大豆油は原油価格の上昇局面終了を示唆しているのか?

過去15年間、そのほとんどで、大豆油は原油の先行指標となってきた。65の国々でバイオ燃料のブレンド基準が定められていること、そして植物油の市場規模が原油に比べて小さいこと、そうしたことがこの背景にあると考えられる。過去15年間には、大豆油が原油に先んじて価格上昇に転じた場合、そして底打ちした場合、両者の間にはこうした主要な例が12回程あった(下記リストを参照)。

大豆油価格は今年2月6日にピークを打ち、以来、14%の下落となっている。同期間に、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の価格は、14%の上昇となっている。もしも、過去のサイクルが先々の展開に関する示唆であるとすれば、原油価格の足元の上昇は、継続性に乏しいということになる。実際、(現在までに)原油価格は2019年4月23日にピークを付けている。もちろん、原油市場の主要ダイナミクスは依然として、自動車の燃費が一段と改善する可能性であり、米国内での原油生産の拡大動向ではある。そして、いずれも、原油市場の弱気材料である。

図1: 大豆油価格は多くの場合、原油価格の動向に先行する

本稿シリーズでの関連テーマ:

もしも、大豆油の価格動向が原油市場の将来的なモメンタム指標としての有効性を失うとすれば、それは政治的要因に影響された結果と言える。より厳しい米国の経済制裁に直面しているイランは、「イラン核合意」として一般的に知られている共同包括的行動計画(JCPOA)の一部放棄を表明している。さらに、OPECのメンバーでもあるイランがイラクや中東の他の地域で展開する米軍に脅威を及ぼしているとして、米国はこの地域に、空母などによって組織される攻撃能力を集結させている。

こうしたイラン情勢に加え、もう1つの重要な石油生産国であるアルジェリアでは、先月のブテフリカ大統領の辞任後、平和的な権力移転に関する交渉が試みられてもいる。一方、ベネズエラ情勢は、野党党首のフアン・グアイドがニコラス・マズロ大統領の追放に失敗し、混沌としたままである。

過去、こうした緊張の高まりは、大豆油価格が示唆する数ヶ月後、あるいは数年後の高値を凌駕する水準まで原油価格を押し上げた。例えば2013年、そして2014年の大半、植物油価格が暴落する一方、アラブの春とイランの核問題を背景に、原油価格は高値を維持する結果となった。2014年末には、イランの核交渉が進行するなか、サウジアラビアが原油価格のサポートを取りやめたことから、その後の15ヶ月間にWTI価格は76%の下落を見せた。植物油価格と原油価格の同様の乖離は、2018年第2四半期と第3四半期、米国が最初にイランの核交渉から撤退した際にも発生している。原油価格は第4四半期に40%の暴騰を見せるまで、春と夏に20%の暴落を見せた大豆油価格の動きを無視し続けたのである。

ここまでの事例を、以下にリストする:

  1. 2005年1月から2006年8月まで、WTI原油の価格は43ドルから77ドルまで、ほとんど倍化した。この上昇に対して大豆油は多少、追随する動きを見せたものの、2006年7月初めにポンド当たり27.54セント(0.2754ドル)の高値を記録した後、WTI原油が翌月にピークを打つまでに、およそ10%の下落を見せる。そして、この大豆油の下げに追随する形で、2007年1月までに、WTI原油の価格は77ドルから51ドルまで下落している。
  2. WTI原油が大豆油の下げに追随する一方で、大豆油は2006年11月、WT原油が底打ちする2か月前に、反発に転じ、23.58セントから71.26セントの高値に2008年3月の段階で達している。WTI原油の価格は、その2ヶ月後にこの暴騰相場を実現し、2007年1月の51ドルから2008年7月の147ドルまでの上昇を見せた。
  3. 一方、2008年3月にピークを打った大豆油は、この時点で上昇を続けていたWTI原油に対して警告を発している。大豆油価格は71セントから48セントまで、2008年6月16日に69セントまでの回復を見せる前に、30%超の下げを演じたのである。その戻り高値にしても、原油価格が2008年7月11日にピークを打つおよそ1カ月前に達成している。WT原油が過去最高値を更新するまでに、大豆油価格は6月の高値から既に5%の下げとなっていて、2008年3月の過去最高値からは10%近く下げた水準に達していた。
  4. 金融危機を受け、大豆油価格は2008年12月5日に28セントまで暴落するが、その後、年末に向けては上昇に転じている。一方、WTI原油の底値はその3週間後、2008年12月24日の35.35ドルとなっている。2009年と2010年には両市場とも回復を見せるが、上昇相場のジグザグのほとんどで、大豆油が原油に先行する動きとなった。
  5. 大豆油価格は2011年2月3日、2008年の安値の2倍となる60セントを少し下回る水準でピークを打っている。WTI原油のピークは2011年4月29日の114ドルで、大豆油がピークを付けてから3ヶ月近く経った時点である。
  6. この時点から、大豆油とWTI原油の関係は大きな乖離を開始している。アラブの春を契機に地政学的リスクが喚起され、WTIやその他の石油指標はその後3年半、2011年の過去最高値からおよそ25%以内に留まる結果となった。一方、大豆油価格は2014年初頭までに、2011年の高値から40%の下げに至り、弱々しい反発を経て、2014年夏には再び下げに転じている。大豆油の価格下落は、2011年4月の水準に対しておよそ半値となるまで、留まることはなかったのである。この大豆油の下落劇は、WTI原油が26ドルの安値を記録することになる2014年末の原油相場の暴落に先んじていたことになる。
  7. ここでも、2015年8月に25セント(2011年4月のピークから60%の下げ)を記録するなど、大豆油価格が先に底値を記録している。WTI原油の底値はその6か月後、2016年2月のことで、バレル当たり26ドルと、2011年のローカル高値から75%超の下げを記録している。
  8. 原油価格が2016年2月11日に底値を記録するまでに、大豆油価格は底値から20%超の上昇を見せていた。大豆油価格は2016年4月19日、ローカル高値となる41セントを記録し、底値から60%超の上昇を実現している。原油価格もこれに追随し、底値から100%の上昇となる50ドルを少し上回る水準でピークを記録するが、この高値に達したのはほほ2か月後で、2016年6月8日のことである。
  9. 原油価格が6月8日にローカル高となる51ドルを達成した段階で、大豆油は高値から既に12%ほど下落しており、2016年7月22日には29セントで底値を記録する。WTI原油が39ドルで底値を記録するのはその2週間後、2016年8月2日のことである。
  10. 大豆油価格は2016年12月27日に0.37ドルの高値を記録するが、2017年4月11日までに、価格は0.31ドル水準まで下落している。一方、2016年12月12日から2017年3月7日までの間、WTI価格は54ドル近辺で高値圏を形成するものの、最終的には2017年6月22日までに43ドル水準まで下落する。この下落修正は、大豆油の修正相場からおよそ3か月後のことになる。
  11. 大豆油価格は2017年11月9日に35セントのピークを記録し、その後、9月18日と11月26日に、27セントでダブルボトムを形成している。米国とイランの間で緊張が高まっているとの懸念を背景に、WTI原油が77ドルでピークを記録するのは2018年10月3日まで遅れ、その後、2018年12月24日に43ドルの安値を記録している。
  12. 2018年11月26日から2019年2月6日までの間、大豆油価格が27セントから31セントまで上昇したことを受け、WTI原油は2018年のクリスマスに記録した43ドルから、2019年4月23日の(現在までの高値である)66ドルまで上昇している。
  13. その後、大豆油価格は、2月に記録したピークとなる31セントから27セントまで下落する結果となっている。本稿を執筆している段階で、原油価格は66ドルのピークを更新していないが、同時に、大豆油に追随して下落に転じるかは依然として不明確な状況である。それは、中東やその他の情勢の影響が大きいからである。

結論

  • 大豆油価格は原油価格に先んじる場合が多い
  • 大豆油価格の最近の下落は、原油価格の将来的な反落を示唆している可能性がある
  • 中東やその他の地域で高まる緊張を背景に、原油価格は大豆油価格の下落トレンドに迎合しない可能性もある

 

免責事項

本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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