ヘッジャーは先物市場における主要参加者です。個人であれ業者であれ、現物商品を売買する人たちです。ヘッジャーの多くは生産者や卸売業者、小売業者、製造業者であり、商品価格、為替相場、金利の変動の影響を受けます。商品の市場投入時に、こうした変数が大きく変わると、業者の最終損益に影響します。そうした変動の影響をできるだけ減らすためにヘッジャーは先物市場を利用します。投機家が市場リスクを利益の源泉と捉えるのとは異なり、ヘッジャーはリスクを管理し相殺するために先物市場を活用します。
例としてトウモロコシ農家を取り上げましょう。まだ春ですが、農家は秋に収穫する作物を売るときの値段が気になります。収穫時に価格が下がっていたら、農家は安く売らざるをえません。
そのリスクをヘッジする一つの手段としてトウモロコシ先物を売り建てする方法があります。収穫期が来たときにトウモロコシの価格が下がっていた場合、地元市場での販売では損失が出ますが、その損失は先物市場での取引益で相殺できます。もし収穫時に価格が上がっていれば、先物取引では損失が出ますが、地元市場では高価格で作物を売ることができます。
どちらに転んでも、ヘッジを利用した農家は価格の変動に対して保全が図られています。先物を利用することで市場での販売時期よりも早く、価格設定をしておけるのです。
商品市場におけるヘッジャーにはいくつかのタイプがあります:
- 買いヘッジャー:商品価格の上昇を懸念している
- 売りヘッジャー:商品価格の下落を懸念している
- 販売業者:商品の買いと売りのどちらも行う。販売業者の抱えるリスクは買いヘッジャーや売りヘッジャーが懸念する価格の方向性リスクとは異なる。そのリスクとはスプレッドすなわち仕入れ価格と販売価格との差であり、それが販売業者の収益を左右する。
今日ではさまざまな業界でリスク管理の一環として多様な資産の先物取引が利用されています。建築会社では建築資材の価格が収益を左右する一因です。鉄鋼の先物取引を買い建てにすることで鉄鋼購入価格を確定させることができます。逆に、建築需要が減って鉄鋼価格の下落を懸念する製鉄会社は、価格変動リスクから身を守るために鉄鋼の先物を売り建てすることもできます。
航空会社は現在、原油先物を利用して燃料費の高騰に対するヘッジをしています。また、宝飾品の製造業者は貴金属先物を利用して金や銀の価格変動に対するヘッジを行っています。
市場におけるヘッジャーとは、現物商品の買い手や売り手からなる多様な市場参加者たちで、先物やオプション取引が提供する価格リスクヘッジ機能の恩恵を受けています。