている市場参加者は、カレンダースプレッドの売り(当限の売りと期先の買いを同時に実行する取引)を行うことで、ロールオーバーの期間中に期先のロング・ポジションへと乗り換えることができます。カレンダースプレッドを用いた国債先物のロールオーバーは、注文執行と価格変動のリスクを軽減できることから、市場ではこの方法が好まれています。
ロールオーバーは、米国債先物の四半期限月(3月、6月、9月、12月)のサイクルに沿って発生します。ロールオーバーの正確な発生時期というものはなく、当限の取引最終日を期限として、その何ヶ月も前から発生することもあります。ただ、最近のデータによると、当限のポジションの大部分は、前の月の最後の10営業日にロールオーバーされます。一例として、2016年3月限の先物は、2016年2月15日から2016年2月29日の間にロールオーバーが集中しました。
ロールオーバーの追跡ツールでは、二種類の時間軸による分析が可能です。
米国債先物のポジションを長期的に保有することを望む市場参加者にとって、ロールオーバーの期間は二つの意味で重要です。
一つは、満期が近づいている当限の先物から、期先の先物へとロールオーバーを行う上で、最適な流動性が生み出される点です。米国債先物の取引では、ほとんどの市場参加者が現物の受渡しを望んでいません。ロールオーバー期間の流動性は、市場参加者が現物の国債を保有することなく、先物のポジションを長期的に維持するために役立ちます。
もう一つは、カレンダースプレッドの取引機会です。先物がロールオーバーされる期間は、当限と期先のカレンダースプレッドにミスプライスが生じ、より良い価格でポジションを乗り換えられる可能性があります。