Erik Norland(CMEグループ・シニアエコノミスト & エグゼクティブディレクター)
原油が2014年に1バレルあたり100ドルから今年これまでに同26ドルへと急落した後、原油先物カーブはほぼ完全に横ばいとなり、原油価格は見る限り1バレルあたり50ドルから離れていない。
しかし、これは原油市場が伸び悩んでいるということを意味しているわけではない。先物カーブは、市場参加者が原油の長期均衡価格を50ドル近辺とみていることを示唆しているものの、オプション市場では、原油が実際にほとんど均衡水準で推移するとの見方はとられていないようだ。オプションのインプライドボラティリティは、2月に付けた高水準から低下しているが、5年平均を3分の1程度上回る水準となっている(図2)。
先物価格とオプション価格の組み合わせは、原油価格が、極めて幅広いチャネルでかなり長期的にレンジ取引となっている可能性を示唆している。WTI価格が1年間を通じて52ドル、インプライド・ボラティリティが40%として対数正規を仮定すると、これは今後1年間において、原油価格が1バレルあたり34~76ドルで推移する確率が68%、同23~116ドルで推移する確立が95%となる。これが取引レンジであれば、レンジとしては十分に幅広い。
原油市場では、幅広いレンジの先例は豊富に存在する。2014~2016年に原油価格は大幅下落したが、こうした急落は実際には初めてのことではない。1985年終盤から1986年初頭にかけて頂点に達した過去の原油価格の急落局面は、興味深い教訓を与えてくれる。1バレルあたり32ドルから12ドルにに急落した後、原油市場は、その後14年間にわたりレンジ取引に終始した(図3)。1986年1月から1999年12月まで原油価格は1バレルあたり平均19ドルであったが、レンジは1バレルあたり10~41ドルであった。1バレルあたり41ドルを付けたのは、サダム・フセインによる1990年夏のクウェート侵攻後であった。湾岸戦争を除くと、原油価格が1バレルあたり28ドルを超えたことは一度もなかった。
先物市場とオプション市場は、現時点で類似シナリオを織り込んでおり、取引レンジが上方にシフトしている。1980年代終盤から1990年代にかけての1バレルあたり平均19ドルではなく、原油価格は、現在から2024年までに1バレルあたり50ドルのすぐ上が平均となることを示唆している。 これが実現すれば、同様に幅広いレンジで推移するとの見方をとれるかもしれない。直近安値の1バレルあたり26ドルは、取引レンジの下限になる可能性があろう。そうなれば、レンジの上限は今後1バレルあたり80ドルをあっさり付けて、もしかしたら同100ドル超える可能性もあろう。
どのような要因が、前述のような原油価格の幅広いレンジの変動を引き起こす可能性があるのか。第一に、原油の供給と需要はともに弾力性に欠けていることは周知であり、供給や需要の混乱がかなり小さくても、極めて大きな価格変動が引き起こされる可能性がある。原油価格には、上昇リスクも下落リスクも多数存在する。そのいくつかは以下の通りである。
本資料に掲載の情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。助言を意図したものではなく、また助言と解釈しないでください。本資料に記載されて いる見解は、筆者個人のものです。必ずしも CME グループならびにその関連機関の見解ではありません。本資料およびその情報を投資助言も しくは実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。
先物取引やスワップ取引は、あらゆる投資家に適しているわけではありません。損失のリスクがあります。先物やスワップはレバレッジ投資であり、取引に求められる資金は総代金のごく一部にすぎません。そのため、先物やスワップの建玉に差し入れた当初証拠金を超える損失を被る可能性があります。したがって、生活に支障をきたすことのない、損失を許容できる資金で運用すべきです。また、一度の取引に全額を投じるようなことは避けてください。すべての取引が利益になるとは期待できません。
本資料に掲載された情報およびすべての資料を、金融商品の売買を提案・勧誘するためのもの、金融に関する助言をするためのもの、取引プラットフォームを構築するためのもの、預託を容易に受けるためのもの、またはあらゆる裁判管轄であらゆる種類の金融商品・金融サービスを提供するためのものと受け取らないようにしてください。本資料に掲載されている情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。助言を意図したものではなく、また助言と解釈しないでください。掲載された情報は、特定個人の目的、資産状況または要求を考慮したものではありません。本資料に従って行動する、またはそれに全幅の信頼を置く前に、専門家の適切な助言を受けるようにしてください。
本資料に掲載された情報は「当時」のものです。明示のあるなしにかかわらず、いかなる保証もありません。CME Groupは、いかなる誤謬または脱漏があったとしても、一切の責任を負わないものとします。本資料には、CME Groupもしくはその役員、従業員、代理人が考案、認証、検証したものではない情報、または情報へのリンクが含まれている場合があります。CME Groupでは、そのような情報について一切の責任を負わず、またその正確性や完全性について保証するものではありません。CME Groupは、その情報またはリンク先の提供しているものが第三者の権利を侵害していないと保証しているわけではありません。本資料に外部サイトへのリンクが掲載されていた場合、CME Groupは、いかなる第三者も、あるいはそれらが提供するサービスおよび商品を推薦、推奨、承認、保証、紹介しているわけではありません。
CME Groupと「芝商所」は、CME Group, Inc.の商標です。地球儀ロゴ、E-mini、E-micro、Globex、CME、およびChicago Mercantile Exchangeは、Chicago Mercantile Exchange Inc.(CME)の商標です。CBOTおよびChicago Board of Tradeは、Board of Trade of the City of Chicago, Inc.(CBOT)の商標です。ClearportおよびNYMEXは、New York Mercantile Exchange, Inc.(NYMEX)の商標です。本資料は、その所有者から書面による承諾を得ない限り、改変、複製、検索システムへの保存、配信、複写、配布等による使用が禁止されています。
Dow Jonesは、Dow Jones Company, Inc.の商標です。その他すべての商標が、各所有者の資産となります。
本資料にある規則・要綱等に関するすべての記述は、CME、CBOTおよびNYMEXの公式規則に準拠するものであり、それらの規則が優先されます。 取引要綱に関する事項はすべて、現行規則を参照するようにしてください。
CME、CBOTおよびNYMEXは、シンガポールでは認定市場運営者として、また香港特別行政区(SAR)では自動取引サービスプロバイダーとして、それぞれ登録されています。ここに掲載した情報は、日本の金融商品取引法(法令番号:昭和二十三年法律二十五号およびその改正)に規定された外国金融商品市場に、もしくは外国金融商品市場での取引に向けられた清算サービスに、直接アクセスするためのものではないという認識で提供しています。CME Europe Limitedは、香港、シンガポール、日本を含むアジアのあらゆる裁判管轄で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けていませんし、また提供してもいません。CME Groupには、中華人民共和国もしくは台湾で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けている関連機関はありませんし、また提供してもいません。本資料は、韓国では金融投資サービスおよび資本市場法第9条5項並びに関連規則で、またオーストラリアでは2001年会社法(連邦法)並びに関連規則で、それぞれ定義されている「プロ投資家」だけに配布されるものであり、したがってその頒布には制限があります。
Copyright © 2021 CME Group and 芝商所. All rights reserved.
Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。
Erik Norland(CMEグループ エグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト)によるレポートを さらに見る