2015年の日本は再び景気減速か

  • 3 Mar 2015
  • By CME Group and Erik Norland

日本経済の根幹において、政策期待と少子化問題の現実との間には矛盾があるように思われる。日本の人口は減少と高齢化が進行し、労働力は停滞している。労働力に伸びない国は、景気上昇の起爆剤となって経済成長に大きく貢献する主役を失っているといえる。これは比喩ではなく、数値的にも、長期的な実質GDPの伸びは、労働力拡大と労働生産性の伸びの和であるとの主張もある。よほど目覚ましい生産性向上がない限り、労働力の伸びがない場合の実質GDP成長率は、平均で1%から2%しか見込めない。不可能とは言わないが、既に近代化と資本集約度が進んだ経済において、労働生産性の急激かつ持続的な増加は容易ではない。さらに通貨安や量的緩和、景気刺激政策といったものは、労働生産性の成長に長期的で持続的な影響を与えるとはいえないものだ。

 

デフレと成長見通しへの懸念。

アベノミクスの背後にあるロジックは、デフレ懸念を払拭できれば、消費者支出は急速に増加し、これが実質GDPの成長を1970年代と1980年代並みの高水準に戻すというコンセプトだ。 確かに、インフレ予測により価格上昇が予想されるとき、消費需要の前倒しをもたらすと判断される場合がある。こうした消費行動は、2014年4月1日の消費税増税の前後において見受けられた。2014年1-3月期の消費と実質GDPの伸びは、その後、同年4-6月期の下落で相殺され、さらに2014年7-9月期においては、消費税増税はマイナス要因となった。消費税増税は一過性のイベントとなり、増税によるインフレ誘発はすぐに衰えた。

図1

インフレ期待についても一過性のもとなった。もしインフレ期待が0%から2%に上昇するならば、消費前倒しによって、実質GDP成長率をわずか押し上げるかもしれない。その後も、初年だけでも、インフレ率に合せて較的安定した速度で調整されると思われる。インフレが続くと予想される場合のみ、価格上昇を回避する為に現状の消費を促進するもので、このアプローチは 持続可能な計画を示すものではない。

図2

デフレ対策の主役としての通貨安。

長期にわたる円安(対米ドル)は、インフレの主要因となり得る。 2012年12月に安倍政権誕生する、2012年半ばまではドル円相場は78-80円で推移していた。安倍首相の積極的な円安誘導で、2013年4月までに円安は 98-102円レンジまで進行し、その水準で安定していたが、 2014年にアベノミクスへの期待が薄れると、一段と円安は進み118-122円レンジに至った。 2012年半ばに較べて、対ドル相場で円は50%近く下落した。この急激な通貨下落は、タイムラグを経てインフレを導くに至った。ただ今回は、通貨下落によるインフレ期待は、原油価格下落により相殺された。日本は主要なエネルギー輸入国であり、原油価格の急激な下落は円安効果と対峙することとなった。

図3

日本の株式市場と円安。

さらに通貨動向に連動する形となったのが株式市場だ。 日本起業は海外オペレーションを大規模に展開しており、 日本の多国籍企業の非円資産の再評価につながった。日本からの輸出も増加し、円安における株価の値動きはとても良好であった。

しかしながら、円安による輸出増は小規模にとどまると予想される。 日本企業は伝統的にマーケットシェアに重点を置く傾向にある。円安によって円建て価格を値上げするか、またはマーケットシェアを得る為に多かれ少なかれ、同じ価格を維持するかが考えられるが、 後者の場合の方が多いであろう。

図4

日本の債務負担。

日本の債務残高は世界でも最高水準にある。公債の債務残高は対GDP比で250%で、これに民間や社債残高がそれぞれ66%、102%あり、 合せて対GDP比で411%と世界最高水準にある。良いニュースは、二つある:1)これらの債務は国内貯蓄からほぼ完全に融資され、2)金利が10年の利回りカーブから見てもゼロに近い、ことだ。悪いニュースは、高いレバレッジ効果を期待するには限度があること。また高水準の債務は金融緩和の必要性を強くすること。言い換えれば、金融引き締め基調に転じると債務返済負担が一気に耐え難いものとなること。広範囲なデフォルトリスクを回避しつつ債務削減を達成するには、名目GDPの成長が必要となる。

図5

興味深いことに、日銀による国債買い入れは、効果的に民間部門の国債をかなり回収している。連結会計的なアプローチで、財務省の国債発行と日銀による国債保有を国のバランスシートとして1つにして見た場合、国の借金のGDP比は実質的には減少していることに気づくであろう。信用格付機関がにこの連結アプローチを取るかどうかは明らかではないが、我々としては、日本の量的緩和はカントリーリスクを軽減する一方で、為替レートリスクは増加し、おそらく日本国債市場の厚みと流動性を低減させると見ている。

日銀の異次元緩和で毎月の国債大量買い入れが継続される限り、長期金利は抑制されるであろう。いわゆる中央銀行は利益目的の市場参加者ではなく、その投資の損得にかかわらず、紙幣を刷って原資とすることが可能だ。

図6

結論としては、 我々 は 日本の景気を楽観視していないということでる。労働力の停滞は、労働生産性の向上こそが経済成長の長期的な鍵となることを意味する。さらに、すでに高水準の債務は公的または民間部門からの景気浮揚効果にも限りがある。一方で、円安は輸出価格競争力を高め、消費税追加増税がなくともデフレ脱却の方向性を維持すると見込まれる。デフレ脱却と実質GDPの成長正を保つことが日本の債務負担を管理する上で不可欠となる。

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