債務の縮小サイクル完了で 家計債務は拡大に向かう?

  • 21 May 2015
  • By Erik Norland

ニューヨーク連銀の概算は、2014年を通じて、家計が債務縮小に務めたとしている。特に、住宅価格の上昇を背景に、住宅ローンの借り手/貸し手が、それぞれ借り入れの拡大/貸し出し拡大のための資金調達を積極化する可能性もある。対名目GDP比の消費者債務残高は、2013年第4四半期の67.5%から2014年第4四半期の66.8%まで、穏やかに低下したとされているのだ。同87.1%で残高がピークを打った2009年上半期からは、20%超の低下となる。

縮小された債務は主に住宅ローンで、2008年末から2009年初めに対GDP比で68.5%のピークを付けた後、2014年末には同49%まで低下している。それ以外の債務(自動車ローン、クレジットカードなどの消費者金融)の残高は、2008年末の同18.6%から2012年中頃には同16.5%まで、穏やかな低下を見せた後、足元の同17.8%まで再び拡大している(図1)。

ただ、家計の債務が縮小する一方で政府の債務が急拡大したことから、米国経済が全体として債務を縮小した、と言うのは必ずしも正確ではない。実際、連邦政府の債務残高は、2007年末の対GDP比35.2%から、2014年末には同74.1%まで拡大している。低金利環境に加えてこの分野の債務を拡大させることで、家計の債務縮小が促進されたのと同時に、米国経済は1930年台以来の規模となるかもしれなかった景気後退を回避したことになる。

結果として、家計と連邦の債務を合算した総残高は、2008年末の対GDP比126.4%から2014年末の同141%まで拡大した(図2)。実際には、残高が2011年に同139.5%となった段階までに、拡大スピードのピークは過ぎていた。さらに、連邦の財政赤字が、対GDP比で2009年末に10.1%を付けた後、2014年末/2015年初めの段階では同2.8%となるなど顕著に減速していることから、対GDP比での債務の増加ペースでも鈍化が示されている(図3)。

図1.

図 2.

図 3.

一方で、家計におけるこうした債務の縮小は、住宅市場の低迷や個人所得の増加を下回る消費の伸びを通じて、米国の経済成長における負担要因ともなっている。加えて、可処分所得に対する貯蓄の割合は、2005年から07年の3%程度に対して、2008年から13年には6%程度にまで上昇している。

ただ現状では、家計における債務の縮小は最終段階に入っている、とも考えられている。実際、個人所得の上昇と低金利環境を考慮すれば、2020年に向けては、家計における債務が拡大傾向となったとしても驚くには値しない、とも言える。また、債務縮小と低金利環境を背景に、家計における債務負担率は、FRB(米国中央銀行)が統計を開始した1980年以来、最低の水準となっている(図4)。2007年末に13.2%を付けた所得に対する債務負担率(平均)は、2014年第4四半期には9.9%まで低下している。

図4.

債務とその負担率が低水準にあり、加えて銀行の資本が増強されている現状は、先々において家計が債務拡大に動く、銀行が貸し出しを拡大するなど、変化が喚起されやすい状況であるとも言える。特に、住宅価格の上昇を背景に、住宅ローンの借り手/貸し手が、それぞれ借り入れの拡大/貸し出し拡大のための資金調達を積極化する可能性もある。既にS&Pケース・シラー住宅価格指数は、2007年から09年の間に喪失した住宅価格の3分の2を取り戻した水準ともなっている(図5)。

家計が実際に債務拡大に踏み切るとすると、消費支出や住宅建設の拡大、さらに(州などの地方自治体を含めた)税収の継続的な改善が、2020年に向けて期待できる。こうした状況はまた、物価上昇率が消費者物価指数で対GDP比1.8%ほど、コアPCEデフレーターで同1.3%ほどに留まっているなか、金融政策正常化の一環として、FRBが政策金利をコア・インフレ率水準まで引き上げることを正当化することになる。

図5.

もちろん、金利が上昇することで個人消費は失速するし、政府部門と民間部門では時間の経過と共に金利負担が次第に上昇することから、連邦債務の縮小は困難な作業ともなる。こうした背景を考慮すると、FRBは(最初の引き上げの年内実施を含めて)金利政策の正常化を段階的に、時間をかけながら進めていくと予想される。また、こうした穏やかな引き締めであれば、米国景気が金利上昇から突発的なマイナスの影響を受けるとは考えにくい。さらに、政策金利がコア・インフレ率の水準まで引き上げられても、歴史的な観点からは依然として実質金利が低位である状況が続くことから、家計のバランスシートにとって、金融危機以降の債務縮小から拡大に転じる余地が充分に残されていることにもなる。

 

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