商品市場の底打ちは新興国通貨反発の契機となるか?

  • 11 Mar 2016
  • By Bluford Putnam

Bluford Putnam(CME Groupチーフエコノミスト)


2016年当初の2か月間、広範囲に及ぶ商品市場は直近安値からの反発を見せ、さらに上昇を続けている。市場では、商品価格の一段安懸念の後退を受け、新興国通貨にも反発の機会が訪れている、との指摘が聞かれている。

商品市場: リストラ圧力の終焉から新しい相場レンジの模索へ

2015年は、エネルギーから鉱山関連まで、第一次産品の生産者の多くが、商品価格低迷の現実に対して否認的な姿勢から、この状況が長期化する可能性を受け入れる姿勢へ、その認識を変化せる年となった。生産者は将来的な事業コストに対する収入見通しを引き下げ、こうした見通しにバランスシートを適合させるため、負債再編や資産売却を推し進めたのである。

生産者によるリストラの動きは現在も進行中だが、その最も困難な時期は過ぎたと考えられる。ただ、こうした動きの中では、生産者がリストラ圧力を高める段階で、資産売却などを背景に商品価格が長期的な価格レンジを下抜けるなど、一般に商品市場は下落圧力を受け易い。  

さらに、商品セクターにおける生産者のリストラという観点からは、2016年の商品市場は新しい段階に入った、とも考えられる。商品価格の一段安を懸念する段階は終焉したのであり、世界経済の成長スピード鈍化という現実に調和した、新しい取引レンジを模索するボラティリティーの高い相場に取って代わられたのである。

新興国通貨反発のタイミング?

新興国通貨の軟調については、2013年5月、バーナンキFRB議長(当時)が量的緩和(QE)の終了に言及したときから始まっていたと言える。ただ、米国が緊急避難的な金融政策を正常化する方針を示したことが、こうした新興国通貨が軟調推移となった本当の理由ではない、というのが我々の継続した見方である。軟調転換の実際の要因は輸出、特に多くの新興国で依存度が高い第一次産品の輸出に対する需要の減退である。例え商品輸出に依存していない新興国であったとしても、多くの場合、その近隣国や貿易相手国での依存度は高く、新興国全体の景気後退を招く結果になったと考えられる。その意味では、例えばインドの様に、第一次産品資源が豊富ではない国であっても、新興国通貨の下落期には、ある程度の自国通貨下落が見られたことを付け加えておきたい。

ここでの所見をまとめると、新興国通貨の総体的な下落は、商品価格の一段安(経済成長の鈍化)に対する懸念を背景としたもの、ということである。実際、その結果として政治的なリスクが高まる場合も多い。従って、一段安への懸念を抱いていた相場から低成長経済の現実に適合した価格を模索する相場に移行しているということは、新興国にとって好ましい材料であると言える。

商品市場への依存度が高い国々の代償は高く、政治的、経済的なリスクの高まりを反映して、その多くが魅力的な高利回りを提供している

 

図1

図2

FRBの追加利上げ遅延、中国のハードランディング回避

ここで取り上げた商品市場と新興国通貨の見通しに関しては、2つの重要な前提がある。1つは、雇用市場の確実な回復が続く一方、賃金上昇が限定的で、インフレ圧力が最小限となっている米国経済である。「経済指標次第」という政策スタンスのFRBは、政策金利の追加引き上げをさらに遅らせる可能性があり、2016年については、9月から12月までの間に1度だけ、という可能性が高まりつつある。昨年12月、ここ10年ほどで初めての引き上げで、FRBは政策金利を25bpt引き上げている。第2は、ハードランディング回避の可能性を高めている中国経済である。もちろん、中国景気の失速は続いており、この傾向自体は次の10年間も続くと考えられる。しかしながら、中国政府は、新規の貸し出しなどによる景気刺激策を続け、例え成長が一段と減速したとしても、経済のハードランディングを回避するための方策を継続させている。一方で、ハードランディング回避によって人民元安相場が終焉するというわけではない。それは、新興国通貨が直近安値から反発する可能性が高いとしても、である

 

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