FRB金利引き上げ決定、今後の引き上げはインフレ次第

  • 16 Dec 2015
  • By Bluford Putnam

イエレン議長が率いるFRB(連邦準備制度理事会)は、先々の政策金利引き上げに関して、アラン・グリーンスパンが議長だったときとは大きく異なる道筋を辿るし、より穏やかなスタンスで臨むことになる。グリーンスパン議長の下で、FRBには二度の金利引き上げサイクルがあった。そして、いずれの場合も、コア・インフレ率が2%程度でしかなかったのに、FRBは政策金利を5%超まで、性急に引き上げている。一方で、イエレン議長の下でのFRBは、おそらく、より注意深いスタンスで臨むと予想される。FOMC(連邦公開市場委員会)の委員たちは、それぞれが長期的な予想値を持っているものの、現状のFRBには、政策金利が最終的に到達するべき目標水準が存在しないからである。実際、実質短期金利はコア・インフレ率を超えるべきなのかについてさえ、FRBの明確さは乏しい。明らかなのは、インフレ率が継続的な上昇を見せた場合にのみ、FRBは追加利上げを考慮するということだけである。従って、今回の政策金利引き上げサイクルが経済に及ぼす影響について、これを過去の例から推察する場合には、斟酌を要する。これまでに比べ、現在のFRBは格段に注意深く政策を運営する中央銀行なのである。

インフレ率が抑制された状況は続き、2016年は2%以内に留まる

FRBは、PCE(個人消費支出)から算出されるインフレ率をデータとして選好する傾向にある。PCEデフレーターは消費者物価指数とは異なるが、この2つの指標は連動する。また、イエレン議長の下でのFRBは、エネルギーや食品の価格変化を含めた総合的なインフレ率、そして、価格変動の激しいこれらを除いたコア・インフレ率に、それぞれに同等の重要性を置いている。現在、総合インフレはゼロ(0)%を若干上回る水準で、またコア・インフレは1%から2%の間で、それぞれ推移している(図1)。2016年春から夏にかけて、総合インフレはコア・インフレの水準に向けて上昇すると予想される。エネルギー価格が卸売市場で大きく下落したのが2014年第4四半期であり、石油製品の価格がリテール・レベルで大きく下落したのが2015年第1四半期だったことを考えれば、2016年夏に向かって、前年同期ベースの差異は消滅していくからである。

図1

図2

よりファンダメンタルな観点からは、長期的なインフレ率は、総合でもコアでも、抑制された状態が続くと考えられる。世界市場での競争激化は、インフレの抑制要因となるからである。引退したベビー・ブーマー(団塊の世代)たちは、往年に比べて、支出を抑制するだろうし、より多くの資金を貯蓄へと回すようになる(そして、そうするべきでもある)。更に、資本規制とリスク管理強化の下で、銀行が積極的な貸出姿勢に転じるとは考え難い。こうした背景から、2016年末のインフレ率は1.5%から2%と予想される。

要するに、政府の積極財政を伴うことなく、単独でインフレ率を上昇させることについて、FRBは無力なのである。量的緩和策(QE)を通じて、政府債務を全て買い上げることも出来る一方で、支出に関しては、政府が増加させる方針(財政の拡大策)を採らない限り、FRBのQEによる効果を期待することは出来ないのである。その意味では、ゼロ金利政策の効果も限定的である。実際、短期金利をゼロ(0)%に、そして10年債利回りを2%以下に抑え込んだものの、政府や民間企業、そして消費者の支出にQEが具体的に影響した形跡は皆無となっている。米国経済の自然成長率は2%から2.5%と想定されているが、2010年以来の米国経済の成長率は、明確な継続性をもってこの水準で推移している。

同様に、QEが終了している環境下で金利が多少の上昇となったとしても、問題にはならないと考えられる。金利がゼロ(0)から1%、または2%で推移する環境下で、企業や消費者の借り入れ(そして支出)態度に見られる変化は、皆無と言えるものでしかない。さらに、規制の強化や高等なリスク管理手法を通じて、米国経済は1%から2%程度の金利変化に影響される代物ではなくなっているのも事実である。もちろん、例えば政策金利を5%に戻すとすれば、経済への悪影響は不可避となる。ただ、こうしたシナリオは現在、想定されてはいない。

財政拡大への政策転換、または民間企業や消費者が支出を拡大し、貯蓄率が低下することで銀行の貸し出し拡大が導かれ、与信の拡大ブームが到来するまで、現状の低インフレ環境は続くものと予想される。ただ、これからの数年、こうしたシナリオが現実化する可能性は、極めて低い。抑制されたインフレ環境下の利回り曲線は、若干、平坦な形状で推移することになる(図2)。

本資料に掲載の情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。助言を意図したものではなく、また助言と解釈しないでください。本資料に記載されて いる見解は、筆者個人のものです。必ずしも CME グループならびにその関連機関の見解ではありません。本資料およびその情報を投資助言も しくは実際に市場で経験した結果として受け取らないようにしてください。

免責事項

先物取引やスワップ取引は、あらゆる投資家に適しているわけではありません。損失のリスクがあります。先物やスワップはレバレッジ投資であり、取引に求められる資金は総代金のごく一部にすぎません。そのため、先物やスワップの建玉に差し入れた当初証拠金を超える損失を被る可能性があります。したがって、生活に支障をきたすことのない、損失を許容できる資金で運用すべきです。また、一度の取引に全額を投じるようなことは避けてください。すべての取引が利益になるとは期待できません。

本資料に掲載された情報およびすべての資料を、金融商品の売買を提案・勧誘するためのもの、金融に関する助言をするためのもの、取引プラットフォームを構築するためのもの、預託を容易に受けるためのもの、またはあらゆる裁判管轄であらゆる種類の金融商品・金融サービスを提供するためのものと受け取らないようにしてください。本資料に掲載されている情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。助言を意図したものではなく、また助言と解釈しないでください。掲載された情報は、特定個人の目的、資産状況または要求を考慮したものではありません。本資料に従って行動する、またはそれに全幅の信頼を置く前に、専門家の適切な助言を受けるようにしてください。

本資料に掲載された情報は「当時」のものです。明示のあるなしにかかわらず、いかなる保証もありません。CME Groupは、いかなる誤謬または脱漏があったとしても、一切の責任を負わないものとします。本資料には、CME Groupもしくはその役員、従業員、代理人が考案、認証、検証したものではない情報、または情報へのリンクが含まれている場合があります。CME Groupでは、そのような情報について一切の責任を負わず、またその正確性や完全性について保証するものではありません。CME Groupは、その情報またはリンク先の提供しているものが第三者の権利を侵害していないと保証しているわけではありません。本資料に外部サイトへのリンクが掲載されていた場合、CME Groupは、いかなる第三者も、あるいはそれらが提供するサービスおよび商品を推薦、推奨、承認、保証、紹介しているわけではありません。

CME Groupと「芝商所」は、CME Group, Inc.の商標です。地球儀ロゴ、E-mini、E-micro、Globex、CME、およびChicago Mercantile Exchangeは、Chicago Mercantile Exchange Inc.(CME)の商標です。CBOTおよびChicago Board of Tradeは、Board of Trade of the City of Chicago, Inc.(CBOT)の商標です。ClearportおよびNYMEXは、New York Mercantile Exchange, Inc.(NYMEX)の商標です。本資料は、その所有者から書面による承諾を得ない限り、改変、複製、検索システムへの保存、配信、複写、配布等による使用が禁止されています。

Dow Jonesは、Dow Jones Company, Inc.の商標です。その他すべての商標が、各所有者の資産となります。

本資料にある規則・要綱等に関するすべての記述は、CME、CBOTおよびNYMEXの公式規則に準拠するものであり、それらの規則が優先されます。 取引要綱に関する事項はすべて、現行規則を参照するようにしてください。

CME、CBOTおよびNYMEXは、シンガポールでは認定市場運営者として、また香港特別行政区(SAR)では自動取引サービスプロバイダーとして、それぞれ登録されています。ここに掲載した情報は、日本の金融商品取引法(法令番号:昭和二十三年法律二十五号およびその改正)に規定された外国金融商品市場に、もしくは外国金融商品市場での取引に向けられた清算サービスに、直接アクセスするためのものではないという認識で提供しています。CME Europe Limitedは、香港、シンガポール、日本を含むアジアのあらゆる裁判管轄で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けていませんし、また提供してもいません。CME Groupには、中華人民共和国もしくは台湾で、あらゆる種類の金融サービスを提供するための登録または認可を受けている関連機関はありませんし、また提供してもいません。本資料は、韓国では金融投資サービスおよび資本市場法第9条5項並びに関連規則で、またオーストラリアでは2001年会社法(連邦法)並びに関連規則で、それぞれ定義されている「プロ投資家」だけに配布されるものであり、したがってその頒布には制限があります。

Copyright © 2016 CME Group and芝商所. All rights reserved.