エルニーニョからラニーニャへ 天然ガスと天災リスクへの影響

  • 23 Aug 2016
  • By Bluford Putnam

2015年に猛威をふるったエルニーニョは、すでに終息した。しかし、次はラニーニャの番だ。2017年にかけて発達する可能性が高い。こうした東太平洋赤道域で起きる気象現象は、かなり遠方にまで影響を及ぼすことがある。例えば、2015年のエルニーニョでは、モンスーン(訳注:南・東南アジアで夏は海洋から大陸へ吹き、冬は逆に吹く季節風)に影響し、インド、マレーシア、インドネシアで降雨量の減少、深刻な干ばつ被害、さらには山火事の頻発が引き起こされた。その一方で、ブラジルのサンパウロ周辺では干ばつや水不足の緩和をもたらしている。ただし、通常のパターンに反する動きもあった。北米で暴風雨の進路が南下しなかったのだ。そのため、南カリフォルニアでは期待されたほどの降雨がなく、太平洋岸北西部は何度も暴風雨に襲われ、米中西部では予想よりも暖かい冬となった。

このように通常パターン予想が完全にかく乱された要因、特に北米で暴風雨の進路がさらに南下しなかった要因について、米サイエンス誌(2016年6月24日付、352巻6293号)でイーライ・キンティッシュが分析している。記事によると、北米上空の風がどのように影響を受けるか解くカギは「南方振動」にあるという。それによって、かつて1982年と1997年に大規模なエルニーニョが発生したときよりも、2015年は太平洋沿岸がはるかに暖かくなった。それが暴風雨進路の南下を阻む大きな役割を果たしたのである。

エルニーニョが去った今、天候予報士はラニーニャが発達する可能性が高いとみている(現在の確率は60〜70%)。つまり、太平洋赤道域の海面水温が平年よりも低くなる現象だ。エルニーニョ(男の子)からラニーニャ(女の子)に覆るのは、よくあるパターンである。特に2015年のような非常に大規模なエルニーニョが発生したときはそうだ。

図1 2015年8月の大型エルニーニョ

オレンジ色が濃いほど、海面水温が平年よりも高いことを示している。エルニーニョは東太平洋赤道域で海面水温が上昇する現象だ(http://www.ospo.noaa.gov/Products/ocean/sst/anomaly/)。

図2 2016年8月はラニーニャが発達中か?

青色が濃いほど、海面水温が平年よりも低いことを示している。ラニーニャは東太平洋赤道域で海面水温が低下する現象だ(http://www.ospo.noaa.gov/Products/ocean/sst/anomaly/)。

北米の天然ガスについて

1998~99年にラニーニャが発生したとき、米国は極めて厳しい冬に襲われ、国内で天然ガスの供給が激減した。そして、時間差があったものの、天然ガスの価格が急騰する結果となった。ただし、今回はそれと異なる展開となる可能性がある。1999年や2007年のように、北米太平洋沖の海面水温が低くなれば、ラニーニャの影響はさらに強まるだろう。しかし、平年よりも高いままであれば、その影響はいくらか和らぐかもしれない。

また、ご承知のように、1999年を境に天然ガス市場では他にも変化があった。まず挙げられるのが、米国で天然ガスの生産が劇的に拡大したことだ。2015年の生産量は2000年に比べて42%増である。2006年以降、天然ガスの生産ブームは絶好調が続いており、とどまることを知らない。また、米国で発電のエネルギー源を石炭から天然ガスに切り替える動きが、さらに活発化している。事実、2016年には天然ガスによる発電量が石炭をついに上回りそうだ。つまり、天然ガスによる発電の増加は、もし米国が非常に厳しい冬となり、送電網への需要が増加すれば、天然ガスの在庫が前回のラニーニャ発生時よりも急速にはけることを意味する。天然ガスの生産が拡大しているため、価格の上振れ余地は2000~02年ほど大きくないだろう。しかし、天然ガス価格は、ラニーニャの発達に伴い、かなりのボラティリティをはらむようになり、エルニーニョからラニーニャへの転換に即座に反応するかもしれない。

図3:米国の天然ガス・石炭発電供給量

図4:米国の天然ガス生産量

農産物価格のボラティリティ

エルニーニョからラニーニャへの転換とともに、農産物価格のボラティリティが上昇する可能性がある。インドやインドネシアだけでなく、豪州やアフリカでも平年以上の降雨があるだろう。だが、ペルー、チリ、米南西部で干ばつとなる可能性が高まるからだ。今のところ、米国コーンベルト(トウモロコシ生産地帯)の湿気は、非常に良い状態にある。

ハリケーンやサイクロンも

最後に、暴風雨が原因で米国と中国に経済混乱が生じる可能性について触れておく。もしそうなれば、2017年のラニーニャは、より多くのハリケーンやサイクロンが発生し、上陸する可能性と関連づけられるだろう。米東海岸と中国沿海部の両方に影響を与えるかもしれない。


Putnam, B., 2016, “From El Niño to La Niña:  Implications for Natural Gas, Agricultural Price Volatility, and the Potential for Hurricanes,” Research Council Corner:  The Economist’s Edge, Global Commodities Applied Research Digest, a publication of the J.P. Morgan Center for Commodities at the University of Colorado Denver Business School, http://www.jpmcc-gcard.org, Vol. 1, No. 2, (Forthcoming) Fall.


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著者について

Bluford “Blu” Putnam(ブルフォード“ブル”パットナム)CMEグループ・マネージング・ディレクター兼チーフ・エコノミスト。中銀の政策分析・投資調査・ポートフォリオ管理を中心に金融業界で35年を超える経験を持つ。2011年5月より現職。世界経済情勢に関する情報発信で中心的な役割を担う。

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