米住宅建設と販売が急回復する8つの理由

  • 18 Mar 2015
  • By Erik Norland

米国住宅市場は2007-2008年の崩壊以来、その回復は不均一なものだった。我々の予想通り (注:Blu Putnam 著「US Housing Market Looking Brighter for 2012」参照)、住宅価格、住宅着工、住宅販売それぞれが底打ちした後も、回復はスムーズではなかった。特に、住宅着工と新築住宅販売は 2005年のピーク時の半分以下となったままだ (図 1 、2)。 しかしながら、住宅市場が今後数年間にわたって強い回復をたどる段階にあると思われる理由を以下に挙げる。

 

理由 1: ペントアップディマンド

まず、第一の理由はペントアップディマンドである。新規住宅の建設も販売も、人口増加に追いついてはいない。 人口増加そのものは、住宅ブームの必要条件でも前提条件でもないが、複合要因の重要な部分を占めている。ローンを抱えていた学生や、2008-2009年の大不況の間に就職難にあえぎ、親元に戻っていた人たちが、現在大量に仕事を見つけはじめている。不況前には年間150万世帯の形成も、不況後はその数はその約半分となっていたが、どれだけ親元の地階住まいやルームメイトとの共同生活の居心地が良かったとしても、ほとんどの若者は世帯形成を永遠に遅らせることはできない。その多くは、2020年にかけて潜在的な住宅購入者、または少なくとも賃借人になると予想される。ここで焦点となるのは、雇用や賃金の増加が新世帯形成を後押しするかどうかだが、これについて次項で考察する。

図1

図2

理由 2: 急速な労働市場の回復

労働所得の増加は、個人や家計の住宅購入意欲を誘発、また賃貸住宅建設の需要を増加する可能性がある。大不況からの回復の初期段階は痛みを伴い、そのペースも遅く、特に労働市場でそれが顕著だったが、2014年の労働市場の改善のペースはめざましかった(図3、図4)。

住宅需要に重要なのは、 国内の労働所得に関する全体像の把握であり、個々の労働市場指標に注視し過ぎるとそれを過小評価してしまうおそれがある。時間あたり賃金は前年比 2.0%と控えめなペースだが、労働時間の伸びは 0.6%なので、労働所得の伸びそのものは、2.0% + 0.6% で 2.6%と、より大幅な改善を示している。さらに労働者数は前年比 2.4%の伸びを示しており、全労働所得では2.6% + 2.4%の 5.0% と顕著に増加している。 加えて、消費者物価のデータはより落ち着いたインフレを示している。インフレ調整後の実質ベースでは、労働所得の増加は 4%超と、国の実質GDPの伸びを上回っており、住宅建設と販売の成長の基盤となる可能性がある。

図3

図4

理由 3: 減少する在庫

新築および中古住宅の在庫が劇的に減少している。商務省によると、新築住宅の在庫は5ヶ月半分、218,000戸とのこと。2012年に在庫が底打ちした142,000戸よりも高水準にあるが、供給はかなり控えめなままだ。住宅在庫は 2006年に50万戸超のピークに達したが、住宅バブルが本格化する前の 1999年から 2001年の通常の在庫は約30万戸であった (図 5)。  人口が2000年以来10%以上増加していることにも留意しよう。もし銀行が融資を活発化し、消費者の借り入れが始まると、新築住宅販売数は増加するが、新規住宅在庫の警戒水準にはまだ猶予があり、伸びる余地もあるだろう。 

図5

中古住宅の在庫も 2006-2008年のピークから半数近く減少している。在庫数を月間の販売数で割った在庫指数も不況前の水準に落ち着いている。 (図 6)。空き家率は、賃貸、持ち家とも下落している (図 7)。

図6

図7

理由 4: 債務状況の改善

米国家計が個人のバランスシートの改善に努めた結果、個人債務残高は2008年末の GDPの約95%から約80%の水準にまで低下した。[1] この改善は住宅関連指標にも反映されている。2012年1月には住宅販売の35%がディストレスト物件で、うち22%が差し押さえ物件だった。[2] 2015年1月にはこの数字は同11%と同8%にまで低下した (図 8)。住宅ローンの滞納者も、まだ不況前の水準ではないが、急激に減っている。米抵当銀行協会 (MBA)によると、滞納者数のピークは 2010年Q1で、ローン利用者の10%超が支払いに遅れを生じていた。[3]  2014年Q4 現在、滞納者は 5.7% と、不況前の平均レンジだった4.0%-5.5% 近くまで落ち着いている (図 9)。バランスシートの改善とディストレスト物件の減少、滞納者の減少は、消費者の所得増と合せて、住宅ローン会社がより貸し易い状況を生むだろう。

図8

図9

理由 5: 銀行システムの再生

2010年代の前半をバランスシートの修復に費やしたのは個人家計だけではない。銀行システムもまた、バーゼルIIIおよびその他の要求事項を遵守するために、株式の発行、配当金の削減による収益保持、また新規ローンの抑制 (図 10)などにより、巨額の資本を確保した。実際、ここ数年の新規住宅ローン発行数は、2005-2006年の60%減で、1990年半ばの水準に相当する。米国銀行のバランスシート改善により、数年のうちに住宅購入者向け審査の緩和が始まると思われ、住宅市場にはより良い環境となるだろう。

図10

理由 6: 住宅ローン金利の低下

銀行に貸す気があっても、買い手不在であっては住宅ローンの増加はない。そこで、住宅ローン金利の低下が、潜在的な住宅購入者を誘う可能性がある。現在、住宅ローン30年物の平均金利は4%を下回っており、過去最低ではないものの、依然として歴史的低水準にあり、買い手にとっては2013年半ば以来の好条件となっている (図 11)。

図11

理由 7: 手頃な価格

住宅ローン金利が消費者にとって大きな鍵となる一方で、もうひとつ大事なのが住宅価格。ニューヨークやサンフランシスコといった、国際的な需要ある一部の特殊な市場を除き、住宅価格は 2006年のピーク水準に比べて依然として大幅に下回ったままである。S&Pケース・シラー20都市圏住宅価格指数によると、不況後の下落のほぼ半分は回復したものの、名目価格2006年7月のピーク時から16%下落した水準(名目)にある。インフレ調整済みだとこの下落幅はより大きくなる(Figure 12)。

実際のところ、インフレ調整済みの住宅価格は、1987年にケース・シラー10都市圏指数の統計が始まって以来、40%しか上昇していない。セントルイス連邦準備銀行によると、一人あたりの名目所得が1987年の34,114ドルから2011年に48,282ドルに​​上昇している事を考えると、同期間のインフレ調整済み住宅価格の上昇は、ほとんど憂慮すべきものではない。

デトロイトやラスベガスといった市場では、インフレ調整済みの住宅価格は1990年代前半のそれを下回っているし、ピーク時でさえも他の米国地域に比べて低かった (図13)。 手頃な価格と、価格上昇への期待、低金利の住宅ローン、労働市場の改善などにより、潜在的な買い手が住宅市場に遅からず現れるであろう。

図12

図13

理由 8: 建設コストの下落

他の製品と同様に、住宅もまた労働と費用の組み合わせで作られる。費用にはアルミニウム、銅(主に配線用として)、木材、ならびに運搬の際のエネルギー代などが含まれる。  

アルミニウム価格は 2011年初頭に比べ30%以上下落しており、銅も原油価格もまた40%以上下落している (図 14)。原材料価格の下落は、建設会社にとって有益であり、より多くの建設を可能にするばかりか、コストを抑えて住宅購入者に買い易くする効果がある。

図14

他の主要原材料は木材である。最近、木材価格は1,000ボードフィート当り 300ドルを下回った。最安値は遠いものの、1992年と2005年に記録した最高値からは約30%下落している。2013年でも、木材価格は同 400ドル以上で取引されていた。

木材価格は時として全米ホームビルダー協会(NAHB)の住宅市場指数に連動していた。今後住宅ブームが生じるならば、木材価格は上昇するかもしれない。またアルミニウムや銅についても、中国での需要が衰えたとは言え、価格上昇要因となる可能性がある(図15)。

図15

我々の基本シナリオにも、当然ながらリスクがある。主なリスクは、金利、エネルギー価格、そして世帯形成にある。

FRBは早ければ6月、多分9月には引締め政策を始めるであろう。若干の短期金利の引き上げは、住宅購入決断を妨げるインパクトはないかもしれないが、変動金利付き住宅ローン保有者には月々の支払い増加となり滞納が増えるかもしれない。

エネルギー価格の低迷が消費者や住宅保有者に好影響を与えているが、予想外のエネルギー価格の上昇が生じると、消費者の所得回復が頓挫する可能性がある。

世帯形成は引き続き低調だ。ここで興味深い問題は、若い世代の大不況への反応だ。2007-2008年に親の住宅資産価値が崩壊するのを見てきたミレ二アルズ世代は、資産形成の一環としての住宅購入には興味が薄いかもしれない。

これらのリスクはあるものの、米住宅市場の回復を概ね楽観視している。もしも住宅市場の拡大が予想通り今後数年にわたり続くなら、アルミニウム、銅、木材価格を下支えするだけでなく、GDPの向こう数年の伸びにも貢献するであろう。住宅着工件数や認可数が現在の年間約100万戸ペースから同125万戸ペース、またはそれ以上に向こう2年から5年間で上昇したとしても驚かない。また、新築住宅販売が現行の38万〜48万戸のレンジから2016年か2017年には80万戸レベルに回復する可能性がある。

この経過において、大不況時に姿を消していた住宅部門での雇用が戻る可能性があり、これは米景気にとてもポジティブに作用するだろう。労働省の雇用統計では、建築・建設関連の雇用は2007年の180万人がピークとなっていた。この部門は2007年から2009年の住宅不況時に3分の1、60万人の雇用を削減しているが、現在まだ 20万人相当しかも回復していない(図 16)。この部門での雇用回復が続くと楽観視しており、そのペースが加速して景気回復に乗り遅れた人々に雇用機会を与える可能性もあろう。

図16

総括すると、引き続き、労働市場の回復とともに、これまで住宅販売の障害となっていた在庫や債務状況、銀行の貸し渋りなどが2015年後半から2016年にかけて改善すると、楽観視している。

これまでアメリカの多くの景気循環サイクルの中で、住宅セクターはリセッション脱却を先導してきた。だが今回は、その住宅セクターがアメリカを不況に陥れる引き金となったお陰で、回復がゆっくりで長く、不均一なものとなってしまっている。しかし、大不況からの成長回復も6年目にあたり、住宅環境も明るさを取り戻してきており、長期的な景気拡大を約束している。

参考文献

1  “デレバレッジとは何か (Deleveraging? What Deleveraging?)” Center for Economic Policy Research: Luigi Buttiglione, Philip R. Lane, Lucrezia Reichlin ,Vincent Reinhart著。
2 全米不動産協会 (NAR)
3 米抵当銀行協会 (MBA)

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