米国株の行方:調整後はどうなる?

米国株は何年にもわたって、調整を経ずに上昇してきた。FRBのゼロ金利政策と量的緩和政策により、投資家が「利回り追求」の姿勢を強め、過大なリスクを取りやすい状況にあったことがその理由と考えられる。しかし、国外の要因によって調整が起きた。2015年8月に、中国が震源となって世界中の株式市場で発生した調整局面は、米国株の先行きに関する重要な疑問を提起している。

米国における高水準の消費者信頼感と、企業利益の緩慢な増加ペースにより、今後数ヶ月間は波乱含みの相場になると私たちは予想している。

米国における高水準の消費者信頼感と、企業利益の緩慢な増加ペースにより、今後数ヶ月間は波乱含みの相場になると私たちは予想している。調整局面の引き金となったのは中国だが、今後は国内の要因が米国株の行方を左右するだろう。

株式市場と消費者信頼感は、ともに2009年に底を打った後、2015年8月まで上昇を続けた。S&P 500指数は、2009年の安値から200%以上の上昇を記録し、年率にして平均20%超の複利リターン(配当金込み)を生み出した。

コンファレンス・ボード(CB)が発表する米消費者信頼感指数は、0から200の数値で示される景気動向指数だ。この指数は2009年2月に25.3、翌3月に26.9という過去最低水準を記録したが、最近の一年では90~104の範囲まで上昇している。ただ、過去には消費者信頼感の上昇後に株価が下落したケースがあり、市場にとっては良いニュースにならないかもしれない。その一方で、現在の株式市場の混乱が消費者信頼感を落ち込ませたとしても、それが必ずしも株価の先行きに悪影響を及ぼすとは限らない。

CB消費者信頼感指数の水準と、7年後のS&P 500の実質利回りの間には、確かな関連性が見て取れる(S&P 500の実質リターン = 株式のキャピタルゲイン + 配当金 - インフレ率)。

1960年代末、1990年代後半、そして2000年代前半に消費者信頼感は大きく上昇したが、その後の7年間は株式市場のパフォーマンスが低下した。対照的に、1980年代前半、1990年代前半、そして2009-11年には消費者信頼感が著しく低下したが、その後、株式市場の目覚ましい上昇が続いた(図1)。

現在のCB消費者信頼感指数の水準は、指数が制定された1968年以降の平均をやや上回っている。この状況は、今後の株式市場が平均的、または平均を下回るパフォーマンスになることを示唆しているかもしれない。歴史的に見ると、消費者信頼感が現状の水準に近かった時、つまりCB指数が101.5前後になった時には、7年後の株式の実質平均利回りはトータルで約20%、年利換算では約3%になっていた(図2)。 これは冴えない数字であり、2009年以降に記録した20%超の年利から見れば、かなり期待外れの結果と言えるだろう。

図 1.

この相関関係は、ブレが非常に大きい点に注意が必要だ。今から47年前にCB指数が制定されて以来、同指数が現状の水準と同じ100前後になった時には、その7年後の株式リターンは最低で-45%、最高で+100%という振れ幅がある。統計の中心傾向により、2022年夏には20%のリターンが生じると見込むことは合理的であるが、過去のデータは中心から大きくバラけており、今後生じる結果がこの範囲に収まるという保証もない。

現在の株式市場の混乱によって、仮にCB消費者信頼感指数が90まで下落したとしよう。その場合、7年後の株式の実質利回りは前述の予想よりも高くなり、トータルで約60%(年利約7%)のリターンになり得るだろう。それでも依然として、S&P 500の長期平均を下回る。

消費者信頼感が現在の水準よりもさらに上昇した場合は、短期的に株価を押し上げることはあっても、長期的には悪い兆候になり得る。過去の例では、CB消費者信頼感指数が110前後まで上昇すると、その7年後の株式市場の実質平均利回りはゼロに近づく。ただ、このケースでも利回りの振れ幅が大きい。CB指数が110に達した後の株式市場のリターンは、最低で-40%(1972年~1979年)、最高で+80%(1983年~1990年)となっている。歴史的に見ると、CB指数が120から140の範囲まで上昇すると、以後のリターンは急低下する。反対に、指数が60以下まで下がると、その後のリターンは大きく上昇する(図2)。

図 2.

株価の上昇ペースに陰りが出てきた場合は、これまでに比べて相場の変動が激しくなる可能性がある。市場は2011年9月から2015年7月までの4年間、一度も大きな調整局面を経験していない。しかし今後は、この数週間で起こったようなボラティリティ(価格変動率)の激しい上昇が、より高い頻度で起こるようになるだろう。仮説上は、株式が年率20%超のペースで上昇している時よりも、年率3%のペースで上昇している時の方が、ボラティリティが高くなりやすい。つまり、利回りとボラティリティの間には負の相関関係がある。

もう一つの不安材料は、企業利益だ。この数年で企業利益は大きく増加したが、労働資源の不足、または生産性の向上ペースの鈍化といった要因により、利益の伸びが頭打ちになっているようだ。金融危機の後、対GDP比で5%程度だった企業利益が、同10%程度にまで回復した(図3)。 問題は、企業利益が対GDP比で10%を上回ったことが過去には一度もないということだ。加えて、一時は対GDP比で10%近くにまで上昇していた企業利益が、最近では同9.2%まで低下し、さらなる下落に向かっている可能性がある。

企業利益が依然として高水準であることを考慮すると、株式市場が望める最善の結果は、名目GDP(実質GDP+インフレ率)の成長によって企業利益が押し上げられることだろう。この要因による利益の伸び率は、それほど大きくない。というのも、今後2~3年の実質GDPの成長率は楽観的に見て2.5%~3.0%程度であり、インフレ率は最大でも2%を超えることはないと予想されるからだ。したがって、今後数年間の企業利益の伸び率は、最良のケースでも年率5%程度にしかならないと考えられる。

5%の利益増加率は、あくまでも楽観的な数字だ。企業利益の伸び率が名目GDP成長率を下回ることも十分にあり得る。実際、1990年代の景気拡大期の後半、そして金融危機の前に企業利益が減少に転じた2006年前後には、企業利益の伸び率が名目GDP成長率を下回っていた。興味深いことに、そのどちらのケースにおいても、企業利益が減少し始めてからしばらくの間(1997年~2000年、および2006年~2007年10月)は、株価と消費者信頼感が上昇し続けたのである。この二つの強気相場の終盤に見られたのは、企業利益の減少、そして激しい変動を伴う株価の上昇だ。一番目のケースでは、株価が2000年まで上昇し続けたにもかかわらず、VIX指数(シカゴ・オプション取引所のボラティリティ指数)は1997年に大きく上昇し、翌98年と99年にも高水準を維持した。同様に、二番目のケースでは株価が2007年10月にピークとなったが、VIX指数はそれよりずっと前の2006年に再び上昇に転じ、企業利益の減少も2006年に始まった。ここ数年の株式市場は20%超の利回りを維持してきたが、今後は3%~7%程度の利回りに落ち込むかもしれない。そして、株式市場の利回りがプラス圏を維持している間でも、市場のボラティリティが大きく高まる可能性があることを過去の事例が実証している。

図 3.

図 4.

まとめると、私たちは株式の強気相場が終わったとは必ずしも考えていない。企業利益が減少し始め、消費者信頼感がさらに高くなったとしても、株式市場はしばらく上昇を続ける可能性がある。ただ、もし強気相場が継続するなら、これまでとは違った局面に突入することが予想される。その局面とは、1997年10月、1998年8月、2007年2月、そして2015年8月のような相場である。2011年から2015年7月のように、大きな波乱のない順風満帆な強気相場が続く可能性は、今後ますます低くなるだろう。

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