天然ガス: 上昇相場は終焉、それとも小休止?

  • 22 Nov 2016
  • By Erik Norland
  • Topics: Energy

天然ガス市場で7年来の下落相場が続く中、我々は2015年10月に、相場が強気転換する可能性を示唆したレポートをシリーズでリリースした。発電分野を中心に継続的な需要の拡大が観察される一方、2014年末以来、北米では供給の拡大が見られていなかったからである。実際、こうした背景から、ヘンリー・ハブ天然ガスの価格はここまで、MMBtu (百万 BTU=英国熱量単位) 当たり2ドルから3ドルほどへの上昇を見せている(図1)。ただ、こ相場はここ数週間で、反落する結果ともなっている。この反落は、上昇相場の終息を意味するのだろうか? それとも、ちょっとした調整に過ぎないのだろうか?我々は、指摘することが可能な多くの理由から、後者だと考えている。

例年にない温暖な秋だったことは、同様の冬を保障するものではない。

2016年3月を底に反発した天然ガス価格は、上昇の勢いを失う結果になっている。北米の秋の始まりが例年にない温暖なものとなり、電力や暖の房需要が限定的となったことが、その要因として指摘される。ただ、注意するべきなのは、例年になく温暖だった秋が必ず、同様の冬の到来を保障するものではない、と言うことである。来年の1月や2月に北米の気温が例年を下回るという予想は、その大部分が、今年発生した強度のエルニーニョ(図2)が既に、軽度のラニーニャに転換している(図3)という事実を背景にしている。  

図1: 大幅な(そして長期に及んだ)弱気相場からの反発

図2: 2016年1月4日: 強度のエルニーニョは昨冬、天然ガス市場の下押し圧力となった

図3: 2016年11月: カリフォルニア沖の海水温は依然、例年を上回っているものの、ラニーニャへの転換が確認できる

そして、懸念材料はラニーニャだけではない。北米の今年の秋はここまで、例年以上の暖かさとなっているが、シベリアでは反対に、気温が例年を下回り、降雪は例年を上回る状況となっている。シベリアの現状は今年の冬、厳しい寒波に加えて、荒々しい極循環風を北米にもたらすと予想される。ラニーニャやシベリア上空で早々に発生する雪雲や寒波を背景として、北米の1月・2月が実際に例年を下回る寒さになったとすれば、現状の供給と長期的な需要というファンダメンタルズの調整を反映して、天然ガス市場は急上昇することになる。

供給: 少なくとも現状では、拡大していない

供給拡大が見られていないことは、天然ガス市場が再び上昇に転じる可能性を示唆する最大の材料となっている。2015年初めに最高水準に達した合衆国本土での供給量はその後、3-4%の低下となっている(図4)。軽微とも思える供給量の後退だが、硬直的な天然ガス市場の需給関係は、供給と最終消費者の仔細な変化が、この市場を大きく変動させる要因となる。 

供給に関するニュースは、必ずしも天然ガス相場の強気材料とはなっていない。最後に天然ガス市場についての考察を書いたのは8月だが、以来、石油もガスも、それぞれの市場価格の上昇を背景に、採掘件数が増加に転じているのである。2016年8月26日時点で81だったガス田は、11月初めには117に増加し、油田は同期間に、406から450超まで増加している。一方で、この分野における設備投資は依然として、低迷したままとなっている(図5)。もちろん、設備投資が強化されれば、結果的に生産量も向上するだろうし、天然ガス価格の上昇余地はこれによって限定的となる。ただし、こうした生産施設数の増加は、全体としての生産性を正確に反映していないことも指摘しておきたい。生産性の高い少数の施設が稼働を始めれば、全体の生産量が予想以上に増加する場合もあり得る。

図4: 天然ガスの生産は停滞し始めていて、既に若干の減少に転じているとも見られる

図5: 生産施設の数は増加に転じているものの、この分野への投資は低迷を続けている

需要:成長に向けた態勢は依然整っている

需要サイドでは、発電燃料としての天然ガス需要が、引き続き増加している。2015年‐16年が暖冬となったことから、住宅や商業施設での需要が落ち込みを見せたものの、今年は回復すると予想されている。特に、今年の冬が厳しいものとなった場合、回復は顕著なものとなる(図6)。

図6: 発電燃料としての天然ガス需要は引き続き増加

さらに、電力需要が引き続き増加すると考えらる理由が2つ:

  1. 2013年以来、主にガスや風力、そして太陽光などを代替えとして、石炭を原料とする発電施設が新規に稼働を開始した例がないこと(図7)。
  2. 天然ガスの利用率が継続的な上昇を見せる一方、石炭のそれは低下傾向となっている。基本的にこれは、歴史上はじめて、天然ガスによる発電量が、石炭のそれを上回る場合が多くなっていることを示している。

基本的にこれは、総発電量の中で、天然ガスによる発電の割合が拡大していると言うことであり、加えて、こうした発電施設の稼働率が常に高い状況であることを示している。

図7: 新規の発電施設では、発電燃料として、天然ガスが石炭に取って代わっている

図8: 現状では、石炭よりも天然ガスの方が、発電施設の稼働率が高い

輸出需要:

発電分野を背景に、天然ガスに対する国内需要が旺盛である一方、海外の需要については、あまり期待できないと考えられる。カナダやメキシコなどでの需要については、引き続き旺盛であると予想されている。ただ、液化天然ガス(LNG)の輸出価格に影響された形で、天然ガス価格が大幅上昇するとした期待は、後退している。LNG価格が世界的に収束するなか、アジアや欧州での価格が、米国での価格にサヤ寄せする形で、下落したからである(図9)。

図9: 天然ガスの価格差は収束した

緩和要因として物足りない在庫水準

発電燃料としての需要が拡大する一方で、供給が需要を上回っていたことから、ここ数年で、天然ガスの在庫は高水準に達するに至っている。この在庫の高まりには、エルニーニョも影響した。ただ、天然ガス市場の強気派に好材料なのは、在庫の積み増しもそのピークを過ぎ、減少に転じる可能性が高くなっていることである。一方で、在庫量は大規模であり、歴史的な高水準であることは事実でる。したがって、在庫量が大幅に減少するまでは、天然ガス価格の上昇余地を限定的とする要因であることも事実である。しかしながら、1999年‐2000年に発生した様に、例年以上に厳しい冬は、天然ガスの在庫レベルが大幅に減少する要因となる。

図10: 在庫は拡大を続けているが、その増加スピードは既に失速気味となっている

結論

  • 今年の秋が例年以上に温暖なスタートとなったことで、天然ガス市場の強気トレンドは腰折れとなったが、例年以上に厳しい冬がこれに続くとすれば、市場は再び強気に回帰する可能性がある。
  • ラニーニャとシベリアで発生している激しい降雪は、来年1月・2月に、南極経由の冷風を北米に吹き込むことになるかもしれない。
  • 停滞気味な供給が続く一方、在庫量は再び拡大傾向であり、生産施設の数も増加している。
  • 発電需要は、原料として天然ガスの代替えに乏しいことから、今後、さらに高まりを見せると予想される。
  • 一方で、在庫量が歴史的な高水準に達していることから、相場の上昇余地は限定的と考えられる。ただ、在庫水準はそのピークに達しつつあると見られ、一旦、減少に転じれば、市場での買い圧力を継続的に刺激することになる。
  • さらに、相場が強気に回帰した場合、潜在的な上昇幅は大きなものになると考えられる。過去10年の間には、MMBtu当たり10ドルの高値を記録したこともある。一方で、天然ガスは保管に多額の維持費を伴うエネルギーであり、買い手にとっては維持コスト(ネガティブ・キャリー)が発生する取引であることも、付け加えておきたい。

免責事項

先物取引やスワップ取引は、あらゆる投資家に適しているわけではありません。損失のリスクがあります。先物やスワップはレバレッジ投資であり、取引に求められる資金は総代金のごく一部にすぎません。そのため、先物やスワップの建玉に差し入れた当初証拠金を超える損失を被る可能性があります。したがって、生活に支障をきたすことのない、損失を許容できる資金で運用すべきです。また、一度の取引に全額を投じるようなことは避けてください。すべての取引が利益になるとは期待できません。

本資料に掲載された情報およびすべての資料を、金融商品の売買を提案・勧誘するためのもの、金融に関する助言をするためのもの、取引プラットフォームを構築するためのもの、預託を容易に受けるためのもの、またはあらゆる裁判管轄であらゆる種類の金融商品・金融サービスを提供するためのものと受け取らないようにしてください。本資料に掲載されている情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。助言を意図したものではなく、また助言と解釈しないでください。掲載された情報は、特定個人の目的、資産状況または要求を考慮したものではありません。本資料に従って行動する、またはそれに全幅の信頼を置く前に、専門家の適切な助言を受けるようにしてください。

本資料に掲載された情報は「当時」のものです。明示のあるなしにかかわらず、いかなる保証もありません。CME Groupは、いかなる誤謬または脱漏があったとしても、一切の責任を負わないものとします。本資料には、CME Groupもしくはその役員、従業員、代理人が考案、認証、検証したものではない情報、または情報へのリンクが含まれている場合があります。CME Groupでは、そのような情報について一切の責任を負わず、またその正確性や完全性について保証するものではありません。CME Groupは、その情報またはリンク先の提供しているものが第三者の権利を侵害していないと保証しているわけではありません。本資料に外部サイトへのリンクが掲載されていた場合、CME Groupは、いかなる第三者も、あるいはそれらが提供するサービスおよび商品を推薦、推奨、承認、保証、紹介しているわけではありません。

CME Groupと「芝商所」は、CME Group, Inc.の商標です。地球儀ロゴ、E-mini、E-micro、Globex、CME、およびChicago Mercantile Exchangeは、Chicago Mercantile Exchange Inc.(CME)の商標です。CBOTおよびChicago Board of Tradeは、Board of Trade of the City of Chicago, Inc.(CBOT)の商標です。ClearportおよびNYMEXは、New York Mercantile Exchange, Inc.(NYMEX)の商標です。本資料は、その所有者から書面による承諾を得ない限り、改変、複製、検索システムへの保存、配信、複写、配布等による使用が禁止されています。

Dow Jonesは、Dow Jones Company, Inc.の商標です。その他すべての商標が、各所有者の資産となります。

本資料にある規則・要綱等に関するすべての記述は、CME、CBOTおよびNYMEXの公式規則に準拠するものであり、それらの規則が優先されます。 取引要綱に関する事項はすべて、現行規則を参照するようにしてください。

CME、CBOTおよびNYMEXは、シンガポールでは認定市場運営者として、また香港特別行政区(SAR)では自動取引サービスプロバイダーとして、それぞれ登録されています。ここに掲載した情報は、日本の金融商品取引法(法令番号:昭和二十三年法律二十五号およびその改正)に規定された外国金融商品市場に、もしくは外国金融商品市場での取引に向けられた清算サービスに、直接アクセスするためのものではないという認識で提供しています。CME Europe Limitedは、香港、シンガポール、日本を含むアジアのあらゆる裁判管轄で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けていませんし、また提供してもいません。CME Groupには、中華人民共和国もしくは台湾で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けている関連機関はありませんし、また提供してもいません。本資料は、韓国では金融投資サービスおよび資本市場法第9条5項並びに関連規則で、またオーストラリアでは2001年会社法(連邦法)並びに関連規則で、それぞれ定義されている「プロ投資家」だけに配布されるものであり、したがってその頒布には制限があります。

Copyright © 2017 CME Group and芝商所. All rights reserved.

著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

Erik Norland(CMEグループ エグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト)によるレポートを さらに見る