政策金利引き上げの可能性が最も低い3つのFOMC会合

1月31日に米中銀のFRBが開催したFOMC(連邦公開市場委員会)では、金融政策が据え置かれた。一方で、FF金利先物では、年内に最大3回の政策金利引き上げが実施される可能性を示している。そこで本稿では、これとは異なった観点から、今年開催される予定となっているFOMCで最も引き上げの可能性が低い会合はどれか、という検証を試みている。結果として、会合の最終日が5月2日(水)と11月8日(木)となっているFOMC会合での政策金利引き上げは、可能性が低い。また、夏季休暇中の開催となり、8月1日(水)に最終日となる会合での引き上げも、可能性が低い。以下に、検証レポートを示す。

2018年5月2日(水):

2018年2月2日時点では、77.5%の確率で CME FedWatch Toolは, 2018年3月21日の会合で利上げの判断が下される可能性を示唆している。3月中に1.50%から1.75%へ実効誘導水準が上昇するとすれば、直後の会合となる5月2日で連続的な引き上げが決定される可能性は低い。

過去を振り返っておくと、2004年6月末から2006年6月までの間に、当時のグリーンスパンFRB議長の下で、政策金利は1回について25ベーシスポイントずつ、計17回にわたって引き上げられている。そして、FRBはこれまでのガイダンスで、これが誤りだったとの認識を示しているのである。グリースパン議長のFRBは、政策金利を1%から5%まで引き上げる決意を固めていた。端的に言うと、政策金利の最終目標水準について、それが依然として妥当な水準なのか、また、利上げスピードは速過ぎないか等について、当時のFRBは市場動向を適切に勘案しなかった、というのが現在のFRBの認識である。イエレン前議長の下で、そしてパウェル新議長の下でのFRBは、景気やインフレ圧力、市場動向などに関する最新データで定期的な再評価を重ねながら、慎重な引き上げペースで臨む意志を強くしている。その意味では、引き上げを決めた会合の(少なくとも)直後の会合では政策金利を据え置き、その後また引き上げの機会を探るという流れに(多分)なると考えられる。従って、3月会合で引き上げられたとすれば、政策金利は次回会合で据え置かれる可能性が高い。

しかしながら、2月2日現在、22.5%という無視できない確率で、3月21日のFOMC会合で政策金利が据え置かれる可能性も示されている。我々の見解では、3月21日の会合で、市場の大方が予想している引き上げが行われなったとしても、FRBは5月2日の会合で政策金利を据え置くと思われる。

3月の会合でFRBに引き上げを思い止まらせる種類のデータやニュースは、世界の株式市場が暴落する(例えば、2015年8月の場合)など、非常に深刻なものである可能性が高い。実際、株価の下落懸念には合理性がある。1月29日から2月2日の1週間に、S&P500指数はおよそ4%の週間下落率を記録しており、市場関係者の多くにとっては、大きな修正がないまま株価が上昇し続けてきたことが懸念となっている。3月21日のFOMC会合で、市場の織り込み度が高い引き上げをFRBが見送るとしたら、株式市場が少なくとも20%の下落調整となり、この会合を前にしても、市場の底打ちが確認できない状況となった場合だろう。一方で、株価が下落調整したとしても、底値から反発に転じているのであれば、FOMCが3月会合で引き上げを決定する可能性は高いと言える。ただ、20%の調整範囲を超えて市場が下落を続けるとすれば、利上げは延期される可能性が高い。それも、3月会合だけではなく、雇用市場やインフレに関するデータに重大な変化が生じているかを確認するため、その後数回の会合にわたって延期される可能性が高い。

FOMCでの政策金利引き上げを遅らせる可能性があるもう1つのシナリオは、ここ1カ月上続いている債務上限引き上げの問題で、連邦政府が閉鎖された場合である。もちろん、1月初めに3日間、連邦政府の一部サービスが停止されたことを受けて、閉鎖も辞さないとしていた上下両院の熱い態度も、大きく冷やされた状況ではある。我々としては、この問題が1か月、もしくはそれ以上長引く可能性は1%以下だと見ている。実際に連邦政府の閉鎖が起こったとすれば、FOMCは政策金利の引き上げを、1回だけではなく、数回の会合にわたって延期すると考えられる。結果として、先立つ3月の会合の結果がどうであったとしても、5月2日のFOMCにおいて政策金利が引き上げられる可能性は非常に低い。

2018年11月8日(木):

年内7回目の会合となるFOMCは例年、10月末に開催される。その観点からすれば、今年の開催日は10月31日となる。ただ、これだとハロウィーンの日の開催になってしまうことに加え、例年のパターンを1週間ずらすことで、今年の日程は、11月6日(火)に投開票される中間選挙の結果を踏まえることを可能にしている。実際、話題性が高く、世論を二分する選挙を翌週に控えたFOMC会合で、政策金利引き上げが決断される可能性はほとんどない。その意味では、選挙から2日後に開催される会合も同様である。大テーブルの周りに集まった会合の参加者たちが物知り顔で選挙結果の意味を語り合うのは、もっぱら巷の様子と変わらないと思われる。11月の残りの日々、そして12月に至るまで、選挙結果を市場がどう消化していくのかを見極めるまでは、FRBが行動を起こす可能性は低いと考えられる。

2018年8月1日(水):

FRBの理事やFOMC参加者、さらにFRB職員も夏季休暇を取る。従って、7月末(または8月初め)のFOMCにおける政策変更は、極めて稀である。17回にわたって政策金利を引き上げたグリーンスパン時代のFRBでは、2005年のこの時期に政策変更が実施された例もあるが、前述の様に、現在のFRBは、当時の政策運営は過ちだったと考えている。さらに、夏季休暇のスケジュールよりも重要なのは、ハンフリー=ホーキンス法によってFRB議長に義務付けられている議会証言が7月に予定されていることである。数週間後の会合での決断を「想像」させることを避けるため、FRBはこの議会証言を前に行動する傾向が非常に強い。この考察は、6月末のFOMCで引き上げの判断が下されるかどうかでも同様である。6月に引き上げないのであれば、8月の引き上げも可能性は低い。

引き上げの可能性が高い会合

2月2日時点で CME FedWatch Toolは、3月21日、6月13日、12月19日のFOMC会合で政策金利が引き上げられる可能性をそれぞれ50%、またはそれ以上としている。もしも、年内の引き上げ回数を4回とするなら、「引き上げが決定された会合の次の会合は据え置き」のロジックから、9月26日の会合が浮上してくる。ただし、このタイミングでの引き上げには、経済指標が次の2つの条件を満たしている必要がある。

第1は、この会合が開催されるまでに、米国の(食品とエネルギーを除いた)コア・インフレ率が、明確に前年比でプラス2%を超えていることである。FRBは、金利をニュートラルな水準まで引き上げようとしており、その水準の定義として、足元のコア・インフレ率が誘導金利の範囲内に収まる水準、としている。従って、3月と6月の会合で政策金利が引き上げられた場合、9月のFOMC開催を前に、この時点の誘導金利は既に1.75%から2%に達していることになる。それでもコア・インフレ率が2%を超えているのであれば、もう1回の引き上げが容認される。

もちろん、その場合であっても、もう1つ条件が残っている。それは、4.5%以下を維持しているなど、失業率が引き続き、非常に低い水準で推移していることである。失業率が上昇したとすれば、インフレ圧力が高まるスピードとは関係なく、FRBの政策金利引き上げプロセスには重大なペース変更がもたらされると考えられる。もしも、失業率が0.1%の単位で上昇/低下を繰り返すのであれば、FRBはこれを看過することもできる。ただ、それが、基調変化を示しているのかもしれない4.5%超になったとすれば、状況を確認するため、金利の引き上げプロセスを一旦休止するのに十分な状況となる。

要点

FF先物が示唆する政策金利引き上げ時期:

  • 3月と6月、そして12月は最も可能性が高い
  • 5月と8月、そして11月は、引き上げの可能性が最も低い
  • 9月は見通しにくいが、インフレ水準次第と考えられる

 

免責事項

本レポートに掲載された例は、いずれも状況を仮定的に解釈したものです。あくまで説明のために使用しています。このレポートに記載されている見解は著者自身のみによるものであり、CME Groupや付属機関の見解を必ずしも表しているものではありません。本レポートおよびその内容を、投資の助言または実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

 

著者について

Bluford “Blu” Putnam(ブルフォード“ブル”パットナム)CMEグループ・マネージング・ディレクター兼チーフ・エコノミスト。中銀の政策分析・投資調査・ポートフォリオ管理を中心に金融業界で35年を超える経験を持つ。2011年5月より現職。世界経済情勢に関する情報発信で中心的な役割を担う。

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