FedWatch ツールは、FOMCにおける政策金利の決定事項について、無条件のバイナリー・ツリーで計算されます。CMEグループの先物取引所では、限月中のFFERの平均値を取引対象とする30日物FF(フェデラル・ファンド)金利先物が上場されています。(例えば、FFU5は2015年9月物のFF先物で、2015年9月のFFERの月間平均を取引対象としています)FFERは日々、ニューヨーク連銀が公表するもので、前日のインターバンクにおける無担保翌日物金利を取引量で加重平均した金利です。
FedWatch ツールにおける確率分析では、政策金利の変更は25ベーシスポイント刻みで行われ、FOMCの開催が予定されている月の前後の限月のFF先物が、このFOMCにおける政策金利の判断動向に双方の限月市場が影響されていない場合、または、それが双方の限月市場にとって唯一の市場要因である場合、それぞれを前提としています。加えて、このツールでは、FFERがゼロ(0)%以上であることも前提となっています。FF先物はFFERの月中平均を取引対象とするため、FOMCの開催が今月予定されているとして、その前月にFOMCの開催が予定されていないとしたら、この限月は、今月開催予定となっているFOMCでの結果予想に影響されていることになります。同様に、FOMCの開催が今月予想され、来月はその予定がないなら、翌限月のFF先物が反映しているのは、今月開催されるFOMCの結果予想、と言うことになります。そこで、今月開催予定のFOMCにおいて政策金利が引き上げられるか、または現状維持されるか、政策金利引き上げ/現状維持の2つのシナリオは、以下の要領でそれぞれの確率を算出できます:
P(政策金利引き上げ) = [ FFER(月末) – FFER(月初) ] / 25 ベーシスポイント
P(現状維持) = 1 – P(政策金利引き上げ)
FFERの(月末)と(月初)の水準を比較していることから、FRBが特定の水準を設定した場合でも、それが範囲(レンジ)であった場合でも、FF先物の価格形成やFOMCの結果に関する確率計算が影響されることはありません。FOMCが短期金利の誘導水準を25ベーシスポイント刻みで変更する限りにおいて(それが特定の金利水準であろうと、レンジであろうと)、確率は月末と月初のFFERの差異に対する市場の期待を反映したものになります。
例えば、開催が今月予定されているFOMCについて、政策金利が無条件に変更される確率を計算するなら、最初に考慮するのは、FOMCが先月開催されたか、と言うことになります。もし、前月にFOMCが開催されていたとしたら、今月開催されるFOMCは「タイプ2」となります。前月に開催されていなかったとしたら、今月の会合は「タイプ1」です。「タイプ1」、「タイプ2」については、以下の表を参照してください:
|
タイプ 1 |
タイプ 2 |
---|---|---|
N |
FOMC開催予定月の日数 |
FOMC開催予定月の日数 |
M |
FOMC開催予定日 – 1 |
FOMC開催予定日 – 1 |
FFER.Start |
(N/M) * [予想金利 – FFER(月末)*((N-M)/N)] |
(1 – 前月のFF金利) |
予想金利 |
100 – FOMC開催予定月のFF金利 |
|
FFER.End |
(1 – 翌月のFF金利) |
(N/(N-M)) * [ 予想金利 – (M/N)*FFER(月初)] |
例: 2015年9月17日開催のFOMC – タイプ2
FFQ5 = 99.8675
FFU5 = 99.805
N = 30
M = 16
FFER(月初) = 0.1325 (100-99.8675)
予想金利 = 0.195 (100-99.805)
FFER(月末) = 30/14* [0.195 – (16/30)*0.1325] = 0.266432
P(政策金利引き上げ) = (0.26643 – 0.1325) / 0.25 = 53.6%
P(現状維持) = 46.4%
こうして、このツールでは、FEBがそのWebページで開催を公表している全てのFOMC毎に、政策金利に関するバイナリーなシナリオのツリーにおける確率を算出していきます。
決定シナリオのツリーにおける最初の分岐点は、(1)政策金利の現状維持、または、(2)政策金利変更(25ベーシスポイントの引き上げ/同引き下げ)となります。そして、この分岐以降におけるFOMCの結果のシナリオについては、引き上げ/引き上げ見送り、または、引き下げ/引き下げ見送り、という2つしか存在しないことになります。
ツリーの2つ目の分岐点では、現状の様にFRBが政策金利の引き上げサイクルにあることを前提にすると、政策金利の引き上げが決定されるかどうか、と言うことになります。そして、これに続くFFTR(短期金利誘導目標)については、政策金利の据え置き、または、同引き上げが実現可能性としてあり得ることになります。
計算方法は以下の通りです:
P(FFER引き下げ) = 確率(前回のFFER 引き下げ) * (1-政策金利変更の確率)
P(FFER据え置き) = 確率(前回のFFTR引き上げ) * (1-政策金利変更の確率)+ (前回のFFTR引き下げ確率) * (政策金利変更の確率)
P(FFER引き上げ) = (前回のFFTR引き上げの確率)* (政策金利変更の確率)
注記1: 前述の様に、この計算方法では、FRBが政策金利を変更する際、これを25ベーシス刻みで行うことを前提としています。従って、(先物価格から計算される)FF金利が、現状の実効レートを25ベーシスポイント以上、上回る水準とされた場合、市場は、FOMCで25ベーシスポイントを超える金利幅で政策金利が引き上げられることを予想していることになります。
こうした場合、その確率は計算上、100%を上回ることになります。解釈を簡略化するため、算出された確率は、単体と2度にわたる政策金利の引き上げの間で再配分されます。
例: FF先物によって反映される予想金利水準が高いことで、25ベーシスポイントの利上げ確率が104%、政策金利据え置きが-4%と算出された場合、ツールの計算方法では確率を再配分することで、P(据え置き)=0%、P(25ベーシスポイントの引き上げ) = 96%, そして P(50ベーシスポイントの引き上げ) = 4%となります。
注記2: 市場参加者の声や相場動向を反映して、FFERはゼロ(0)%以上であることが前提となっています。従って、ツリーの2番目の分岐点においての選択は: 次回FOMCにおいてFFERが据え置かれる確率、引き上げられる確率(または、引き上げられたFFERが引き下げられる確率)、そして、再度引き上げられる確率となります。
以下に、こうしたシナリオの確率の計算方法を示します:
P(FFER据え置き) = 確率(前回のFFER据え置き) * (1-政策金利変更の確率)
P(前回のFFERの引き上げ、または、前回引き上げられたという前提で、今回引き下げられる) = 確率(前回のFFTR引き上げ) * (1-政策金利変更の確率) + (前回のFFTRが据え置きである確率) * (政策金利変更の確率))
P(前回に続いて次回もFFERが引き上げられる) = (前回のFFTR 引き上げの確率)* (政策金利変更の確率)
世界の市場参加者はCME グループの国際金融市場への公正かつオープンなアクセスに厚い信頼を寄せています。CME グループの中核はCME、CBOT、NYMEX、COMEXの4つの主要取引所で、世界を代表するベンチマーク銘柄や地域特有の成長商品など、すべてのアセットクラスを網羅して幅広く提供しています。これらの取引所は信頼性と専門性により裏付けられた、世界を先導するデリバティブ市場として機能しています。