調査会社が米国経済の成長減速を示唆

米国経済に不安はないだろうか。その健全性を予測するうえで優れた実績を残している指標がある。米調査会社コンファレンス・ボード(訳注:TCB=全米産業審議会)が発表する景気先行指数(LEI)だ。ただ、LEIそのものよりも、さらに優れているのがLEIと一致指数および遅行指数との比率である(前者を「先行・一致比」、後者を「先行・遅行比」とする)。これらの比率の変化は、過去60年にわたり驚くべき一貫性で国内総生産(GDP)と失業率の変化を予知してきた(図1~4).

図1 先行・一致比にはGDPよりも平均1〜2四半期先行して変化する傾向がある

図2 GDPが約3〜6カ月遅れで先行・遅行比に追随している

最近、LEIは停滞している。対して、一致指数と遅行指数は上昇を続けているため、比率が少し低下した。これが示唆しているのは、米国経済の成長率が1.5〜2.0%周辺に減速しようとしている一方で、失業率が若干悪化もしくは現水準にとどまるかもしれないことだ。

図3 先行・一致比の急降下は6〜9カ月後のレイオフを示唆することが多い

図4 先行・遅行比に大幅低下がなければ、雇用は常に拡大を続けている

米国の景気後退を心配しているとしたら、端的にいえば「気にするな」となる。通常、景気後退が現実味を帯びるには、先行・遅行比が前年比約5%下げるか、先行・一致比が前年比約4.0%下げる必要がある。それは、まだ起こっていない。ただし、指標の最新値が発表されて(2019年3月)以降、両比率がさらに低下しようとしている兆候はある。比率の分子となる先行指数を構成している各種景気指標(図5)に含まれるISM新規受注指数が、3月の57.1から4月には51.7に急減速した。それとは対照的に、比率の分母となる一致指数を構成している非農業部門雇用者数が、引き続き力強く伸びているのだ。しかも、利回り曲線(イールドカーブ)は比較的平坦なままである。これは一致・遅行指数に比べてLEI成長率の足を引っ張るだろう。比率の先行きに下押し圧力となるわけだ。 

図5: こちらは、それぞれ(少なくとも知っておくべき)先行、並行、遅行指標

先行指標

週平均就業時間
失業申請件数
消費財受注
ISM新規受注
航空機を除く非防衛資本財受注
建設許可件数
株価
先行クレジット指数
金利差(利回り曲線)
消費者期待値平均

並行指標

非農業部門雇用件数
移転支払いを除く個人所得
鉱工業生産
営業売上

遅行指標

失業期間
在庫回転率
単位労働コスト
プライム・レート平均
商業・工業ローン
消費者クレジット/消費者所得
サービス業CPI

出展: The Conference Board

したがって、景気悪化の兆候がまだ差し迫ってはないとはいえ、事態がどちらに向かっているか理解するためには、LEIおよび先行・一致比と先行・遅行比に引き続き注意したい。実際に2007年夏にあったように、先行・一致比と先行・遅行比が急降下した場合、非常事態に備える時期となり得る。しかし、今のところ、GDP成長率が金融危機後の平均速度付近まで下げると示唆しているにすぎない。

要点

  • 景気先行指標と一致指標の比率および先行指標と遅行指標の比率は、GDPと失業率の変化を予測するうえで優れた成果を残してきた。
  • これらの比率が示唆するのは景気悪化ではなく、成長減速である。
  • これらの比率がさらに悪化して初めて警鐘を打ち鳴らす時期となり得る。
  • 全体指数が発表されるのを待たなくても、個々の構成指標を監視できる。

 

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本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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