インフレがここまで制御されている理由

低失業率と忍び寄るインフレ期待上昇で、米連邦準備理事会(FRB)は2018年に利上げを2~3回しそうだ。そして、米国債利回りは少し高めに推移するかもしれない。ただし、注意してほしいのは、この総意的シナリオが起こり得るのは、インフレが実際にそのシナリオに従い、上昇し始めた場合だけである。ジャネット・イエレン博士は、もはやFRB理事長ではなくなる。しかし、ジェローム・パウエル率いるFRBと債券市場参加者は、イエレン率いるFRBと全く同じようにデータ依存が続きそうである。 

 

図1

インフレは、20年以上の間、抑制されてきた。これは最近の現象ではないし、2008年の金融危機が時間差で影響したせいではない。事実、消費者物価指数(CPI)であれ、FRBお気に入りの個人消費支出(PCE)デフレータ、米コアインフレ率(変動の激しい食品とエネルギーを除いたもの)であれ、1994年以降、1〜3%の範囲にとどまっている。この24年間、米国の失業率には2つの大きなサイクルがあった。ハイテク株の上昇と崩壊、住宅のブームと大規模な不況である。どちらも、短期金利が5%超となってからゼロ近辺となった。しかも、FRBによる大規模な非伝統的金融政策がいくつか試みられた(つまり、資産買い入れや量的緩和=QE)。したがって、今後のインフレについてのさまざまなシナリオを評価するため、客観的になって、この20年を超えて抑制されてきたインフレの根本的な原因を調べる必要がある。そして、そうすることで、いくつか単純化されたインフレ予測理論に注目したい。得てして大胆な(そして誤った)前提条件を調べることで、ほとんどのインフレ理論がいかなる予測値にも完全に失敗している理由、FRBがデータに依存する理由、金利見通しが不透明なままの理由について優れた判断力を得られるだろう。

中心テーマは基本的経済からそのまま来る。つまり、価格の上昇(つまりインフレ)は、支出需要が物品・サービスの供給を超過して生じる。これから、インフレ予測のさまざまな手法の紹介するため、支出の需要または物品・サービスの供給でのパターンの変化に注目していきたい。共通のテーマは「情報化時代の経済の構造変化は、需要支出の生み出し方や、物品・サービスの提供方法を大きく変えた」となる。そして、こうした情報化時代のパターン変化の結果は、実質的にすべての簡略化された予測アプローチを効果的に無用なものにした。

現在の金融政策は実体経済と関連性が低い

50~60年代、シカゴ大学のミルトン・フリードマン教授は、たとえ、金融政策の遅れが長くて変化しやすくても。インフレの主な原因として通貨供給の研究で有名になった。60~70年代に、マネタリストのインフレ理論は、インフレデータに例外的によく合った。しかし、80年代後半には破綻した。その後、経験的裏付けを取り戻していない。

マネタリストの理論はどこがうまくいかなかったか。貨幣供給と支出需要の前提関係が完全に破綻していた。50年代を振り返ると、物品やサービスを購入したい場合、現金か金利を払わない当座預金の小切手で支払った。50年代には普通預金口座があったものの、まだ小切手で切れる特権がなかった。クレジットカードの使用は最小限であり、クレジットカードで借金する機能には制約があった。投資口座から支払口座に資金を即座かつ効率的に移動する機能は、夢だった。証券総合口座も取引口座も小切手を切るのを認めなかった。インターネットやスマートフォンで送金することは不可能だった。この古き良き時代では、通貨供給は支出と非常にしっかりと相関していた。したがって、通貨供給量の急増が将来的支出や将来的インフレの良い予測手段としなった。物品とサービスの供給が、通貨供給量の増加よりも遅い速度で増加すると仮定せざるを得ない。

80年代以降は、支出需要を形成する方法で大規模な変化が到来し、通貨供給のありとあらゆるモノサシとの関連が切れた。当座預金で利息が支払われる可能性が出てきた。小切手が証券会社の取引口座で切れるようになった。クレジットカードに利用者の裁量で利用できる与信枠(限度額)が設定されるようになった。こうした、支出だけを促進する方法の変化が、通貨供給量とインフレの相関性を破壊するのに十分であった。また、FRBは80年代後半に通貨供給量の目標レンジを設定するのを止めた。そして90年代以降の数十年となる。情報化時代は、スマートフォンとインターネットで、数多くの送金・信用管理の方法をもたらした。

しかし、物語はそこで終わらない。通貨供給量による測定がもはや将来的インフレの良い予測方法にならないとしても、金利政策や量的緩和が将来のインフレに影響を及ぼすと予測する向きがまだあるかもしれない。しかし、金利政策も中央銀行の資産買い入れも、ここ25年にわたってインフレ率と相関するいかなる証拠も生み出していない。

90年代前半以降、2つの重大な力が働いているようにみえる。それらが、インフレと実体経済に対しての金融政策の影響不足に貢献しているのだ。ひとつは、資本要件に焦点を当てた健全性に関する銀行規則の増加だ。もうひとつは、金融業の洗練された金利リスク管理の台頭である。

銀行など貸出機関が健全性規制によって資本制約が入ると、支出需要を動かし得る信用を拡大できない。たとえ、短期金利が比較的低く、現行のインフレ率を下回っていたとしても、信用の伸びは、資本要件に制約される。たとえ、FRBが米国債と住宅ローン担保証券を爆買いしても、銀行融資は資本要件に制約される。金融システムの保護を目的とした健全性規制の台頭は、1989~91年の景気後退で貯蓄貸付機関が崩壊したあと、相当な勢いで増えた。そして、インフレ管理の観点で、金融政策にほとんど効果をもたらさないという予期せぬ結果となった。銀行規制に向けて政策の軸足を置いたため、中央銀行のマクロ経済ツールによる影響は衰えた。政策環境は安定しており、金融政策の有効性に影響しないという、マクロ経済モデルで最も学究的なエコノミストによって組み込まれた前提は、何から何まで間違っていた。

1990~91年の貯蓄貸付組合(S&L)危機には、また別の影響があった。S&Lは基本的に短期(貯蓄口座)で借りて、長期(住宅ローンと後に高利回り債)に貸し出す機関であった。実質的に金利リスクを取った。そして、多くのS&Lがそのリスクをヘッジなどで管理していなかった。満期仲介のリスクを取るためのプレミアムを稼ぐことが、この営業モデルの不可欠な部分であった。S&L危機後、米国経済に残されたいかなる重要な金融機関で、洗練された金利リスク管理プロセスを採用していないところは、事実上ない。

金融業界で金利リスク管理が進展した興味深い結果のひとつが、金融機関の収益性が金利政策の変更によって影響をより受けにくくなったことだ。つまり、FRBの金利政策での小さな変化は、もはや金融業界の収益性に影響をもたらさないのだ。

金利リスクが、より効率的に管理されるようになったため、金融機関の帳簿に残された大きなリスクは信用リスクとなった。つまり、景気後退で融資ポートフォリオにある信用の質が大幅に落ちるリスクである。そして、信用リスク部門でも、数十年以上にわたって金融機関は信用リスクの評価と管理する能力を大幅に改善した。2008~09年のような深刻な景気後退で対処するには不十分であるものの、効果的な信用リスク管理が、実質経済成長率に影響を与えるためにブレーキやアクセルを踏むFRBの能力を制限しているのだ。

確かに、FRBが短期金利を現行のインフレ率を上回って急激に上げた場合、景気後退の引き金となる可能性があるのは間違いない。しかし、マクロ経済的管理と微調整が、その可能性を次第に少なくしていった。この後者の点が、FRB政策による結果の非対称性をいくつか示している。まだFRBは、過度な引き締め(得てして利回り曲線=イールドカーブの形状で測定される)によって景気後退の原因となり得る。短期金利が長期金利と同等のとき(平坦な利回り曲線)、あるいは短期金利が長期金利よりも高く設定されているとき(逆転した利回り曲線)、1~2年後には景気後退になりやすい。その反対側は、もうそれほどうまく機能しない。ゼロに近い金利と資産買い入れが、そうしなかった場合よりも株式と債券の価格を上げることはできる。しかし、実体経済とインフレへの影響は事実上、存在しない。言い換えるとこうなる。FRBにはまだ資産価格インフレを生む力がある。2010~16年の期間で緊急措置的な低金利とQEでそうしたように。しかし、FRBが、すでに良いペースで雇用が創造されている経済で、さらなる発展を促す能力は非常に限られているのだ。

最後に注意点をひとつ整理して挙げておく。2008~09年のように景気後退が金融市場の失敗によって引き起こされた場合、中央銀行の資産買い入れ(つまりFRBのアプローチ)あるいは緊急流動性貸付の供給(つまり欧州中央銀行=ECBのアプローチ)は、景気後退の被害を制限し、不況への悪循環を防ぐことができる。ただし、この景気後退を阻止する能力は、経済が再び成長に転じている場合、さらなる経済成長を促す能力に変換されない。

金融政策でなければ、財政政策はどうか

金融政策は、政策立案者が望む、さらなる経済成長とインフレ圧力の生成に失敗している。そこで、米国は2018年に、大規模な恒久的な法人減税が経済成長を促し、ひょっとしたらインフレを多少高く押し上げるのではないかみるため、かなり壮大な実験に着手している。その結果は観察には興味深いものの、それほど明確ではない。減税と支出の結びつきがかなり緩いからだ。企業は株式の買い戻し、より大きな配当の支払い、債務の借り換え、あるいは買収を選ぶかもしれない。どれも株主価値を向上させる可能性が大いにあるとはいえ、実体経済に何の影響もないかもしれない。国内実体経済で、さらに高い支出がみられるのは、企業が、より高い賃金を払う、あるいは米国での拡張計画に投資をするために減税を利用する場合だけである。いくつかは実際に起こるかもしれない。大きな問題は、経済成長で実質的な違いを生むのに十分なのはどれだけか、そして十分であるかである。減税が明らかに物品・サービスへの支出を増やすと仮定すれば、実質成長率の上昇とインフレ圧力が、支出需要の増加という仮定に続いて起こる。企業への恒久減税と、比較的裕福な個人に対する暫定的な税率引き下げが、支出需要を大幅に引き上げないと仮定すれば、もちろん、成長とインフレへの影響も小さいくなる。

現在の政策目標にではないが、この分析も、政府支出の増加が支出需要を刺激する、より直接的な方法であると示唆している。結局のところ、国内総生産(GDP)は消費、投資、政府支出、そして純輸出の合計である。政府支出の増加が、法人税でもめたり議論したりしなくても、国内経済の支出需要の増加に直接的に使われる。実際のところ、2009年に一度きりの緊急財政支出の後、2010~17年の間、米連邦政府の支出の増加率の抑制は、ほぼ間違いなく、ゼロに近い短期金利でさえ、インフレが抑えられ続けている理由のひとつであった。

分析対象となる財政政策のもうひとつの問題点が国の債務の増加である。少なくとも短期的には、減税と財政支出の増加は、どちらも赤字を増加させるのに働くだろう。経済成長率が実質的に上昇すると将来的に見えてきた場合にのみ、税収が法人税率の引き下げや政府支出の増加を一部相殺するだろう。ただし、ここで注意したいのは、借金の増加が、将来的な景気後退のシグナルとはならないことだ。長期的に見て、経済が成長していると、対GDP比で債務をより引き受けるのが通常である。しかし、債務の対GDP比が増えるにつれて、経済がより脆弱になり、より金利に敏感になる。つまり、金利が高くなると、支払利子が高くなるので、国家債務の増加は、金融政策が失敗するリスクを高める。それは、あまりにも急速に利回り曲線が平坦もしくは逆転することだ。そして景気後退の引き金となる。結論として、借金の増加は、短期金利の引き上げという点で、FRBがより用心深くなるといえるだろう。

そして、なぜ引き締まった労働市場がインフレの上昇となっていないのか

それでは、労働市場のインフレ理論に移ろう。ジャネット・イエレン委員長のような労働経済学者の前提は典型的に、低失業率が引き締まった労働市場を示しており、つまり乏しい労働力に対する激しい競争を意味し、そして、それが時給の上昇を導き、消費需要の増加のシグナルとなるというものだ。確かに、賃金インフレと消費者物価インフレには、緩い同時の相関性がある。しかし、その関係は、必ずしも因果関係があるわけではない。経験的に関連があるにすぎない。そして、労働市場が数十年をかけて変化しており、よりサービス業の雇用がどんどん多くなり、製造業の雇用がどんどん少なくなっている。そのため、時給からインフレへと働きかけていく因果関係の主張が、崩壊していないとすれば、弱くなっている。

支出需要に焦点を当てるため、総労働所得の伸び率に注目したい。総労働所得の伸びは、雇用の伸び(人々がさらに就労している)、労働時間の伸び(人々がさらに長く働いている)、時給の伸び(人々がさらに支払いを受けている)の合計である。こうした項目のどれかひとつに単独で注目するだけでは、間違った答えを得るリスクがある。ジャネット・イエレンは、答弁で労働市場のデータを包括的に分析することを強く推奨していた。何が本当に起きているか、質的に評価できるすべてのモノサシに注目するのだ・

しかし、多くのアナリストが時給の伸びにおいている注目は、見当違いである。問題は、ご想像どおり、その前提にある。時給の伸びと総労働所得にある関連は、どのような職が生み出されているかによるところが多い。エコノミストがつくったほとんどのモデルが、経済の中で職の分布が安定していると仮定している。もちろん、この企業破壊の時代に、それは何から何まで間違っている。経済は、多くの低賃金サービス職を生み出しており、比較的賃金の良い製造業の職を失わせている。これは数十年にわたる流れである。したがって、なぜ、それほどまでに多くの学術的・政策志向のエコノミストが、インフレ予測モデルで、それをより重視していないのは、実践的エコノミストにとって謎である。職の増加が見て取れる比較的高給職は唯一、ビジネスの専門家である。財務、会計、保険、法的専門職などだ。この職種は非常に小さすぎてインフレの針を動かすことはできない。つまり、求人が比較的低い賃金の専門職に移行している場合、消費者物価インフレの進路とは関係なく、全体の平均的な時給の伸びは低めに偏ることになる。

この話もそれだけにはとどまらない。支出需要には、支出する能力と意欲の両方が関わる。総労働所得の伸びは、支出する能力の変化を測れるものの、必ずしも使う意欲を反映したものでない。失業への恐怖が、消費意欲に影響する大きな要素であるとみている。

2008~09年の金融不況を経て、多くの企業が職を減らした。自分の職を守った人は、家族・友人・同僚が職を失うのを目撃しているかもしれない。これは行動金融学と心理学の領域である。しかし、景気後退からの回復には、はるかに多くの雇用の創造が含められると主張するだろう。労働市場に蔓延している景気後退で職を失う恐怖が消えるには、かなり長い時間がかかるからだ。したがって、支出需要は、失業の恐怖が和らぐまで、総労働所得の伸びの線形的な外挿にまで届かない。そして、企業破壊の時代に、失業の恐怖はそう簡単に排除されない。例えば、実店舗販売は破壊されており、物品配達の職が生み出されている。破壊されている業種にいなければ、全体的に雇用の伸びはうまくいっている。そして、失業の恐れは残っている。つまり、2008~09年の金融不況を経て、長く続いているものの控えめな景気の拡大で、支出需要は、職と所得の維持への信頼回復が非常に遅いことで引き止められているのだ。年々拡大するたびに、恐怖は収まっていく。しかし、この破壊の時代では、それはゆっくりとしたプロセスとなる。

2018年の見通しとリスク

2018年米国のインフレと成長見通しに関して、最初の結論は、伝統的な単純化した予測アプローチをほとんど信用しないことである。こうした単純なモデルをかつて有益にした大胆な前提は、当の昔にゴミ箱に追いやられている。いや応なしに、分析は微妙で複雑になる。

さまざまな要素を考慮したとき、私たちの見解は、グラスに半分以上も入っており(訳注:楽観的になっており)、2018年には支出需要が徐々に上昇してみえるかもしれないというものだ。重要な要素が2つある。

まず、世界経済の成長率が上昇している。世界経済の成長率改善は、必ずしも同じ分ではないものの、何をやってもうまくいく傾向がある。世界的な成長率の上昇は、少なからず、ロシアなどコモディティ生産国の状況改善、ブラジルなど政治的に誘発された深刻な景気後退に苦しんでいた国の回復のおかげである。欧州と日本でも実質GDP成長率が若干上昇している。世界の実質GDP成長長は年4%に向かっている。これは米国経済も同様に徐々に改善されるためのすばらしい追い風となっている。

図2

もうひとつは、失業の恐怖が年々薄れていることだ。雇用の拡大が、2009年後半に始まった景気拡大以降、非常に安定している。すでに述べたように、雇用の拡大は比較的賃金の低いサービス業で導かれている、しかし、他の業種に雇用の拡大が波及する余地もまだある。それは自分たちの将来にはるかに大きな自信を持つことになる。

新しい税法もある。恒久的法人減税を主とし、いくつかの控除の除去を伴う個人所得税率の暫定的引き下げるものだ。概して、新しい税法の影響は、その影響を完全に受けるまでに数年かかる。2018年の支出需要についての結果は、大きくなりそうにない。法人減税のほとんどが、まずは自社株買い、高い配当金、債務整理、買収・合併による株価上昇に注ぎ込まれるからだ。それでも、新しい税法の短期的影響は、経済にとって肯定的になりそうだ。ただし、世界経済の成長率改善による追い風と、消費者の強い信頼を導く失業の恐怖の薄れを解決するのは非常に難しい。

基本シナリオは、米国のコアインフレ(食品とエネルギーを除く)が2018年に徐々に上昇圧力を増していき、2018年12月までに前年比2.25~2.5%に向けて上昇することだ。これは、コアインフレを数十年におよぶレンジの上半分(1~3%)にまで押し上げる。しかし、これは明らかに、その先に4~5%のインフレに向けて突破させる性質のものではない。

 基本的な経済成長予測は、米国の実質GDPで約2.5%である。これは2010~17年の平均2%を超える明らかな改善である。しかし、その漸増であり、プラス3%の実質GDP成長率に大きく変化するわけではない。ここでは細かく触れないものの、米国経済にとって最大の制約要因は、人口動態と経済政策によるものだ。まず、労働力の伸びの減速がある。その計算は、実質GDP成長率が労働力の伸びと労働生産性の伸びをまとめたものだ。人口動態は労働力の伸びの鈍化を示しており、労働生産性はその後退を抑えきれないでいる。次に、極めて大きなベビーブーマー世代が退職者になっている(支出需要の減少)。一方、それほど大きくはないミレニアル世代が労働力になる。この世代は、特に重い学生ローン債務に妨げられており、支出需要が抑制されている。

予測されるもうひとつのリスクが貿易政策の行方だ。米国はカナダ、メキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に入っており、交渉は大きく行き詰まっている。米国(またはカナダ、メキシコ)は通知から6カ月後にNAFTAを一方的に脱退できる。しかし、そうした決定は米国経済のさまざまな業界に混乱をもたらすだろう。例えば、トウモロコシ、天然ガス、肉牛である。どれも米国からメキシコに輸出をしている。また、生産が域内で統合されている自動車産業もそうだ。米国内で自動車販売台数が減少すると予想されており、いずれにせよ、厳しい年となるだろう。米国が一方的脱退を選択すれば、株価はおそらく低下する。そして、NAFTA崩壊が米国、カナダ、メキシコの経済にとって、いかに重大な意味を持つかを示すだろう。米国はまた、韓国とも貿易協定の見直し交渉を進めている。しかも、米国は環太平洋連携協定(TPP)から離脱した。貿易は世界経済の成長に欠かせない促進力だ。かつて大恐慌にダメを押したのはスムート=ホーリー法で高い関税をかけたことだった。ただし、今のところ見通しでは貿易交渉を良性の問題としている。

まとめると、低失業率とインフレ期待の上昇で、FRBは2018年に2~3回の利上げに向かっている。しかし、利上げのペースは、期待ではなく、実際のインフレの動きによるだろう。また、新しい税法の成立で、短期的には財政赤字と国家債務の増加が予想されることから、FRBは、利上げを非常に慎重に進め、ゆっくりと実施する可能性が高い。最後に、FRBは、景気後退の原因として非難されるのを望んでいない。また、将来的な景気後退の最高の歴史的指標となっているのが、短期金利が長期債利回りとおおよそ等しくなることで、利回り曲線が平坦な形状に移ることである。利回り曲線が平坦化すると、FRBは、この指標の価値について議論するだろう。ただし、万が一、利回り曲線不況指標が依然として機能している場合に備え、FRBの動きは慎重になるだろう。


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著者について

Bluford “Blu” Putnam(ブルフォード“ブル”パットナム)CMEグループ・マネージング・ディレクター兼チーフ・エコノミスト。中銀の政策分析・投資調査・ポートフォリオ管理を中心に金融業界で35年を超える経験を持つ。2011年5月より現職。世界経済情勢に関する情報発信で中心的な役割を担う。

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