原油:増加基調をたどる米国の産油量はピークに達したか

  • 21 Aug 2017
  • By Erik Norland
  • Topics: Energy

2016年10月以降、米国の産油量は、日量100万バレル以上増加しており、石油輸出機構(OPEC)による価格押し上げを狙った減産による効果の3分の2以上が帳消しされている。ただ、米国の産油量の伸びは、すぐに息切れするようにみられ(図1)、ほかの条件がすべて同じならば、OPECと原油価格にとって好材料となることが予想される。米国の産油量が持続的に上昇すると期待する向きは、以下の2つの懸念材料を考慮すべきであろう。

  1. 石油掘削装置(リグ)の稼働数は伸びが止まっている(図1)
  2. 稼働石油リグ数の限界生産性が急速に低下している(図2)

図1:産油量は稼働リグ数に平均して約17週遅行する傾向にある

図2: 石油リグの限界生産性は低下基調をたどっている

石油サービス会社のBaker Hughesによると、7月の石油リグ稼働数は、750基をわずかに上回る水準で安定推移していた。これはそれ自体、米国の生産量減少を示唆している可能性がある。とはいえ、原油を大量に生産できるようになるまでには平均して4カ月程度かかるが、タイムラグは、掘削装置や油田に応じてかなり変動することがある。さらに、4ヵ月前に比べて、現在稼働中リグ数は約100基増えている。これは、向こう数カ月間で生産量が更に増加する余地があることを示唆している。

さらに懸念されることは、リグの限界生産性が大幅に低下している点である。原油市場が昨5月に上昇に転じたとき、エネルギー業界は、最も有望な油田に最高の装置を配置した。当初、それぞれ追加のリグは、4ヵ月以内に、米国の総生産量に枯渇率を超過して日量6,000バレル寄与した。時が経つにつれ、リグ数は急増し、米国の生産量は増加し続けた。だが、今年2月、各新しいリグの限界生産性は約75%低下し、それぞれの新規リグは、米国の総生産量に、枯渇率を超過して日量約1,400バレルを追加するにとどまった。これは、産油量が急速に増えて即座に減少することを踏まえたシェール生産者の多くが有する短期的な性質、またエネルギー業界は、もぎ取りやすい果実は既に収獲済みであるため、有望ではない油田には最新のものではない装置を配置するという2つの要因による。

そのため、過去4カ月間でおよそ100基程度の石油リグが追加され、(楽観的にみても)米国の産油量全体が日量15万バレル増えた可能性がある。今回の産油量の急増は、OPECにとっていまだ厳しい状況ではあるが、米国の産油量は日量975万バレル前後、つまり2015年夏に付けたピーク水準を超えないがそれに沿った水準でまもなく再びピークに達する可能性がある。

米国の生産量が減少に転じる時期の兆候については、リグ稼働数と追加されたリグの限界生産性の両方をみればいい。リグ稼働数は、原油価格が1バレル50ドルを割り込むと増加傾向が止まった。今は、原油価格は少し回復しており、エネルギー業界がさらに装置を配置して対応するかどうかを見極めることは興味深いだろう。だが、たとえそうなったとしても、米国の産油量が増加基調を維持する保証はないだろう。そうなるためには、石油リグは、従来型もフラッキング(水圧破砕)ともに既存の油井で枯渇する量を上回る原油を生産する必要がある。

米国の産油量は、向こう数カ月内に再び減少に転じる可能性があり、それが実現した場合、ほかの条件が同じならば、これは原油にとって強気材料となるとみられる。消費者やその他エネルギー価格安を希望するその他の人にとっての好材料は、ほかの条件が同じではない場合である。OPECは、減産を順守しないことで有名であり、いずれ減産を諦める可能性があろう。既に、OPEC内に亀裂が入っているように見える。原油価格が上昇する余地があるかは、政局の安定性の問題で、ベネズエラは、急速に大混乱に陥り、不安定化の可能性がある唯一の原油輸出国というわけではない。

その他の潜在的な強気要因の一つは、過去3年間増加基調をたどっていた原油在庫が、2014年以来初めて前年比で減少を示している点だ(図3)。短期的な在庫減については、需給が均衡しているので、原価価格の下落圧力になるかもしれない。ただ、低い在庫水準は、いずれ原油の次の強気相場に対する土台を築くことが予想される。

図3:在庫は3年ぶりに縮小に転換

要点:

  • 米国の石油リグ稼働数の増加傾向は止まった。
  • 掘削会社が既存の油井の枯渇率を超える生産に苦戦していることから、石油リグの限界生産性は、急低下している。
  • 米国の産油量は間もなくピークに達し、再び減少に転じる可能性がある。
  • これは、OPECが減産を順守した場合のみ原油価格には強気材料となる見込みである。
  • OPECの生産制限は、破たんする可能性が高い。
  • ベネズエラの不安定な政局は、原油価格を押し上げる要因になることもあり得る。
  • その他の原油輸出国(特にアルジェリア、アンゴラ、イラク、リビア、ナイジェリア)も不安定化に陥る可能性がある。
  • 米国は、依然として原油の最も重要なスイングプロデューサー(需給の調整役)である。
  • 米国の在庫は、3年ぶりに減少に転じ、長期的には強気要因になる余地があるが、短期的には必ずしもそうではないだろう。

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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