ボラティリティの6要因

  • 16 Apr 2015
  • By Bluford Putnam

ボラティリティの復活! 2008年の金融危機による各国中銀のゼロ金利政策や量的緩和 (QE) によって、ここ数年のボラティリティは低下していたが、市場はここにきて先行き不透明な要因に反応を示し始めている。本資料では、市場のボラティリティにつながる主要6要因についてまとめた。

ボラティリティの復活! 市場はここにきて先行き不透明な要因に反応を示し始めている。

  1. 米国金利: FRBによる金利引き上げ実施はタイミング次第となりそうだが、経済指標に頼りがちなFRBと一時的に弱い数字のお陰で、市場の思惑は交差しそう。
  2. 米国債利回り: 欧州と日本のQE は利回りを引き下げ、相対的に米債を「ハイイールド」債にしており、見通しに混乱を招いている
  3. 米国株式市場: 低インフレや購買力低下で増収が見込めないことで企業収益を抑圧。株価利益率が妥当でも、企業M&A活動が活発であっても、企業収益への失望はボラティリティ上昇を招こう。
  4. 原油: 石油価格急落で石油会社は、数年間の損失に甘んじる方が直ちに破産するよりも良いという判断から、生産コストぎりぎりでのキャッシュ・フロー創出が切り札となっている。
  5. 金: 金融不安やインフレ懸念がないため、もしFRBが利上げに動けば、金価格は下振れするかもしれない。
  6. ユーロ通貨: 5月の英総選挙への不透明感により、イギリスのEU離脱問題が焦点となる。スコットランドにより労働党の単独過半数が阻止され、EU離脱問題への混乱が生じるならばポンド、ユーロ通貨ともにボラティリティが増すであろう。
 
 

1. 米国金利

米国労動市場は、2015年3月の軟調や石油価格下落によるデフレ圧力があるものの、堅調に推移している。これらのファンダメンタルズがFRBの金融政策の議論の鍵となっている。FRBは2015年中にゼロ金利政策を解除し、FF金利の誘導レンジを引き上げるだろうか (図 1)? 察するに、FFレートがコアインレ率を下回るような実質マイナス金利は、この5年間のそれなりの経済成長の後では不適切であるというのが、FRBで金融政策を決定するFOMCのタカ派とハト派の間での共通認識と思われる。ただ、利上げ実施の時期については、依然不透明だ。2015年Q1 の実質GDP は驚くほど弱くなりそうで、ドル高や中国の成長鈍化という国際的な要因と合せて、利上げ実施を遅らせる議論も呼びそうだ。FRBはその決定を経済指標に照らし合わせることを名言しているが、その数字自体にブレがある。このため今後のFRBの金融政策への思惑が交差し、米国短期セクターの値動きを上下させそうだ。

図1

2. 米国債利回り

FRBによる利上げのタイミングが議論されるなか、米国債券利回りの上昇も予想されるが、これも先行き不透明だ。米国債利回りの上昇は世界的な要因で抑制されているからだ。日銀による大規模な量的緩和や、2015年のECBやユーロ圏の中銀によるさらなるQEの実施により、日本国債やドイツ国債の利回りは 0.40%を下回っており、 今やスペインやイタリアの10年債利回りの方が米国債よりも低い 状態だ(図 2)。堅実的で利回り志向の国際投資家が「ハイイールド」な米国債を好む傾向は続くだろう。FRBの利上げのタイミングへの議論は短期セクターを動かすだろうが、長期セクターは並行に上昇せず、日銀やECB のQEでカーブはよりフラット化する傾向となろう。国内の要因では、FRBはQEを2014年10月に終了しており、米国の財政赤字削減の傾向で新規サプライも限られている。これらを合せて考慮すると、幅広いレンジでのボラティリティの動きが予想される。

図2

3. 米国株式市場

企業収益の伸びが米国では焦点となる。米国に価格上昇がみられないため、増収が見込めず、収益の伸びは経費削減やマージン縮小次第という状況に陥っている。遅行指数である実質GDPの数字から見る限り、収益減速は確実に進んでいる(図 3)。依然として株価収益率は妥当な範囲にあり、潜在的な企業のM&A 意欲も買い材料となるが、長期的な株価上昇には企業収益の伸びが不可欠となる。ここでは供給過多や比較的弱かった2015年Q1の実質GDPの影響で石油価格が急落しているエネルギー関連の動向がボラティリティの鍵となりそう。(a) ガソリン価格下落からの節約分が他の支出に向かっていない (b) 西海岸ドックの混乱はウォール街での予想よりも経済的打撃などが懸念材料。企業業績の発表シーズンとなれば、株価のボラティリティは上昇するかもしれない。

図3

4. 原油

石油部門は、WTI原油で バレル当り$45-$60と、市場は非常に幅広い取引レンジ内で落ち着きつつある (図 4)。いくつかのリグが 稼働停止したものの、石油会社は融資返済や稼働費用を捻出するために生産を続けて、現金収入を得なければならない。数年間の損失に甘んじる方が、直ちに破産するよりも良いという経営判断から、生産コストぎりぎりでのキャッシュ・フロー創出が切り札となっている。石油価格が上抜けするために必要な要因として、 (a) 中東からの石油の流れに深刻な混乱、または (b) 中国を含む新興市場の持続的かつ強固な経済成長、が挙げられる。前者は当面その懸念はなく、後者は実現していない。中国の成長率は減速を続けており、政府の公式成長目標が示唆するように、景気減速は更に鮮明となりそうだ。

図4

5. 金

金は一般的に、金融不安上昇時のポートフォリオのヘッジ、またはインフレ時の資産価値の保全として購入されるが、そのどちらも現在は懸念材料となってはいない (図 5)。もしFRBが米国のコアインフレ率に見合うように金利を引き上げるならば、金価格は下振れリスクを増すことになろう。グローバル面では、インドと中国という2つの購入大国があるが、中国は成長減速の一方で、インドは新政権下で堅調な成長と、正反対の動きを見せている。こうしたなか、中国通貨という珍しい要因からボラティリティが生じる可能性がある。中国の人民元は対米ドルと密接な動きを維持してきたが、これは人民元が多くの世界通貨に対して米ドルとともに堅調に推移してきたことを意味する。堅調な人民元は中国の輸出に打撃を与えてきたが、もし人民元の取引レンジが広がるならば、人民元の下落もあるかもしれない。人民元安に転じるなら、中国のヘッジとしての金需要に拍車がかかるかもしれない。

図5

6. ユーロ通貨

5月の英総選挙は、イギリスだけでなく欧州連合(EU)にとっても大きな焦点となる。興味深いことに結果はスコットランド次第ともなる。2014年9月にスコットランドは英国残留となったが、スコットランド民族党(SNP)への支持は急速に高まった。そして今回の議会選挙ではスコットランドが鍵となる。もしSNPが20議席以上を獲得するなら、どの政党も単独過半数を獲得できない「ハング・パーラメント(宙づり議会)」となる。肝心なのは、もしSNPが躍進するならば、それは労働党が議席を削ることだ。保守党はスコットランドでわずか1議席を守るかどうかであり、労働党は40議席の攻防となるからだ。もし労動党がSNPのお陰で過半数をとれなければ、保守連立の支配、あるいは投票から投票ごとに脆弱な妥協をする小さな政府となろう。スコットランド問題の根本は自治権の拡大である。ヨーロッパにとっての大問題はイギリス独立党(UKIP)がEU離脱を望んでいることで、保守党をその流れに引きこもうとしている。保守党はEUからの離脱を問う国民投票の実施を公約しているが、これはポンドのみならずユーロ通貨に相当のボラティリティを与えることになろう(図 6)。

図6

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