農産物オプショントレーダーのぎこちない“スマイル”

最近の記事で農産物先物オプションについて、特にラニーニャ現象が発達しているにもかかわらず(今のところ比較的穏やかとはいえ)、アット・ザ・マネー(ATM)の評価が不思議と低めであると指摘した。そのATMオプションと同じぐらい興味深いことがある。アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のプットとコールが独自の筋書きを示唆しているのだ。おそらく、さらに魔訶不思議といえるだろう。

オプショントレーダーにトウモロコシ・小麦・大豆・大豆ミール相場の方向性リスクについて尋ねれば、上方に大きく偏っていると答えるはずだ。各商品でオプショントレーダーに請求されるプレミアムを見ると、OTM(現在値を下回る権利行使価格)プットよりもOTM(現在値を上回る権利行使価格)コールのほうが、かなり高いからである(図1~4)。これは相場の下落よりも上昇に対する恐怖のほうが大きいことを示唆している。 

図1 トウモロコシ・インプライド・ボラティリティ(IV)のスマイル(2018年2月20日現在)

図2 硬質赤冬(HRW)小麦IVのスマイル(2018年2月20日現在)

図3 大豆IVのスマイル(2018年2月20日現在)

図4 大豆ミールIVのスマイル(2018年2月20日現在)

いくつかの点で、上方リスクに恐怖を抱くのは驚くほどのことではない。不作となり価格を急騰させる可能性は常にある。最近では、アルゼンチンの高温乾燥を受けて大豆ミール相場に動揺が走った。また、価格上昇への恐怖をいっそう強めているのが、最近の相場低迷だ。多くの農家で生産コストぎりぎり、もしくはコスト割れとなっている。現水準よりも大幅に安い価格となれば、2007年までさかのぼらなければならない(図5と図6)。 

図5 低迷する価格がリスクをさらに歪めているのか?

図6 大豆・大豆ミール相場は本当に上方リスクに偏っているのか?

しかし、相場はすでに安値圏にありながら、さらなる下値が懸念されている。トウモロコシ・小麦・大豆、各穀物で生産と在庫が急増しているからだ(図7~12)。もし、ラニーニャで南米の収穫に深刻な被害がなければ、あるいは北米の作付・生育に支障がなければ、すでに高水準にある期末在庫や記録的水準にある生産が、さらに下押し圧力となる。特に、これは黒海でトウモロコシ・小麦の生産急増が続いた場合はそうである。農産物価格の将来的変動が正規分布している(上方リスクと下方リスクが等しい)と確信するなら、価格急落の見込みは価格急騰の見込みに等しくなるはずだ。

図7 大豆生産は2018年に史上2番目の豊作になると予測されている

図8 2018年は大豆在庫が過去最高になるとみられている

図9 トウモロコシ生産は2018年に過去2番目の豊作になるかもしれない

図10 米農務省(USDA)は史上4番目の期末在庫になると予測している

図11 小麦生産は記録的水準に

図12 小麦在庫も記録的水準に、それでも本当に強気なれるか?

なお、下方リスクは豊富な供給だけではない。世界経済は足並みを揃えて回復しており、需要が力強く増えるように見えるものの、中国が信用状況を引き締めている。世界最大の人口を誇る国が成長を減速させるかもしれないのだ。それは、コモディティ価格や新興国通貨の新たな下押し圧力となる可能性がある。したがって、私たちは農産物全般でインプライド・ボラティリティ(IV)のチャートが、いびつな「スマイル」を描いているのに懐疑的だ。オプショントレーダーの予想よりも上方・下方リスクはバランスのとれたものになるかもしれないと注目している。


 

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本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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