米国石油化学市場のハイライト

  • 9 May 2018
  • By Jared MacLane
  • Topics: Energy

ここ5年間の生産能力の追加と投資を背景に、原油や天然ガスを原料とする米国の石油化学業界は、高コスト体質から低コスト生産者への劇的な変革を続けている。2017年には、主にエタンの生産拡大や引き続いている中国やインド、欧州向けのプロパンやエタンの輸出を背景に、天然ガス(NLG)の生産能力は継続的な増加を見せた。

石油化学業界の液化プロパン・ガス(LPG)の需要は現在、総需要の25%を占めている。1 石油化学製品に関しては、2017年の世界生産の30%を生産するなど、米国の石油化学業界は、最大級の生産者となっている。プラスチックや合成樹脂としてのポリマーに対する世界需要は、原料油が低価格で推移していることもあって、高い状況が続いており、中国では液化プロパン施設の拡充に向けた投資が、米国ではエチレン製造設備の基幹装置である高温熱分解炉への投資が、それぞれ加速的となっている。

ペンタンやエタン、LPG(プロパン、ブタン)を含むNGLは、2009年から2016年の間に拡大を見せ、液化燃料の29%を占めている。NGL生産拡大の大部分は、天然ガスの処理施設で発生した。シェールや硬い岩盤からの石油採掘では、副産物としての天然ガスの採集も増加している。2

2017年夏のブタンやプロパン、ナフサの価格上昇によって、プロパン価格で米国とアジアの間にあった裁定機会は消失し、米国産と中国産の価格競争は厳しさを増す結果になった。一方、その他の液化燃料に比べて、エタン価格は魅力的であり、依然としてプロパンに比べて“軽“原料油として選好される傾向にある。

石油化学原料の月次価格

世界的には、LPGの供給量は3億から3億1000万トンで、過剰状態となっている。需要としては、世界的に2億9000万トン程度とされている。3

インドは現在、世界第2位のLPG消費国となっている。政府による新しい援助政策を背景に、ここ3年で、消費量は1000万トンから1100万トンの増加を見せている。インドの総消費量はおよそ2300万トンで、国内供給はその半分ほどであり、年間1200万トンほどの輸入で残りを賄っている。その意味で、米国や中東での過剰生産分に対して、インドは重要な市場となるに至っている。4

LPGの最大消費国は中国で、国内産が同国のプロパン脱水素単位に適合しないため、同国な米国産プロパンの大口輸入国でもある。プロパン価格が高値推移となっていた時点から利益率の縮小が見られているものの、2017年においても現行のプロパン脱水素単位が支配的となっている。

EIA(米国エネルギー省情報局)は、 エネルギー市場に関する短期見通しで, エタン生産が2016年の日量125万バレルから2018年には同170万バレルに拡大すると予想している。5 主要原料油としてのエタンについては、プロパンやナフサの多様性に比べて、その主要生産物がエチレンに限られていることが課題としてある。こうした背景から、自動車に使われるプラスチックの3分の2を占めるプロピレンが短期的に不足する事態ともなっている。6

以下の図で予想される様に、新規のエチレン生産がエタンの供給量をある程度、吸収する。2016年、最初のエタン輸出は欧州向けだった。昨年は、インド向けで、最初の輸出が行われている。EIAの予想では、輸出量は、2016年第4四半期から2018年第4四半期までに、日量18万トンの増加を見せるとしている。7 テキサス州のパーミアン盆地やニューヨーク州ユーティカ、ペンシルベニア州マーセラス・シェールなど、米国内にある大容量の埋蔵規模を背景に、エタンの輸出量は引き続き拡大していくと考えられる。

拡大する北米のエチレン製造能力
開始時期 企業 場所 総増量率*

2017年第1四半期

ダウケミカル社

ルイジアナ州プラケマイン

250

2017年第2四半期

Equistar社

多様な場所

401

Oxy/Mexichem社

テキサス州イングルサイド

550

2017年第4四半期

シェブロンフィリップス社

テキサス州シダー・バイユー

1,500

ダウケミカル社

テキサス州フリーポート

1,500

2018年第1四半期

エクソンモービル社

テキサス州ベイタウン

1,500

Q3-18

インドラマ社

ルイジアナ州レイク・チャールズ

420

Q4-18

フォルモサ社

テキサス州ポイント・コンフォート

1,150

Q1-19

信越化学工業

ルイジアナ州プラケマイン

500

サソール社

ルイジアナ州レイク・チャールズ

1,550

Q1-20

LACC社

ルイジアナ州レイク・チャールズ

1,000

2022年第2四半期

シェル社

ペンシルバニア州モナカ

1,500

 

 

総増産量

11,821

*000 トン
出展:HISマーキット

2017年後半の高まりを背景に、CMEグループでは、NGLや石油化学プロダクトは2018年に売買高を伸ばすと予想している。また、市場が成熟するにつれて、より多くの取引参加者がポートフォリオにリスク管理戦略を取り入れるとも予想している。CMEグループが提供するNGLや石油化学に関連した50以上のプロダクトについては、価格リスクをヘッジするため、多くの取引参加者がこうしたプロダクトの利用度を高めている。

2017年のNGLと石油化学先物のパフォーマンス

エンド・ユーザーに関する限り、石油化学市場全体の2018年のアウトルックは、ナイロンやポリエステルなどの人口繊維を含めて、プラスチック、合成ゴムなど、川下での利用拡大が引き続き見込まれることから、総じてポジティブであるといえる。

こうしたプロダクトに対する需要は、GDPの成長に伴って拡大する傾向がある。8 経済が成長すると共に、例えばプラスチックでは量的な拡大だけではなく、質的な改善も求められるようになる。それは、グローバルな食品取引で、新規の市場に対しては、長距離輸送においても新鮮さの改善が必要となるのと同様である。こうした需要の高まりに対して、インフラ投資と改革による生産能力と原料油の増産が促されていくことになる。

NGLの主要な生産者であり輸出元でもある北米では、世界を網羅するサプライ・チェーンと輸送ルートの再評価が始まっている。こうした動きは、最終的に新しい市場や取引参加者を生み出す可能性があり、結果として2018年以降も、引き続き新しい取引機会が提供されることになると考えられる。


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