【米国株】業種別の年初来トレンドは続くのか?

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行で私たちの日常生活は未曽有の課題に直面している。新型コロナの感染拡大を防ぐために人々が外出を控えたことで、経済活動の大部分が止まってしまった。旅行は制限されたままである。消費者の行動は大きく様変わりし、インターネットでの購買や交流が飛躍的に増えた。

ただし、それまでの傾向が逆転したというわけではないだろう。むしろ、劇的かつ突発的に加速したといえそうだ。すでに新型コロナの感染が世界中に広がる前からSNS(会員制交流サイト)、ウェブ会議サービス、ネット通販は成長を遂げていた。また、一人当たりの化石燃料消費量は減少傾向にあったし、エネルギー市場には過剰ではないとはいえ大量の供給があった。

新型コロナの世界的流行が経済に衝撃を与えるなか、S&P 500®のリターンは2020年初来4カ月で-8.3%となった。ただし、指数内の業種で、かなりのバラツキがみられる。4月30日現在、膨大なボラティリティにもかかわらず、IT(情報技術)・ヘルスケア・一般消費財の株価は2019年12月31日終値とほとんど変わらない。一方、素材・資本財・金融・エネルギー株などが大きく値を落としている。エネルギー株のリターンは-34%だ(図1)。

図1

興味深いのは現時点で今年最高のリターンを出している業種が2010年代に比較的好調だった業種と、ほぼ同じであることだ。2010年代に最も成績が良かったのは、IT・ヘルスケア・一般消費材株だった。一方、2010年代に最も成績の悪かった業種に、エネルギー株と素材株があった。また、生活必需品株と公益事業株は2010年代も2020年初来も平均リターンに近い結果となっている(図2)。つまり、業種間の相対的な成績でいえば、感染症の世界的流行は、既存の傾向を加速させたようにみえるのだ。

図2

ただし、違う点もある。2010年代に後塵を拝していた通信株が2020年初来は比較的好調に推移している。一方、2010年代をまずまずの成績で終えた資本財株と金融株は、2020年初来4カ月で最も低迷した業種に入った。とはいえ、各業種の2010年代成績と2020年初来成績との相関は全体として+0.65だ(図3)。

図3

2010年代から2020年現在に至る成績に沿って業種別の10年先を推測するのは、偏見がないようにみえるかもしれない。ところが、これまでの30年間でみると、過去10年の勝者は、得てして次の10年で低迷しているのだ。

例えば、1990年代(図4)は2010年代とかなり似ているようにみえる。だが、その間の10年は、ほとんど逆であった。2000年代に先行したのは、エネルギー・生活費需品・素材株である。一方、IT・金融・通信・一般消費財株は後れをとった(図5)。

図4

図5

実際のところ、1990年代と2000年代の業種別成績には-0.56の相関があった(図6)。また、2000年代と2010年代の業種別成績には-0.40の相関がみられる(図7)。つまり、1990年代のトレンドに沿って次の10年間で業種間の相対的成績がどうなるか判断し、それに基づいて投資をしていた場合、市場平均を劇的に下回る結果となったかもしれないのだ。そして、同じように、2010年の元日に2010年代の業種株が2000年代のような成績になると想定していた場合、さらに間違いを重ねていただろう。

図6

図7

誰も2020年代が始まって4カ月で、このような展開があるとは予測していなかったはずだ。同様に、これから先、この年代でどうなるかなど誰にも分からない。ただし、各業種の相対的成績についていえば、サプライズに備えておくべきである。エネルギー株や素材株など最も大きな打撃を受けた業種が、勝ち組になり得るからだ。2010年代後半に石油価格が反発してエネルギー株を押し上げるかもしれない。同様に、高く舞い上がっているIT株が、投資家に現在評価されている以上の結果を出せずに低迷する可能性もある。また、生活必需品・ヘルスケア株が感染症の世界的流行などによる衝撃的圧力と無関係であるかは、一部で予想されているほど自明ではないかもしれない。

結論

  • 2020年現在も2010年代に先導した業種が先行している。
  • 1990年代に比較的好調だった業種が2000年代には得てして不調となっている。
  • 業種間の相対的成績は2000年代と2010年代で再び逆転した。
  • 2010年代や2020年現在の成績から業種株の未来を推定することに対して慎重になるべきである。

 

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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