ブレグジットの終盤戦と金利市場のシナリオ

3月12日からの一連の議会採決で、ブレグジットは最も重要な局面に向かうことになる。中でも最重要なのは、おそらくメイ首相がEU(欧州連合)と取りまとめた離脱合意案の採決だと思われる。この合意案に対する支持が勢いを増している様にも見えるが、議会で可決されるかは定かではない。議会がこれを否決した場合、離脱交渉の期間を延長するか、またはEUとの合意がないままにするか、そのどちらかを決める採決が行われる。合意無きEU離脱は議会の大半がこれに反対しているため、その可能性は低い。ブック・メーカーの間でも、最大で15%ほどの確率でしかないのである。一方、労働党、スコットランド国民党、自由民主党などの野党は、再び国民投票を実施することで、どんなものであれ、EUとの合意に国民の意向が反映されることを主張している。3月12日は少なくとも、英国の将来、そしてその経済と金利の今後に、広範囲な影響を与えることになる、興味深く決定的な一連の採決が開始される日となる。

この重要な週を前に、英国の金利先物は、BoE(イングランド銀行)のMPC(金融政策委員会)が金融政策を変更する可能性を、ほとんど織り込んではいない。CMEのBoEWatchツールでは、SONIA(Sterling Overnight Index Average、ポンド翌日物平均金利)先物は、3月21日、5月2日、または6月20日に開催されるMPCで、政策金利が変更される確率は低いと予想されている。一方、8月1日と9月19日のMPCにおいて変更される可能性は、3分の1を若干下回る確率となっている。さらに、11月7日までにBoEが政策金利を引き上げている可能性は、50%に迫る水準となっている(図1)。

ただ、こうした金利予測に伴う問題は、それが矛盾するシナリオを反映していることであり、こうしたシナリオのいくつかは、3月15日までに排除されることになる。SONIAのトレーダーは一方で、合意無きEU離脱の場合にBoEが政策金利を廃棄下げる可能性に対応しなければならない。その一方で、先物市場は同時に、合意案が議会で可決された場合、現在、英国経済と金融市場を覆っている不確実性の雲が離散することで、BoEがより迅速に政策金利を引き上げることになる可能性を勘案する必要がある。従って、将来的な金利動向に関する確率は、議会採決の最中、および直後に、大幅に更新される可能性がある。

4.0%の失業率を背景に、議会が合意案を可決すれば、BoEが25bpt(ベーシスポイント)の政策金利引き上げを可及的速やかに実施することは、想像に難くない。また、2%を下回るインフレ率を考えれば、BoEが6月末まで金融政策を据え置く可能性もある。ただ、経済指標に下振れがなかったとすれば、8月には余裕を以て引き上げを実施すると考えられる。そして、こうした動きは、SONIAの先物カーブが著しくスティープ化することを意味する。また、議会による合意案の可決は英ポンドの上昇を誘うことにもなる。通貨の上昇は反インフレ要因であり、BoEの年内の利上げ回数を1回、多くても2回までに制約する可能性がある。2019年に1回の利上げも見込んでいない現在の市場にとって、これは大きなシナリオ変更となる。 

反対に、メイ首相の離脱合意を議会が否決すれば、こうした見通しは崩壊する。可能性が低いとはいえ、合意無きEU離脱となれば、政策金利は即座に0.5%まで引き下げられ、さらに0.25%へ、そしてそれ以下の水準まで引き下げられる場合も考えられる。より可能性があるのは、交渉期間の延長である。新しく設定される期限まで現在の不確実性が残るというシナリオの下では、SONIAの先物カーブも現状の形を維持することになると考えられる。もちろん、その期限が来れば、英国市場に再びサスペンスが到来することになる。ブレグジットを延期するには、27ヶ国のEU加盟国全ての同意が必要で、何らかの条件付きとなる可能性が高い。さらに、英国民にとっては再度、自国政府が離脱を交渉しているEUの議会選挙への投票を求められる可能性も生じてくる。最後に、英国で2回目の国民投票が実施される場合であっても、不確実性は払拭されず、次のバイナリーな結果をもたらすことになる場合も考えられる – ただ、それがどういうバイナリーになるのかは、実際の投票用紙にどんな質問が記されるのかが判明しないうちは、想定のしようがない。その意味では、あるかもしれない再度の国民投票に向けて準備をする段階では、BoEと金利市場は引き続き麻痺状態、ということになるのかもしれない。

いずれにしろ、3月11日の週は特に、英国の金利市場にとって咀嚼するべき材料の多い一週間になると思われる。CME のBoEWatchツールは、英国議会での決定に応じて、リアルタイムで、先々の金融政策見通しの変化を示唆するものとなっている。

図1:この先6回のMPCにおける政策変更の可能性(3月1日時点)

要点

  • 3月11日の週は、ブレグジットを決める一連の重要決議が英国議会で予定されている
  • 決議の結果によって、金利相場のあるシナリオは排除され、別のシナリオが現実味を増すことになる。
  • 議会決議は、MPCの先々の政策動向見通しに大きく影響する。
  • メイ首相の離脱案が可決されれば、英ポンドの上昇によって、政策金利引き上げの必要性は緩和される。

 

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本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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英ポンド

来週、英国議会で行われるブレグジットに関する一連の採決は、EUとの合意が支持されるのか、合意無きEU離脱となるのか、はたまた再度の国民投票実施となるのか、事の次第によって、英国経済、金利市場や英ポンドに広範囲の影響を与える可能性がある。先物とオプションを用いることで、ポートフォリオのヘッジは可能となっている。

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