米9月利上げの条件

  • 26 Aug 2015
  • By Bluford Putnam

次回雇用統計で就業者数が20万人以上となれば、そのまま9月FOMC会合で利上げの可能性あり

いまFRB(米連邦準備理事会)ウォッチャーにとって最大の疑問、それは「中国経済の混乱と2015年8月の株価下落を受けて、FRBはFF(フェデラルファンド)金利の引き上げを先送りするか?」である。私たちは「ない」という考えだ。依然として9月FOMC(米連邦公開市場委員会)会合で、およそ10年ぶりの利上げとなる公算が大きいとみている。その理由を述べよう。

FRBは株式を保有していない。FRBが株価の下落を懸念するのは、金融システムにシステマティック(全体的)なリスクがあるときだけだ。例えば、1987年10月や2008年9月である。大手金融機関が破綻し、経済全体が崩壊しそうなときだ。FRBは何度か株価が高値圏にあると懸念を示している。90年代のITバブルで、当時のアラン・グリーンスパンFRB議長が「(根拠なき)熱狂」と述べたのを思い出してほしい。実際のところ、FRBは今回の株価調整をガス抜きとなる健全な局面とみているだろう。ゼロ金利と量的緩和(QE)政策が投資家の積極的な利回り追求を後押しする形となり、過度のリスク嗜好を招いたのではと考えているのだ。

……FRBが9月FOMC会合で約10年ぶりにFF金利の引き上げを始めるとの見方を維持する。ただし、定性的な確率でいえば、約55%の評価を置いているにすぎない。

いうまでもなく、FRBは中国にも注目している。ただし、その関心は主に「中国経済の混乱が米国経済の後退要因となり得るか?」である。FRBにとっては、株価が2倍になろうが半分になろうが関心はない。しかも中国経済が苦境にある原因は、主に輸出相手国の経済が最近ほとんど成長していないことにある。ブラジルは低迷中だ。メキシコはゆっくりとした成長でしかない。3年にわたり緩やかな景気後退にあった欧州の実質GDP成長率は、今年せいぜい1.5%増であろう。米国の実質GDP成長率は2.5%増に向かっている。日本は成長していない。中国は人民元を30%切り下げられるだろう。そして輸出も相手国の緩やかな成長観測で、かろうじて増加しそうである。ほとんどあらゆるビジネスでそうだが、売上予測を見積もるとき、まず目安となるのは、商売相手の収入だ。大局的にみれば、中国は1980~2010年の30年にわたって世界の成長エンジンであり、この期間の実質GDP成長率は平均して約10%であった。中国は現代化を成し遂げており、また人口動態が老化パターンに変わっている。現代化、老化、そして産業経済の成熟化につれて、実質GDP成長率が緩やかなペースに落ち着いていったとしても、ごく自然なことといえる。

以上から、中国経済の混乱や最近の株価下落が原因でFRBがその判断を先送りするとは考えていない。またFRBには、いまにも行動に移したい重要な理由があると考えられる。

イエレンFRBには、バーナンキ時代の緊急政策から決別したいという強い思いがあるのだ。イエレン議長は、フォワードガイダンス(金融政策の先行指針)を修正し、バーナンキのように失業率に固執しなくなった。イエレンFRBはかなりデータに依存しているものの、重視しているのは全体像であり、ひとつやふたつの指標ではない。

イエレン議長は量的緩和を終わらせた。量的緩和が債券利回りを押し下げたという説には説得力がある。しかし、債券利回りの低下が雇用を生み、経済成長を刺激する一因となったという説については、かなり賛否が分かれるところだ。多くのアナリストが(私を含め)異を唱えている。実際のところ、ゼロ金利と量的緩和による最大のインパクトは、資産価格の下支えと、それらを維持できない水準にまで押し上げたことだろう。経済成長や雇用創出に重大なインパクトを与えたのではない。

データ依存のFRBにとって最重要ポイントとなるのは「米経済が恒常的に月20万人超の純増となる雇用を新たに創出している」「住宅市場(2008~09年の景気後退では震源地となった)が健全かつ伸びている」「実質GDP成長率が、多くが望んでいたような3%超えはないにしても、2009年末から米経済が維持している2~2.5%の水準で堅調に成長している」である。いいかえれば、ほぼ6年にわたって実質GDPの成長と雇用の創出を恒常的に記録している米経済に、まだ緊急政策が必要だろうか。そんなことはない。

ただし、考慮すべきリスクはある。そしてFRBは、いかなる積極的な動きも比較検討しようとする。米国のインフレ率は1994年から1~2%の間にある。低インフレの持続は、堅調な長期的成長には良い兆候だ(低インフレがデフレにはまらないかぎり)。世界的にコモディティ価格が低迷しているため(その一因として供給増、中国など新興国の成長鈍化が挙げられる)、消費者物価にいくらかの下押し圧力がある。一方、米国にデフレリスクはみられない。特にFRBがそうしているように、価格変動の激しい食料とエネルギーを除いたコア指数に注目した場合はそうだ。

結論として、FRBが9月FOMC会合で約10年ぶりにFF金利の引き上げを始めるとの見方を維持する。ただし、定性的な確率でいえば、約55%の評価を置いているにすぎない。30%の確率で実施が年内にずれ込み、15%の確率で2016年に判断が先送りされる可能性がある。FF金利先物が示しているように、市場は9月FOMC会合にかなり低い確率をつけている。

利上げ実施となれば、段階的に進めていくことになりそうだ。ただしFRBは、利上げに慎重で数回の会合では見送るという姿勢を明確にするだろう。

さらにFRBは、実効FF金利の誘導目標をレンジで設定せず、単に明確な基準で設定するかつてのやり方に戻り、私たちを驚かせるかもしれない。そして、さらに驚かせることに、実行FF金利の新しい誘導目標として、FRBは0.25~0.50%のレンジへの移行ではなく、0.25%をとる可能性がある。

最後に注意点として、9月4日発表予定の米雇用統計が依然として重要な注目データであると指摘しておきたい。私たちは雇用創出が月22万5000人以上になると推定している。それでも、何らかの理由で雇用データが予想を下回れば(例えば新規雇用の純増が20万人を割れば)、FRBは利上げ判断を9月FOMC会合以降に先送りするかもしれない。予想を大幅に下回るほど、先送りの期間は長くなる。さらなる注目データで、予期せぬ低下が一次的なものか、新たな減少傾向であるのか、はっきりさせる必要があるからだ。したがって、就業者数が予想を下回った場合、10月FOMC会合でも利上げの提案はないと考えられる。FRBは、さらなるデータを検証するため12月まで待つことになる。

しかも、9月4日は金曜日で、週末の米国はレーバーデイ(労働者の日)の連休に入る。したがって、もし(1)予想どおりのデータで9月出発の地ならしとなるものであれば、あるいは(2)予想外の失望的データで12月または2016年に先送りを示唆するものであれば、どちらにせよ、かなり大きな相場が展開するかもしれない。

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