中国、ブラジル、そして大豆プロダクト

大豆には、主に2つの用途がある:主に食用とされる大豆油、そして主に家畜飼料として用いられる大豆粕である。ポンド(453.592グラム)当たりでは、大豆油が大豆粕を、大幅に上回る価格となっている。過去20年間の平均では、ポンド当たりの大豆油の価格は同様の大豆粕の2.35倍で推移しているものの、そのスプレッド・レンジは1.4倍から3.1倍まであり、価格差が安定してるとは言い難い(図1)。

図1: ポンド当たりの大豆油の価格は、平均で同様の大豆粕の2.35倍で推移

用途や価格が大きく異なるだけでなく、大豆油と大豆粕は、一方が中国やブラジルなどの経済動向の影響を強く受けるものの、他方はそうでもない。例えば、中国の経済成長は大豆油の価格動向に強い影響を及ぼすものの、大豆粕への影響は極めて弱く、直感に反する場合さえある。また、大豆油の価格動向は、電力消費量、鉄道輸送量、および銀行貸し出し額から算出される中国の経済の狭義の成長指標、李克強(首相)指数と最も高い相関があることを指摘しておく。一方で、大豆粕の価格動向は、中国の経済成長を表すとされるこの李克強指数とは、逆相関の関係にある(図2)。言い換えれば、一般的に、中国の力強い成長は向こう12ヶ月間の大豆油の価格上昇を、そして大豆粕の価格低下を、それぞれ示唆することになる。

図2: 中国経済の力強い成長は、ブラジル・レアルや大豆油の強気材料となるものの、大豆粕については異なる

これは、どうしてなのか?中国の強い経済成長が大豆油価格を急上昇させ潜在的な背景になる一方で、大豆粕の価格が、下落するかもしれな同様の条件の下で、いのは、なぜなのか?その答えは、この2つの商品の相対的な価格、そして異なる最終用途にある。第1に、大豆油は通常、大豆粕の2倍以上の値段で取引されていることから、大豆の価値の大部分はたんぱく源ではなく、油糧種子としてのものであると考えられる。中国経済の急速な成長は、エネルギーや工業用金属の価格上昇をもたらす傾向があり、新興国市場では中国への原材料輸出のブームが発生する場合が多い。生活状況が改善した場合、人が最初にすることの1つは、より多くの植物油を消費することである。さらに、原油価格が高騰することに伴い、バイオディーゼルの価格が上昇し、同時にエタノールや植物油の価格も上昇する傾向がある。実際、こうした市場の動向は、原油市場自体の将来的な動向を示唆する場合が多く、これについては本稿のシリーズでたびたび取り上げてきている。

一方、大豆油の価格が高騰した場合、大豆の価格も同様に上昇するものの、その程度では異なる。ただ、大豆価格の上昇は生産者の作付け判断に影響を与えることから、1年以内に大豆の世界生産量を増加させる可能性がある。従って、大豆油の値段が上がると大概において大豆の生産量が増加し、結果、概して効果な大豆油と概して安価な大豆粕、両方の供給が増加する可能性がある。

大豆粕にとって、供給量の増加は弱材料となる。中国経済の成長が加速的になったとしても、家畜による大豆粕の消費量が加速するわけではない – 少なくとも、短期的にはそう言える。従って、大豆粕の供給増加は通常、少なくとも、その価格の下押し要因として作用する。

一方で、中国経済の成長率が失速すれば、全く逆のことが起きる。中国経済の成長の鈍化は通常、工業用金属とエネルギーの需要拡大が失速することを意味し、これによって新興市場の成長鈍化、そして植物油やバイオディーゼルの需要の伸びが低下することを意味する。こうした背景には大豆価格を低下させる傾向があり、大豆の作付け決定に悪影響を及ぼす可能性があることから、大豆油と大豆粕の供給量の増加を共に抑制する要因となる。ただ、大豆粕に対する家畜飼料としての需要については、世界経済成長との連動性が希薄であることを指摘できる。

さらに、大豆油の価格動向がブラジル・レアルと、非常に高い連動性を有していることを指摘しておきたい(図3)。ブラジルは現在、大豆の主要輸出国であり、ブラジル・レアルの動向は最終的に、米ドル建てで認識される最低生産コストに影響し、世界的な生産原価を確定する上で一役買うことになる。図2で参照した様に、ブラジル・レアルは同時に、中国の李克強指数に対して、非常に密接な連動性を示している。大豆以外にも数多くの農産物を中国に輸出しているブラジルは、鉄鋼に関しても、中国で第2位の輸入元となっているのである。

図3: 大豆油の価格動向はブラジル・レアルと同歩調

大豆油とは対照的に、ブラジル・レアルと大豆粕の価格動向は。はるかに大きな分散傾向を示している。正確には、ブラジル・レアルの動向は大豆油の価格に影響を及ぼしているものの、その度合いは、大豆油に比べて非常に限定的であると言える。

図4: 大豆粕とブレジル・レアルの相関性は比較的希薄

このように、貿易戦争が中国経済に著しい減速をもたらすとすれば、エネルギー、金属、新興市場通貨、そして植物油の価格の下落をもたらすかもしれない。ただ、大豆油の価格下落の結果として農家が大豆の生産量を抑えるとすれば、こうした動きとは逆に、大豆粕にとっては、ある程度の強気材料となるのかもしれない。一方で、中国がより緩和的な金融政策や財政政策を通じて貿易戦争の悪影響を相殺することに成功した場合、エネルギー、金属、新興国通貨、そして大豆油などの価格動向は維持される可能性がある。ただし、大豆粕にとっては、それほどの支援材料とはならないと考えられる。

結論

  • 中国の経済成長には、大豆油の価格動向と強い、正の相関関係がある
  • 中国の経済成長には、大豆粕の価格動向と脆弱で、ときとして負に転じるの相関関係がある
  • 大豆油の価格は通常、ポンド当たりで、大豆粕のおよそ2倍から2.5倍超となっている
  • 大豆粕に比べ、大豆油の価格動向は、生産者の作付け判断により強い影響を及ぼす
  • 大豆油とブラジル・レアルの相関性は非常に高い
  • 大豆粕とブラジル・レアルの相関性は比較的低い

 

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本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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