米国の2016年実質GDP成長率はFRBと市場の期待を裏切る可能性あり

  • 19 Jan 2016
  • By Bluford Putnam

2016年1月19日

 

Blu Putnam、チーフエコノミスト、CMEグループ

2016年の米国の景気については、年平均実質GDP成長率が1.60%と期待が裏切られる水準まで減速させかねない大きな逆風がいくつか存在している。さらに、足元の原油価格の下落局面を勘案すると、総合とコアともに2016年のインフレ率は、1.35~1.75%のレンジ内に概ね収斂し、米連邦準備制度理事会(FRB)が掲げる2%の長期目標を下回る可能性がある。FRBの短期金利政策ではなく景気とインフレ期待が米国長期債利回りを動かす主な要因であることを踏まえると、この控えめな見通しは、沈滞した経済指標およびインフレ統計の盛衰を背景に相場が回復して、2016年における米10年国債利回りが潜在的な取引レンジの1.75~2.50%に達することを示唆している。この基本シナリオは、FRBが2016年夏まで追加利上げを先送りし、実効フェデラルファンド金利(FF金利)が2017年まで1.0%を超えない可能性があることを示唆している。

 

定年退職を迎えるベビーブーム世代

定年退職を迎えつつある1945年から1965年に生まれたベビーブーム世代は、過去最大の人数に達する。今世紀になって労働力に加わったミレニアム世代して知られる世代は、今やベビーブーム世代よりも人数が多い労働力セグメントである。ベビーブーム世代の一部が、退職年齢を超えて働き続けたとしても、65歳超の一人当たり消費は、所得のピーク期間を大幅に下回る傾向にある。2020年代に65歳超が人口全体に占める割合が20%に達すれば、経済成長を着実に押し下げる要因になろう。

さらに、米国の労働力は、ほとんど伸びを示していない。これは労働参加率の低下が一因にあるが、その大部分は、人口全体の伸び不足や人口動態の高齢化が要因である。金融政策も財政政策のいずれも、こうした強力な人口動態のトレンドの影響を反転させる効果はないとみられる。

労働力が伸びない場合、実質GDP成長率は、労働生産性の向上を源泉にするほかない。つまり、米国の潜在実質GDPは、おそらく年率2%を下回る水準まで低下しているのだ。労働生産性は、設備投資の拡大や技術向上により高めることができる。しかし、なにか特別かつ異例な出来事が生じなければ、近代化が極めて進み資本が充実した国は、労働生産性の長期(数十年を想定)の年平均伸び率は、年1.5%程度を超えて上昇するとは考えにくい。

 

ミシシッピ川流域の洪水と低迷する世界経済の成長

次に、短期的な逆風が存在する。ミシシッピ川流域の洪水は、2016年第1四半期の実質GDPを0.3~0.6%押し下げる可能性がある。はしけ船の運航が遮断され、上流の荷主は、鉄道輸送にシフトする必要が出てくるかもしれない。下流では、港湾への商品の流通量は減少している。その影響は一時的なものであり、経済は回復しているが、それでも2016年上期の足を引っ張る要因である。2015年第1四半期に生じた西海岸の港湾ストライキも、同様の損害をもたらした。

世界の経済成長も別の大規模な逆風にされている。中国は、成長の減速が続いており、成長率の目標数値である6.5%にもかかわらず、2016年は5.5~6.0%にとどまる可能性もありうる。ロシアは、原油安に起因する景気後退に見舞われている。ブラジルは、政局がらみの混乱に起因する景気後退下にある。欧州は、数百万人の移民を吸収している最中だが、容易ではない。2016年のユーロ圏の成長は、1~2%にとどまる可能性があり、停滞よりはましな程度ではあるが、特筆すべきことではない。資源を生産する新興国は、豪州やカナダなどの成熟した資源国と同様に低迷している。低迷する国の為替レートは下落基調をたどる。これは「通貨戦争」ではなく、状況が悪化した国の価値がリバランスされるのは、市場の摂理である。

短期的な混乱、世界の成長減速、人数の多いベビーブーム世代の定年退職とその消費減少がもたらす長期的な影響の組み合わせはすべて、結局は失望を呼ぶ見通しにつながっている。2016年第1四半期の米国実質GDP成長率は、わずか0%から1%(年率)にとどまり、2016年の実質GDPの年平均成長率見通しについては、1.60%になると予想している。