ギリシャ支援後の欧州を読む

  • 30 Jul 2015
  • By Bluford Putnam

「ギリシャの債務不履行とユーロ離脱の可能性を認めるか、あるいは追加の金融支援をするかわりに緊縮財政策の再実施を課するか」――。EU(欧州連合)、ECB(欧州中央銀行)、そしてIMF(国際通貨基金)は、その論議に2015年の半分を費やした。現在計画されている緊縮財政策は、非常に厳しい。もし実施されれば、ギリシャ経済が日の目をみることは、ほぼ確実にないだろう。将来的には債務の返済が、ほとんどできなくなるかもしれない。新たな融資についての話し合いがまとまれば、2017年もしくは18年には、今よりもはるかに深刻なギリシャ危機が起きると考えている。またECBが短期金利について示唆するところは、これから長期にわたる据え置きである。したがって、ユーロの銀行間取引金利(Ibor)は実質的にボラティリティをほぼ失い、ユーロ相場は強弱入り混じった状況となりそうだ(図1参照)。

EU、IMF、ギリシャには、非難されるべき、そして解決すべき過去の過ちが山ほどある。しかし、いまは将来を見据えるべきだ。ギリシャ経済は、不況の真っただ中にある。1930年代に米国が経験したあの不況よりも、すでに悪化しているのだ。ギリシャのキャッシュフローでEUやECB、IMFへの膨大な債務を返済するのは、まったくもって無理である。ある時点で、ギリシャは債務不履行もしくは大規模な債務再編に直面することになる。今回の話ではない。この先の話だ。

いまのところEUは、ギリシャに新たな巨額の追加融資をするかわりに、より厳しい緊縮財政をとるよう説得している。しかし、ギリシャが新しい緊縮策を導入すれば、経済は実体経済のさらなる活動低下に苦しむことになる。今回の追加融資による債務はいうまでもなく、すでに抱えている債務の支払いさえできなくなるだろう。つまり、EUの策は危機を2017年もしくは18年に先送りするものであり、そのときは今回よりもはるかに深刻な状況に陥るのだ。

図1

新たな融資についての話し合いがまとまれば、2017年もしくは18年には、今よりもはるかに深刻なギリシャ危機が起きると考えている。

経済的影響からいえば、ギリシャ経済は、すでに他の欧州諸国から隔離されている。実際のところユーロ圏GDPの2%未満にすぎない。ところが、欧州株へのダメージのほとんどが、その危機をどのように解決するかという不透明さからもたらされていた。政治的側面からみると、さらに興味深い。アンゲル・メルケル独首相からフランソワ・オランド仏大統領、EUの官僚、ECBの行員に至る、欧州の政治家にとっての試練とは、ギリシャへの貸付が大きな損失となることによる政治に及ぼす影響をどう処理するかである。縮小したギリシャ経済に、現在の債務を返済するだけのキャッシュフローを生み出すのは無理だ。さらなる債務については、いうまでもない。したがって、EUの政治家にとって究極の問題とは、債務を減免するか、その損失のため独仏で増税をする必要があるか、あるいは独仏の信用格付にどれだけの衝撃があるかとなる。どれも政治的結果として全く魅力的でない。そのため欧州の政治家には「缶をできるだけ向こうに蹴飛ばしておきたい」「さらなる緊縮財政をギリシャに迫りたい」「欧州の新たな指導部に引き継ぐまで、次の危機を先送りしておきたい」という強い欲求があるのだ。

かねてから指摘してきたように、債務不履行が必ずしもギリシャの単一通貨からの離脱(グレグジット)を意味するわけではない(問題が密接に関連しているとはいえ)。つまるところ、ここで繰り広げられているのは「どの機関がギリシャにユーロからの離脱を迫るか?」という、責任のなすりあいといえるだろう。現在IMFは、より現実的なアプローチを助言し、ギリシャ経済が現在の借金に耐えられず、いたずらに債務を膨らましているだけと認識している唯一の機関である。このIMFの姿勢を歓迎していないのがEUだ。EUが好むのは、バラ色のシナリオとあらゆる危機の先送りである。そして、これで苦しい立場に置い込まれたのがECBだ。ギリシャの銀行は、いまも未来も、ECBからの流動性支援で命脈を保っている。もしECBがプラグを抜けば、グレグジットに追い込まれる。しかし、ECBはギリシャをユーロから切り離す原因となる機関になるよりも、むしろEUやドイツと歩調を合わせる道を選びそうだ。2017~18年にみる風景は、2015年にみたときを超える、かなり壮絶なものとなるだろう。

ECBが今回のギリシャ危機の解決によって金融政策の見通しを変えることはない。ユーロ圏の成長は、さらなる信用供給を促すことにかかっている。そしてそれは、ECBの短期金利政策が、これから長きにわたり変化がないことを示唆しているといえる。つまり、たとえ欧州の国債が、流動性不足も一因となり、依然として大きくブレたままであったとしても、ユーロの銀行間取引金利にはボラティリティがほとんどあるいは全くないのだ。

興味深いことに、ユーロは危機にあるときのほうが危機後よりも強かった。その大きな理由は、ギリシャ危機の解決策だろう。「ECBがギリシャの銀行にさらなる多額の融資をすることで、かなりの長期にわたり量的緩和政策を維持しなければならなくなる」と示唆していたわけだ。これで市場は、FRB(米連邦準備理事会)が2015年末までに利上げをする可能性の高いことを思い出した。そのため、現在の危機が解決されたとき、対米ドルでユーロ安となったのだ。この先、ユーロが対米ドルで高くなるか安くなるかは、まさに欧州の経済成長率が私たちの考えているように上昇し始めるか否かにかかっているだろう。実質GDPが市場予測よりも強い数字となれば、まさに周知の事実である米金利0.25%引き上げに対抗するだけの材料となりそうだ。

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