株式パフォーマンスの主要な4つの要因

  • 23 Jun 2016
  • By Erik Norland

株式ポートフォリオのマネジャーが直面する、管理上のリスク要因は多く存在する。銘柄を選択とはその会社に特有のリスクを選択することであり、現金ポジションや銘柄の成長性に対する見通し、どの業種を偏重/軽減するかなどによって、指標指数に対するトラッキング・リスクが発生する。オーバーウェート/アンダーウェートのセクター選択に関しては特に、過去12ヵ月でパフォーマンスに大きな差異を生むことになった(図1)。ここ2年間で、S&P500に対して最もトラッキング・リスクが少ない工業セクターでさえ、2015年6月1日から翌年6月1日までの期間で、6.8%のトラッキング・リスクが発生している。さらに、公益株における同期間のトラッキング・リスクは16.8%、エネルギー株では19.7%となっていて、同期間にアウトライトのS&P500 を保有した場合のボラティリティーよりも高い数値となっている。

このレポートでは、単純な回帰モデルで過去1年の市場データを解析し、S&P500指数 と、E-Mini業種先物として上場されている9つの個別セクターの乖離に関して、最善の説明を提供してくれる市場関連の要因を認識し、評価する。4つの要因とは:

  • 原油: WTI先物の期近限月における日毎変化
  • 米国短期金利: FF先物(6か月フォワード)の日毎変化
  • 米ドル: ブルームバーグ米ドル指数の日毎変化
  • 銅: 高度銅合金先物の日毎変化

原油、銅、金利、そして米ドルの変化に比較的影響を受けない4業種: テクノロジー、一般消費財、工業、ヘルスケアその他の5業種は、商品市場やマクロ経済などの要因に対して敏感に反応する

最初にエネルギー・セクターから、こうした要因の影響を少し詳細に見ていこう。

図1: トラッキング・リスク vs 指数 (2015年6月1日~2016年6月2日、年率)

図2:それぞれのセクターにおける4つの要因に起因するトラッキング・リスクの割合(%)

WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油

原油価格の上昇はもちろん、エネルイギー関連会社にとって好材料となる。一般的に、原油の生産会社やサービス会社にとって、原油価格の上昇は好材料であり、下落は悪材料となる。したがって、原油価格が上昇するなかでエネルギー・セクターがS&P500 指数をアウトパフォームし、原油価格が下落するなかでアンダーパフォームするのは当然と言える。エネルギー価格の上昇はまた、素材セクターのアウトパフォーマンスとの連動しており、ある程度、金融セクターにも連動している。金融セクターについては、エネルギー・セクターへの融資が多いことから、その連動性に関する意外性は少ない。その他の業種では、原油価格に対してマイナスに反応するものが多い: こうした業種は、原油価格の上昇でS&P500指数をアンダーパフォームし、下落でアウトパフォームする傾向にある。

特に消費財やヘルスケアなどの業種では、エネルギー価格の上昇で下落が顕著である。エネルギーへの支出が多くなることで、消費者にとっては、生活費需品やヘルスケアなど、その他に振り向ける支出が減少する。

図3:原油価格が2倍になったとしたらエネルギー・セクターはS&P500 指数を30%アウトパフォームする

図4:エネルギー・セクターはスポット価格よりも再投資した先物価格に連動する度合が高い

実際、生活必需品とヘルスケアは、原油価格の変動に対して、一般消費財よりもマイナスに反応する。これについては、低所得層は高額所得層よりも、エネルギー、生活必需品、ヘルスケアなどに関する支出割合が高いことが背景として考えられる。原油価格が上昇するなかでは、こうした消費者は,必須の支出を犠牲にするなど、厳しい選択を迫られることになる。一方で、エネルギーへの支出割合が低いことから、原油価格が上昇するなかにあっても、高額所得者が受ける影響はより限定的となる。同時に、高額所得者は一般消費財を購入する傾向がより強く、このセクターも、生活必需品やヘルスケアに比べて、エネルギー価格の変動に対する感度は低くなっている。

FF先物と金利

連邦制度理事会(FRB)の金融政策の変化は、S&P500指数に対する特定セクターの相対的なパフォーマンスに影響を与える。FF金利先物は、FRBの短期金利誘導目標に対する市場予想の変化を如実に反映する。FF金利上昇の可能性は、金融セクターがこれを好感する一方、その他の多くのセクターにとっては悪材料となる。特に、公益やエネルギー、生活必需品などのセクターでは、その傾向が強い(図5)。銀行の収益性や資産運用のパフォーマンスで改善が期待されることから、こうしたセクターの投資家にとって、FRBによる政策金利引き上げは好材料となる。一方で、配当利回りが傾向として高く、その意味で利付有価証券と比較される公益株は、最大の影響を受ける。、金利上昇が予想される環境下では、エネルギーもマイナスの反応を示している。このセクターの銘柄の多くは、原油ブームを背景に、低コストのファイナンスに浴してきたし、大胆に債務を拡大させて来たのも事実である。  

図5:金利上昇は、金融関連にとって好材料である一方、公益やエネルギー、生活必需品には悪材料となる

金利への感度という観点からも、生活必需品と一般消費財は、これに異なった反応を示している。総体として、生活必需品は、FRBの政策金利引き上げの可能性が高まる場合、マイナスの反応を示している。これについては、実際にFRBが金利を引き上げた場合、消費者の金利負担が増えることが背景として指摘できる。一方で、一般消費財は大型商品のメーカーが多い。こうした商品については、ファイナンス・サービスが付加されている場合が多く、銀行などの場合と同様に、こうしたサービスでは金利上昇による恩恵が期待される。さらに、一般消費財に属する商品は、クレジットよりも、現金で支払う消費者層に好まれると考えられる。

図6:政策金利の引き上げ予想は大きく低下

ここ2年、実際の引き上げペースが市場の期待に追い付かないことを背景に、市場の政策金利引き上げ期待は後退している(図6)。金利の上昇期待が後退するなか、金融セクターは過去1年で、S&P500指数を5%程度アンダーパフォームする状況となっている。一方で、公益は20%ほどのアウトパフォームしている。6月3日(金曜日)、市場予想を大きく下回る結果となった雇用統計の発表を受けて、FF金利先物は10bpのt低下(価格は10bptの上昇)を記録している。この日、S&P500指数の下落率が0.29%だったのに対して、E-Mini金融セクター先物の下げは1.33%に達している。一方、E-Mini公益セクター先物は1.78%の上昇となり、、S&P500指数を2.07%アウトパフォームする結果となっている。

FF先物と金利

銅価格が、業種指数先物のS&P500指数に対するアウトパフォーム/アンナ―パフォームに与える影響は、比較的軽微なものとなっている。ただ、素材や工業などのセクターは、銅価格の上昇を背景にアウトパフォームする傾向がある一方、公益や生活必需品などでは、程度は軽微なものの、一般消費財などのセクターはアンダーパフォームする傾向がある。素材銘柄の反応は単純に、銅価格の上昇が通常、工業素材価格の上昇を喚起する背景となり、素材銘柄にとって、利益率の拡大を期待させることになるからである。 

図7:銅価格が及ぼす影響は、全体的に軽微である一方、その上昇は素材銘柄にとって好材料となる。

銅価格の上昇に伴うパフォーマンスとしては、公益や消費財などのセクターがマイナスの反応を示しているのは若干、不思議ではある。ただ、銅価格の上昇は世界景気の回復を示唆しているとも考えられ、これがFRBに金利引き上げに対して積極的なスタンスをもたらし、結果として、公益や生活費必需品などのセクターにとっての悪材料を生じさせる可能性が意識されるから、とも考えられる。 

ブルームバーグ米ドル指数

ブルームバーグ米ドル指数は、10の個別通貨の加重指数である(ユーロ=31.75%、日本円=18.45%、カナダ・ドル=11.48%、メキシコ・ペソ=9.87%、英ポンド=9.46%、豪ドル=6.1%、スイス・フラン=4.37%、韓国ウォン=3.43%、中国元=3.00%、ブラジル・レアル=2.08%)。この通貨バスケットに対する米ドルの動向は、業種指数の相対的なパフォーマンスに影響を与える。 

図8:ドル高は金融株にとって好材料である一方、公益や素材にとってはマイナス材料となる

その他の要因も認めた上で、過去1年では、ほとんどの業種にとってドル高はマイナス材料となっている。特に素材と公益に関しては、この傾向が顕著となっている。一方で、ドル高はテクノロジーで中立要因であり、ヘルスケアや金融サービスなどの業種に対してはプラス要因となっている(図8)。また、こうした業種の総時価総額は、S&P500指数全体の54%に達している。一方で、ブルームバーグ米ドル指数の上昇に最もマイナス影響を受けるS&Pの業種の時価総額は、比較的小さいものとなっている。例えば、S&P500指数の総時価総額に対して、素材は2.9%、公益は3.4%ほどでしかない。 

その他の影響もあることを前提とした上で、一般的に、海外収益を目減りさせ、米国で生産された商品の国際競争力を後退させることから、ドル高に対して株価はマイナスの反応を示す。

要点:

  • 過去1年におけるS&P500指数に対するE-Miniエネルギーセクターの相対的なパフォーマンスの半分以上は、原油価格、短期金利、銅価格、米ドル、それぞれの日中変化によって説明できる。
  • 金融、生活費需品、素材、公益などのE-Miniセクター指数先物のS&P500指数に対する相対的なパフォーマンスの5分の1は、同様の4つの要因で説明できる。
  • 原油価格の上昇はエネルギーや素材銘柄の好材料となり、特に生活必需品やヘルスケアなど、その他のセクターにとってはマイナス要因となる。
  • 金利の上昇期待が高まる場合、金融にはこれが好材料となり、公益、エネルギー、生活必需品では悪材料となる。
  • ドル高では、金融がS&P500指数をアウトパフォームする傾向にあり、ヘルスケアとテクノロジーを除いて、ドル高はその他のセクターにとって悪材料となる。
  • 銅価格の上昇は、素材株に好影響を及ぼし易いが、その他のセクターへの影響は限定的である。

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミストです。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信しています。

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