2016年以降のエネルギー相場を左右する8つの要因

  • 14 Sep 2015
  • By Bluford Putnam

エネルギー相場は、短期的にも長期的にも材料が動的に入り組んでおり、いつも以上に不透明感が増している。2016年までは、原油価格も天然ガス価格も、激しいボラティリティによる幅広いレンジでの往来となりながらも、引き続き安値圏での展開となるだろう。では、長期的な、例えば2017~20年の見通しはどうだろうか。私たちの基本シナリオは「原油と天然ガスの値動きが乖離する」「原油価格の世界指標としてのWTI原油に対する信頼性が大きく向上する」というものだ。また、エネルギー価格を大きく左右する動的要因が8つ(短期と長期に4つずつ)あるとみている。

2016年までは、原油価格も天然ガス価格も、激しいボラティリティによる幅広いレンジでの往来となりながらも、引き続き安値圏での展開となるだろう。

短期的要因

  • 米国の持続的生産増
  • 中東産の増加
  • 世界経済の減速
  • エルニーニョが2015-16年冬の米国に与える影響
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    長期的要因

  • 米国産LNGの輸出
  • 北海産原油の生産減
  • 欧州・アジアで天然ガス価格が原油価格と乖離
  • 米国産原油の輸出解禁見通し
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    1) 原油価格の低迷にもかかわらず、米国では生産が持続的に伸びている。

    原油価格が急落した2014年10-12月期半ば、多くのアナリストが、どの経済学入門のクラスでも教えるようなモデルに基づき、比較的早期に供給が反応すると予想した。しかし、残念ながら経済学入門では、債務や時間、キャッシュフローといった多くの事柄を全く考慮しない。米国で多くの油井が閉鎖されたものの、最も効率的な油井での増産に集中したため、生産量は高いままなのだ。

    まず認識しておかなければならないのが、キャッシュフローと会計報告書の違いである。石油会社は、パパママストアと全く変わらない。現金が一番だと知っている。会計では原油生産に必要な金額を計算するのに、減価償却のような非資金費用だけでなく、投資や資金調達にかかるコストも簡単に含めることができる。しかし、実際のところ石油会社にとって最も重要なのは、これからの生産にかかる現金だ。そうした現金コストは、会計原則にそって計算され1バレル当たりで示されるコストよりも、かなり低い。つまり、会計ベースでは全く収益性のない油井の多くが、将来的な現金ベースでは依然として正味プラスのキャッシュフローを生んでいるのだ。だからこそ石油会社は依然として石油、そして現金をくみ上げているのである。

    債務の問題も同様だ。多くの石油会社が多額の債務を抱えている。自分たちの油井を閉鎖してしまえば、石油のフローどころか、債務の支払いに必要な現金のフローも止まってしまう。長期的に生き残れて破綻を避けられるのであれば、いたずらに石油をくみ上げているのも理解できる。

    2) 中東産の増加が価格低迷の一因となっている。

    ほとんどの場合、中東産油国では原油の限界費用がとてつもなく低い。こうした超低コスト生産者には、原油生産を縮小しようという動機がほとんどない。それどころか、収入の必要性だけでなく、競争相手にさらに圧力を与えたいという願望も含め、さらに石油をくみ上げようという長期的な動機がある。

    そして中東情勢の変化だ。原子力発電への懸念と経済制裁の解除に関するイランと5カ国との交渉が、計画どおり前進している。これは大量のイラン産原油が世界市場に流入することを意味する。しかも、中東で起きているさまざまな紛争が、新たな局面を迎えている。こうした紛争の目指すところは、石油収入を自分たちの目的のために支配することだ。かつて1990年代にイラクがクウェートから撤退したときにしたような、石油生産施設を破壊することではない。結果的に、長らく供給の障害に関与してきた中東の政治情勢が、いまや供給増の一因となっている。確かに、中東情勢は一瞬にして変わる。しかし、この新しい現実を無視するのは、あまりにも危険だ。

    3) 中国をはじめ世界経済の減速で、エネルギー需要の伸びが鈍化している。

    米国は先進工業国のなかでも堅調なほうであるが、毎年実質GDP(国内総生産)を着実に2.5%伸ばしているにすぎない。欧州も2015年の景気低迷から脱しつつあるとはいえ、実質GDP成長率は1~2%にすぎない。日本の老化した経済は、アベノミクスや急激な円安でもってしても停滞から抜け出せずにおり、ほとんど成長していない。

    ブラジルからトルコ、タイに至る新興国では、政治的リスクが高まっており、それが景気低迷を導いているようにみえる。ただし、中国の取り上げ方は、大げさすぎる感がある。中国経済の減速は、過去数十年にわたり実質GDP成長率が平均して10%あった後のことだ。インフラ投資がかつてほどのリターンをもたらさず、また中国の貿易相手国が、新興国であれ、先進工業国であれ、単に中国という輸出装置を支えるだけの急成長を遂げていないにすぎない。輸出が成長しなければ、中国経済はさらに減速する。中国経済の減速、新興国と先進国の成長鈍化、すべてが結局、エネルギー需要がほとんど伸びないことにつながる。

    4) エルニーニョが2015~16年冬の米国に影響して、天然ガス需要が一時的に落ち込む可能性がある。

    短期的要因の最後は、米国内の天然ガス需要への影響だ。エルニーニョの気象パターンが、2015年3~7月に太平洋の赤道付近で発達した。たとえ、この秋にエルニーニョが弱まり始めたとしても、すでに米国のストームトラック(低気圧経路)に影響するだけの強さがある。そのため冬は降水量が高めで、いくらか温暖な天気になるかもしれない。天然ガスには、そのまま家庭用暖房の燃料として、また発電燃料としての役割がある。したがって、暖冬は米国の天然ガス価格にいくらか一時的な下押し要因となり得る。

    短期的要因のまとめ

    2014年終盤に原油価格が急落したにもかかわらず、基本シナリオはどれも供給増・需要減である。これは近い将来、原油価格が1バレル100ドルに戻る可能性がほとんどなく、比較的安値圏での動きにとどまるシナリオを支えている。私たちはWTI原油が33~55ドルのレンジで推移するとみている。ただし、世界経済が深刻な景気後退に見舞われた場合、20ドル割れが引き起こされるかもしれない。もっとも、私たちは世界経済の減速について悲観的にみているが、世界的な景気後退が広がる可能性は10%にすぎないだろう。一方、100ドルに戻るには、中東で大規模な供給障害が起こるか、中国など新興国の実質GDP成長率が5%から10%に戻る必要がある。どちらの可能性も短期的には、ほとんどなさそうだ。

    5) 米国のLNG輸出が米国の天然ガス価格を引き上げ、欧亜での価格を引き下げる可能性がある。

    天然ガスの生産ブームが始まるまで、米国はLNG(液化天然ガス)の輸入国であった。現在、LNGの施設を作って逆に港から輸出する大規模な計画があり、何百億ドルもの資金が投じられている。この作業には何年もの時間がかかる。ペンキが乾くのを眺めているようなものだ。ペンキはいずれ乾く。そして米国産LNGの輸出は、2017~2020年に天然ガスの価格を米国で引き上げ、欧州やアジアで引き下げる要因となり得る。

    6) 北海原油の生産減で、ブレント原油のベンチマークとしての魅力が失われる。

    北海は石油の生産が大変な場所である。スコットランドとノルウェーに囲まれた冷たい海へと送られた石油採掘の作業員に、話を聞いてみるとよい。9カ月は冬の天候で、3カ月は悪天候だと教えてくれるだろう。これが意味するのは、安値の状況では、維持費と投資コストが北海油田の生産拡大に大きく立ちはだかることだ。事実、北海油田は10年にわたり生産が低下傾向にある。維持費の増加で生産中断の恐れがあるなか、生産減によってブレントと他の原油とのベーシスが、かなり激しく変動するかもしれない。そしてベーシスが激しく変動するようでは、健全なベンチマークと言い難い。

    7) 欧亜の天然ガス価格が原油価格から切り離され、ブレントのベンチマーク性がさらに弱くなり、同地域の天然ガス価格が下がることになる。

    かつて欧州では、天然ガス長期契約の値決めにブレントが使われていた。そのことがブレントのベンチマークとしての利点であった。しかし、ガスと石油のこの結びつきは崩壊の過程にあり、その傾向に拍車がかかっている。その意味するところは、いまや欧州とアジアの天然ガス価格は、独自の事情に合わせて動かせるようになったことだ。これらの地域で天然ガス価格が下落するかもしれない。それはまた、リスク管理にブレントをベンチマークとして利用する意義がさらに失われることを意味する。

    8)米国の原油輸出が解禁される見込みから、世界指標としてWTIの使用が増える可能性がある。

    1970年代、かつて米国ではOPECが米国経済に影響力を持つことが懸念され、米国産原油の輸出を禁止する法律が制定された。しかしこの原油輸出禁止は、石油生産ブームによって無用の長物となっている。供給が豊富にあり、精製品の輸出が認められているのに原油が認められないのは、いまや全くもって意味不明である。そうはいっても、ワシントンの動きは非常に遅い。おそらく原油輸出解禁は、2016年の米大統領選挙後まで待つ必要があるだろう。それでも2017~20年には、中東産やロシア産などさまざまな品質の原油とWTIの関係がさらに密接になりそうだ。そうなれば、最重要ベンチマークとしてWTIが果たす役割は着実に増すことになる。

    長期的要因のまとめ

    長期的にみて、基本シナリオでカギとなるのは「世界指標としての米WTI原油の復活」「北海産の減少による影響」「天然ガスの値決めにブレントを使用する欧州の慣行が崩壊中」「米大統領選後に米国産原油の輸出が解禁される可能性大」である。そして天然ガスの世界では、大きなイベントが待ち構えている。米国でLNG輸出施設が本格的に稼働し始めるのだ。主な輸送手段が国内のパイプラインであれば、天然ガス市場を支配するのは、地場の需給要因である。しかし、LNGの輸出によって、米国産天然ガスは欧州やアジアの市場とつながることになる。生産ブームが始まる前のLNG輸入国であった米国が、まさにそうだった。これは価格の相対的変化を示唆している。つまり欧州やアジアでは天然ガス価格の下押し圧力がみられ、米国では押し上げ圧力がみられるということだ。

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