為替市場の視点から見た新興市場の回復

  • 21 Jul 2016
  • By Erik Norland

為替市場は、相対的に経済の健全性を計る優れたバロメーターである。今春、為替市場では、センチメントが若干変化した兆候が出現し、ロシアやブラジルの見通しがより明るさをみせたとはいえ、中国についてはわずかながら懸念がくすぶり続けている。

こうした見方をし始めたのは2013年5月で、その当時、連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長が量的緩和の終了を巡る「段階的縮小に関する発言」を開始し、新興国通貨が軒並み下落に転じた。この下落トレンドは2016年2月に終焉した。

新興国通貨の下落局面が終了したのは、2つの変化が要因にある。

  1. 原油価格の底入れ(WTI(ウェスト・テキサス・インターミィディエイト)原油のスポット価格は1バレル約26ドルをつけた)と反発(5月に同50ドルをつける)。
  2. 2015年12月の利上げ後、FRBによる利上げは1回限りになりそうだと米国債券市場が認識し、 2016年に4回以上の利上げを示唆したその当時のガイダンスは、まったく実現されなかった。

当社のチャートの転換点については、2016年2月11日に注目しており、それ以降に多くの新興国通貨が力強い上昇に転じた。2015年9月以降、一部の通貨は上昇局面をたどっていたが、大して熱狂するほどではなった点を指摘する。2016年に、新興国通貨の中で近年、大幅安となっていた通貨が大幅高となっていることは事実である。

ロシア・ルーブルは、原油価格の回復に強い反応を示した。さらに、米国、英国、欧州で政治リスクが高まっているため、市場は、17年間権力の座についているロシアのウラジミール・プーチンの動きを観察している。

また、ブラジルレアルも、政治リスクの改善に反応した。ジルマ・ルセフ大統領の弾劾裁判が決定して、その結果、暫定政権に移行し、国営石油会社のペトロブラスの経営陣は交代したことから、経済は最悪期を脱したというのが一般的な見方である。確かに、経済は後退局面が続いており、政府の債務負担は巨額にふくらみ、暫定政権は、途方もなく大きな課題に直面している。それでも、14%の金利(インフレ率の低下を受けて2016年後半から2017年に低下する可能性がある)を踏まえると、ブラジルレアルは、メキシコ(4%)などの他多くの新興国通貨よりも極めて良好なプレミアム(金利差相当分の収益)を提供しており、これは、メキシコの通貨が新興国通貨の回復局面で他通貨のようには良好に推移していないことを部分的に説明している。

中国元は、注目に値するアウトライヤーである。中国の通貨は弱含んでいる。このプロセスは2014年に始まり、成長減速に直面している中国の輸出の伸び不足に必要な調整である。

過去12ヶ月間、中国は、国内の景気刺激策の一環として、多額の新規融資を提供してきた。その影響は、景気減速のペースを鈍らせたものの、中国元を押し下げる展開となった。2016年内は、大型の景気刺激策は発動されないかもしれないが、中国は6.5%~7.0%の実質GDP成長率から、今後数年にかけて3%~5%成長の経済に移行するとみられ、好ましいシナリオは、通貨の一段の(管理された)下落である。

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著者について

Erik Norlandは、CMEグループのエグゼクティブディレクター兼シニアエコノミストです。世界の金融市場に関する経済分析の責任者であり、最新のトレンドと経済要因を評価することで、CMEグループのビジネス戦略、および当グループの市場で取引を行う顧客への影響を分析します。CMEグループのスポークスパーソンの一員でもあり、世界経済、金融、地政学の情勢に関する見解を発信しています。

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