中国元:境界に注意

境界は、明白であろうと内包されていようと、市場動向に影響を与える。中国元(CNY)について、心理的境界は1ドル(USD)=7.0元である。市場参加者は、境界値のダイナミズムに関する経済学に注意を払う必要がある。貿易摩擦がエスカレートしているため、通貨の大幅切り下げに対するリスクが高まっていても、ボラティリティは、境界近辺で境界の近辺で抑制されるかもしれない。 あるいは、貿易摩擦が和らげば、整然と上昇に向かう可能性がある。

貿易摩擦の盛衰に関するFXの政治学

中国元、つまり人民元は、貿易戦争の展開にかなり敏感に反応している。2018年末から2019年初頭の緊張が和らいだ当時、中国元は、対ドルで上昇トレンドをたどっていた。貿易協議の合意の見込みが消滅した2019年5月のように緊張が高まれば、中国元は下落する。興味深いことに、中国元がどこまで下落するかについて、これまで心理的な上限や隠れた政策アジェンダの上限が共に存在しており、市場の動きに極めて大きな影響を与えている。

このように貿易戦争の緊張が張り詰めた環境下においては、中国が取引が可能あると考えれば、市場参加者が米国が賦課した関税の撤廃について合意できると期待を表明したときに、1ドル=6.7元に向かって上昇する市場の圧力を受け入れることを厭わない。  通貨高により中国の輸出コストが増えて、米国が賦課した関税に加われば、通貨高は取引の合意が可能とみえて関税が撤廃されそうな時のみに生じる。  さらに、仮に関税が撤廃となれば、株価は上値に向かって跳ね上がるかもしれない。

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中国元は、貿易摩擦が和らいだ時にドルに対して上昇し、逆もまた同様である。

7の魔法

対照的に、米国が中国に圧力をかけ、取引が白紙にもどる見通しとなれば、市場参加者は米国が課す関税は恒久的なものになるとの見方をする傾向がある。恒久的な関税の予想は、人民元の下落圧力に寄与する。

データから明らかになっていることは、貿易戦争がエスカレートすれば、中国元は1ドル=7元に向かい、その後一服する。1ドル=7元が天井なのか。そう、天井は存在する可能性はある。というのも、中国当局が既に悪くなっている通商関係を悪化させるほどの下落を望んでいないからだ。中国当局も経済的な痛みが米国の怒りをさらに買うリスクを上回るまで、おそらく1ドル当たり7元の線を維持するだろう。ここで合理的なことは、中国の輸出品の価格を割安にさせて関税分と相殺するために中国元をさらに下落させることである。1ドル当たり7元超えまでの下落を容認する決定はあっさり、または容易にはとれないため、これは基本シナリオではない。  更なる下落は、貿易戦争により生じた中国経済の痛みがさらに増して、米国との和解が遠のく見通しとなった場合に生じるリスクである。

貿易戦争は市場のモメンタムを妨害

境界値の経済学

境界値の経済学は興味深い。ハイゼンベルクの不確定原理の経済バージョンである「グッドハートの法則」がここで当てはまる。故グッドハート教授によると、中央銀行が数値を目標にすると、市場参加者は数値に向かって行動を変え、数値のタイムラインとボラティリティのパターンが変化する。

明らかな境界、つまり1ドル当たり7元の天井に当てはめると、グッドハートの法則に基づき2つの観察事項が存在する。1つ目は、天井がそもそも突破されれば、中国元は、動きが早まり、おそらくこれまでの天井をはるかに上回ることになろう。  これは、圧力が積み上がっていき、その後急速に解き放たれる – つまり、まさに爆発の動きのパターンである。2つ目は、天井が突破されなくても、圧力が積み上がっている間、市場で観察されるボラティリティは、極端に低くなり、他方で将来のリスクは急速に高まりつつある。メッセージは明らかである。  境界が存在する場合、リスク管理の複雑さを特に意識しなくてはならない。


 

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本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Bluford “Blu” Putnam(ブルフォード“ブル”パットナム)CMEグループ・マネージング・ディレクター兼チーフ・エコノミスト。中銀の政策分析・投資調査・ポートフォリオ管理を中心に金融業界で35年を超える経験を持つ。2011年5月より現職。世界経済情勢に関する情報発信で中心的な役割を担う。

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