金銀レシオ:価格の関係を左右する主な要因

  • 19 Oct 2016
  • By Erik Norland

金と銀は、古代の通貨であり、通貨のように金と銀の交換比率が存在する。2つの金属間の交換比率は、一般的に1オンス当たりの銀価格に対する金価格の比率に設定され、この比率は、長期的に大きく変動してきた(図1)。

1896年、金銀レシオが重要な政治問題になったのは、民主党の大統領候補で銀の鋳造運動を展開していたウィリアム・ジェニングス・ブライアン氏が、金銀レシオの実勢レートが32:1のときに、16:1の金銀レシオを提唱した時であった。最終的に勝利を収めた大統領候補のウィリアム・マッキンリー含め、同氏のライバルは、ブライアン氏の提案が高インフレを招くと警告を発した。

図1:金銀レシオは安定とは程遠い

今日では、金銀レシオが政治的議論の話題に上がることはない。ここ数十年において、金銀レシオは主として金に有利に向いていたが、銀が最近回復してきている。需要と供給の両面において、金銀レシオを左右する主な要因をいくつか特定した。これらの要因は以下の通りである。

  1. 鉱山の利益率と鉱山供給の伸び
  2. 金利感応度
  3. 特に銀について、産業用途の進化

鉱山の利益率と生産量

金と銀の生産量には、共通点がいくつかある。 まず、両方の金属の供給は、過去数十年間で大幅に増えている(図2と3)。金鉱山の産出量は、1980年から183%増加しているのに対して、銀は138%増加している。 またプラチナやパラジウムとは異なり、金と銀は共に、供給ベースがかなり分散されている。

図2:金の供給は1980年以来力強く伸びている

図3:銀の供給も力強く伸びている

金と銀の生産量の変化は、両方の金属の価格に影響を与えているが、必ずしも想定通りの影響にはなっていない。 結局のところ、金鉱山の供給が銀より多かった1970年終盤から1980年初頭よりも、金は現在の方がなぜ銀の2倍以上買われているのか。 この直観に反した展開は、金鉱山の産出量の変動に対する銀の極端に高い感応度と深い関係があり、さらに金の方が鉱山産出量の変動への感応度がさらに高い(図4)。

図4;銀価格は金価格よりも金鉱山の供給変化の影響を受けやすい

金と銀は、部分的に代替可能である。銀は、金よりも産業用途が多く、共に宝飾品に使用される。金と銀の価格が上昇すると、金宝飾品の消費は落ち込む場合が多いが、銀に対する需要は比較的影響を受けない。これは、金宝飾品が手の届かないものになり、一部の消費者は高価ではない銀に向かうためである。そのため、金鉱山の産出量の増加は、金価格を押し下げる傾向にあり、そしてその結果、金宝飾品の消費が増加し、銀は減少する。金鉱山の産出量が減少すれば、この反対のことが起こり、金価格は上昇傾向をたどり、人は金の消費を減らし、銀価格の上昇圧力が強まったとしても、おそらく銀宝飾品の購入を増やすだろう。

また、銀鉱山の供給の変動は、金と銀の価格に強力な影響を及ぼす。それでは、金と銀の鉱山供給の見通しはどうなっているのか。これは、鉱山の利益率と深い関係にある。

銀にとって好材料は、金価格は現在、生産コスト近辺で推移している。つまり、金採掘は、オールイン・コストベースで特に収益性が高いわけではないものの、間接費を考慮に入れない場合にはそれでもキャッシュフローがかなりプラスになっている(図5)。金の生産量の伸びが停滞すれば、金と銀双方の価格を支える材料になる可能性があるが、これまでの相関関係が保たれれば、金よりも銀の地合いが強まり、金銀レシオは低下しやすくなる。

対照的に、銀採掘は依然としてかなり収益性が高く、したがって今後数年間、生産量は金よりも増える可能性が高いように見える(図6)。 銀は1オンス19ドル近辺で取引されているが、銀の1オンス当たりの生産コストはオールイン・コストベースで12ドル未満で、キャッシュコストは概ねその半分である。 ただ、銀鉱山の生産が活気づけば、両方の金属の価格はむしろ均等に押し下げられ、金銀レシオへの影響は穏やかとどまる可能性がある。

図5:金鉱山は潤沢なキャッシュフローを生み出しているが、ほとんどオールイン・コストに達していない

図6:銀は、大半の鉱山操業でかなり高い収益性を維持している

しかし、供給サイドは、金銀レシオに影響を及ぼす一つの要因に過ぎない。需要サイドでは、金利と産業用途も同様に重要である。

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米連邦準備理事会(FRB)の利上げ期待の後退は、他の金属よりも何よりも金価格が恩恵を受けており、金は産業用途が少なく、純然たる貴金属とみなされていることがその理由だ。様々な金属の間で、金はこれまで、金利予想の変化に最も負の影響を受けてきた(図7)。

図7;金は、FF金利の上昇に対して他の貴金属よりもネガティブに反応する

そのため、FRBが、現在のフェデラルファンド(FF)金利の利回り曲線に織り込まれている回数(実質的に2019年末まで2回)よりも多く利上げを実施すれば、銀よりも金の支援材料になる傾向があり、金銀レシオが上昇する可能性があろう。他方、FRBが今から2019年末までに2倍以上利上げを実施すれば、銀よりも金の価格が押し下げられる傾向があり、金銀レシオが低下する可能性があろう。

過去35年間にわたり、金が投資先として銀をアウトパフォームしたもう一つの理由は、おそらく低金利の安定したトレンドと関係しているはずでおり、銀よりも金の方が恩恵を受ける傾向にある。 とはいえ、債券利回りがさらに低下する手ハズが見つからない限り、このトレンドは、限界に達している可能性がある。金利が経路を反転させて上昇に転じれば、銀は金をアウトパフォームするかもしれない。

金利は、需要見通しのほんのわずかな部分に過ぎない。金利は、投資先としての金の需要に影響をもたらすが、銀への影響はそれほどではない。同等のもう一つの大きな部分は、産業用途で、金は産業用途が少なく(図8)、これは主として銀の活動領域である。

図8:金は宝飾品と投資向けの用途が圧倒的である

産業用途と影響

銀が過去15年間の大半において金をアダーパフォームした最終的な理由は、以前は主要な用途であった写真と関係しているのだろう。 デジタルカメラの出現により、伝統的な写真産業は絶滅に瀕し、銀の需要が大量に減ることとなった。これは悪材料である。その一方で、銀板写真は一枚限りで、現在はほとんど消滅した状態である。

その他の好材料は、太陽光パネル向けの需要が急増しており、銀は、一部の太陽高パネルに使用されており、将来の需要の伸びの有力な源泉となる可能性が広がっている(図9)。

図9:銀の需要の伸びはさらに太陽光パネル頼みになる可能性あり

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミストです。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信しています。

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