原油:米国在庫に現れた決定的な兆候

  • 2 Nov 2016
  • By Erik Norland

原油価格の回復持続を期待する人にとっては、米国在庫は強弱交錯した様相を呈している可能性がある。まず悪材料を挙げると、原油在庫はいまなお過去最高水準近辺で推移しており、前年比ベースで増加し続けている。また、ガソリンと超低硫黄軽油 (ULSD) も、前年比で増加傾向なるが、増加の度合いはそれほどではない。3品目すべての在庫は、季節調整済みでみて、過去最高水準近辺での推移が続いている。

在庫の積み増しペースが急減速していることは、好材料である。2015年にしばらくの間、原油在庫は、前年比31%増のペースで拡大していた。現在は、前年の水準を5%上回っているだけである (図表 2)。ガソリン在庫は、前年比約4%増加し、ULSDの在庫は前年比約7%増加している。増加率のピークでは、ガソリン在庫は前年比約11%、ULSDは同27%それぞれ増加した。 

図1:在庫は全般的に1年前よりも高水準で推移

図2:在庫の伸びのペースが減速 (ただし、伸び続けている)

在庫の積み増しペースの減速は結局のところ、エネルギー生産者とそれに資金を投じている向きにとっては好材料である。エネルギーの需給は、均衡により近づいている兆候がみられる。そうとはいえ、在庫はいまだ前年比で増加基調にあり、夏のドライブシーズンになってもこのトレンドに変化はなかった。このため、特に石油輸出国機構 (OPEC) と非OPEC加盟国の主要産出国であるロシアが既に合意済みの産油制限を堅持しない場合には、原油価格は現行の価格水準を維持、またはそこから続伸するのは困難になるかもしれない。さらに、原油は、特に在庫調整スクに直面しており、価格が下落に向かい2月安値の1バレル30ドル近辺を再び試す余地がある。

在庫増にみられる顕著な特徴は、石油製品よりも原油の積み上がりの方が大きい点である。この理由の大半は、精製能力の伸びの欠如に関連しており、原油生産の大幅な成長とはかなり対照的である。原油生産の伸びは、石油製品の生産ペースを大幅に上回っている事実は、原油在庫がガソリンとULSDよりも大きく拡大している理由を説明している。 

在庫の伸びのこうした格差は、ガソリンとULSDよりも原油にとって弱気材料になりかねず、石油製品と原油とのスプレッドが拡大する可能性がある。ガソリンもULSDのいずれも、クラックスプレッドが過去高水準近辺のレンジで取引されていない (図3と4)。

図3:ガソリンのクラックスプレッドは現在、過去最高水準近辺に達している

図4:ULSDのクラックスプレッドは 現在、過去最高水準近辺に達している

ガソリンおよびULSDと原油とのクラックスプレッドをおそらく抑制している1つの要因は、原油生産が伸びていない点である。原油生産量は、2015年4月にピークを打ち、 その後約10%減少した。原油生産量が2011年から2014年にかけて極めて速いペースで伸びたときに、 クラックスプレッドも最も拡大した。また、直近に合意したOPEC + ロシアの生産制限により、合意が堅持された場合 (まず考えられないが)、スプレッドは抑制されると予想している。米国の生産量は7月に安定し、その後は縮小が食い止まっている。米国の生産が回復すれば、クラックスプレッドには強気材料となろう。

図5:米国のシェールオイル企業は新たなスイングプロデューサー(生産調整役)的な存在に

そうとはいえ、原油と石油製品の在庫積み増しの差を踏まえると、原油在庫が突然調整されれば、おそらくULSDやガソリンの価格よりも原油価格に打撃が及びそうだ。同様に、原油価格が続伸すれば、米国の生産量回復につながることになり、そうなるとクラックスプレッドの拡大に一役買う可能性があろう。

結論

  • 在庫は増加し続けており、これは原油と石油製品にとって潜在的に弱気材料になろう。
  • 増加ペースは減速しており、これは好材料である。
  • クラックスプレッドは、かなり平均水準で推移しており、原油在庫が製品在庫を上回るペースで伸びていることから、原油の在庫整理が起きれば、スプレッドが拡大しかねない。
  • また、米国の生産量が回復すれば、クラックスプレッドに上昇圧力がかかるかもしれない。
  • OPECとロシアが生産制限を維持すれば、これはクラックスプレッドに弱気材料となろう。

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミストです。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信しています。

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