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フランス選挙: ユーロの運命は如何に?

オランダ総選挙終了を受け、ユーロはひとまず安定。米ドルに対し殆どの通貨が上昇する中、3月15日の議会選挙でガート・ワイルダース氏率いる極右政党、自由党が敗北し、ユーロもまたほぼ1%の上昇を見せた。自由党の大敗北は選挙直前の世論調査で予想されており、実際、ワイルダース氏がオランダ政府を支配することへの懸念は全く存在していなかった。一方、4月に予定されるフランス大統領選挙は、ユーロのみならず他の通貨、株式そして債券にも大きく影響をもたらすであろう。 

フランスの選挙は2回投票制で行われる。4月23日の第1回投票後、得票数上位2名が5月7日の決選投票へと進む。両投票日のパリ時間午後8時(ロンドン時間午後7時、ニューヨーク時間午後2時、シカゴ時間午後1時) 、フランス政府は出口調査の結果を発表し勝者を予想する。目下のところ、決戦投票に勝ち進むであろう上位2名の1人として、欧州連合(EU)並びにユーロ通貨(現在19か国で使用)同盟残留問題に関する国民投票実施等を公約する国民戦線の党首、マリーヌ・ルペン氏が有力とされている。万一ルペン候補が勝利をおさめた場合には、2016年のイギリスEU離脱(ブレグジット)の際と同様の混乱が市場に引き起こされるであろう。  

一見したところ、ルペン候補の勝率はかなり低い。最近の世論調査では、決選投票での最大のライバルでありEU残留を主張する中道派、エマニュエル・マクロン候補に20-30%のリードを許している(図1参照)。また、マクロン候補に続くライバルと目される中道右派のフランソワ・フィヨン元首相には10-20%ほどの差をつけられている(図2参照)。フィヨン元首相もまた、EU残留派である。

図1: エマニュエル・マクロン候補、ルペン候補に大差でリード。

図2: マクロン候補ほどではないが、フィヨン候補もまたルペン候補に大きくリード。

ライバル候補に世論調査で大きなリードを許すルペン氏ではあるが、Predictit.orgは依然として、5月7日における同氏の勝率を32%と予測する。これは、ブレクジット投票、そしてドナルド・トランプ氏の米大統領選における勝率予測と同じ確率である。 市場筋は、エリゼ宮大統領官邸に住む権限を獲得する最有力候補者として、58%の確率でマクロン候補を予想する一方、スキャンダルまみれのフィヨン元首相の勝率を9%と読む。さらに、現与党の社会党候補、ブノワ・アモン氏の勝率はわずか1%と予想する。

奇妙なことが一つある。ルペン候補の勝率32%が予想される中、通貨オプション市場は一切動揺を呈していない。ユーロ/米ドル(EURUSD)オプションは、同じ満期日を持つ英ポンドオプションに比べ、過去よりも比較的安値となっている。しかしながら、ブレクジットまでのユーロオプションは、常に英ポンドオプションよりも高値で取引されてきた(図3参照)。  

図3: 通常、ユーロ/米ドル(EURUSD)オプションは英ポンド/米ドル(GBPUSD)オプションより高値で取引きされる。

ブレクジットに関する国民投票が予想外の結果をもたらした後、英ポンドは20%下落した(図4参照)。ルペン候補勝利の暁には同様な事態が予測され、ヨーロッパの銀行に大きな波紋を引き起こし、ユーロ/米ドルの崩壊を招くことになりかねない。銀行預金者にとって、ルペン候補の勝利はユーロ崩壊を意味し得る。また、万一ユーロが崩壊した場合、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインの銀行預金者は、各国における新通貨より新ドイツマルクが強いであろうという期待の下に、ドイツの銀行に資金移動することもあり得る。現実には、そのようなリスクは誇張に過ぎない。世論調査は、フランスが依然として圧倒的に親ユーロであることを示す。よって、たとえルペン候補が勝利をおさめ、ユーロ通貨同盟に関する国民投票を実施したとしても、フランス国民は単一通貨同盟並びにEU残留を支持するであろう。その場合においても、欧州銀行システムへの更なる重圧は、長年にわたる停滞後ゆっくりしたペースで成長を遂げる経済にとって大きなショックとなるであろう。 

ルペン候補敗退の場合(現時点で最も有力なシナリオとされている)、3月15日のオランダ総選挙の際に見せた以上に、ユーロは上昇すると思われる。マクロン候補もしくはフィヨン候補の勝利となれば、米ドルに対して、ユーロは過去2年間の上限である1.16近辺にまでに容易に上昇するであろう。しかし、ユーロ/米ドル為替レートが1.16を超えるためには、更なる事実が必要とされる。つまり、ユーロ側において、欧州経済は引き続き強まっており、欧州中央銀行は金融緩和政策の縮小を予定しているという事実、もしくは、米ドル側において、米国経済の減速に伴い、連邦準備制度理事会はこれ以上の引き締めを行わないという事実である。 

マクロン候補勝利のシナリオは、ユーロの長期的上昇に必ずしも有効ではないであろう。大統領選後の6月、フランスでは国民議会選挙が行われる。マクロン候補の政治運動「前進!」(En Marche!)は大統領選挙立候補のための媒体として結成された新しい組織であり、577選挙区で有効に戦う立場にはないであろう。同候補が大統領選で勝利をおさめたとしても、与党連合の結成が必要となり、大変な困難に立ち向かうことになる。

図4:イギリスのブレクジットによる崩壊後ユーロは安定するも、ルペン候補勝利の暁には一変するであろう。

同じことが、ルペン候補が勝利した場合にも言えるであろう。2012年の第1回選挙でルペン候補は18%の票を獲得したが、同氏率いる国民戦線は国民議会577議席の内、わずか3議席しか獲得できなかった。よって、今回の大統領選に勝利したとしても、国民戦線が過半数に近い議席を獲得するとは考えられない。米大統領と異なり、フランスの大統領は国民投票を実施することができるため、国民議会の承認を得ずに法律を制定するすることができる。しかしながら、実際には、1958年にシャルル・ドゴール政権下で制定された現行政制度である第五共和政の下、これまでに提案されてきたほとんどの国民投票は敗北に終わっている。国民投票を提案する力は、国民を説得して目指すことを承諾させる力とは別物という訳だ。

フィヨン候補勝利の場合のみ、大統領は国民議会過半数の支持を得ることになる。しかしながら、そのフィヨン候補には、勤務実態がないにもかかわらずぺネロブ夫人と子供たちに20年間で100万ユーロ余にも上る多額の給与を支払っていたという疑惑があり、世論調査ではライバル候補者に大差でリードされている。 しかし、フィヨン候補を除外することはできない。彼は、ニコラ・サルコジ前大統領とアラン・ジュペ前首相を相手に逆転勝ちで党指名を獲得した。この秋のドイツ連邦議会選挙後、ヨーロッパは政治的に更に分裂することが予想される中、フィヨン候補の勝利こそが、ユーロにとって最も強気の結果をもたらすと予想されるからである。  

世論調査はルペン候補敗北の見通しを示すが、ここで大切なことは、世論調査が常に正しいとすれば、イギリスはEU残留を選択したはずであり、ヒラリー・クリントン氏は今頃米大統領に就任しているはずだということである。 一方、マクロン候補は良いスタートを切ったが、政策のあいまいさもあり、政治家としての真価が未だ問われていない。これは同候補の初めての大統領選である。ロスチャイルド投資銀行勤務の経験を持ち、非常に支持率の低かったフランソワ・オランド大統領の内閣では閣僚を務めた。  

フィヨン候補は、マクロン候補のこのような弱点を上手く攻め、決選投票の第2のスロットを獲得しようとするであろう。しかしながら、フィヨン候補にはペネロブ夫人関連のスキャンダル以外にも弱点がある。社会保守主義でないこの国にあって、同氏は中絶、同性婚等の社会問題に関して保守主義者である。更に、多くの有権者の福祉手当・保障を脅かすことになるであろうサッチャー経済改革を支持している。フィヨン候補の経済戦略は、問題を抱えるフランス経済の良薬となり得る一方、福祉手当の排除は国民に悪い結果をもたらすことにもなり得る。ルペン候補が現行の社会保障制度を維持し、移民への福祉手当を徹底的に排除することでコスト削減を目指すと主張する理由は、おそらくここにある。ルペン候補のメッセージは見掛け倒しのようではあるが、経済的に不安定で不安を抱える有権者にとっては、フィヨン候補の掲げる苦い良薬、そしてマクロン候補が掲げる雇用主が雇用者を解雇しやすい環境を築くことで労働市場を自由化するという曖昧な公約に比べ、ずっと魅力的であろう。

予想家がルペン候補勝率を未だに低くしないことは、正しい判断である。よって、通貨オプション市場は世論に惑わされることなく、予想家の意見に追従することが賢明であろう。パリ時間の5月7日土曜日午後8時、出口調査の発表を受け、市場には大きな変動が引き起こされるであろう。   

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信する。

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