銅:需給動向

  • 27 Jan 2016
  • By Erik Norland

Erik Norland、シニアエコノミスト兼エグゼクティブディレクター
CME グループ

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COMEX銅先物は、1月初旬に2009年以来の1ポンド2ドル割れとなり注目を浴びた。銅はこのところ、2011年のピーク水準から57%下落した水準で推移していた。本稿は、銅価格が下落した理由と、2016年以降に銅の見通しについて検討していく。

一般的に、銅について検討する場合、関心の大部分は需要サイドに集中する。現に、銅の最大消費国である中国の減速は、銅が下落圧力にさらされている主因である。とはいえ、供給サイドを見過ごしてはならない。銅鉱山の供給は、1994年から2014年の間に倍増し、2015年の生産量は横ばいか、または伸びを継続したであろう。銅の供給は、金融危機期に価格下落したときも生産量は約3%増加した2008~2010年のように、下落局面でも伸び続ける可能性がある(図表1)。

図表1:鉱山の供給は1994年以来倍増


供給サイドの銅ノミクス:供給増が価格下落の要因

鉱山の供給が1994年以降に劇的に拡大した理由は、よく知られている。銅の採掘は、収益性がかなり高く、また少なくとも過去においては高かった。2011~2014年にかけて、銅の1ポンド当たりの生産コスト合計は、2ドル近辺で推移していた。対して、平均価格は2011年に1ポンド当たり4ドル超、2012~2014年にかけて同3ドル超であった。2015年でさえも、平均して同2.50ドル近辺となり、生産コストを概ね25%上回っている。2016年初頭の今は、銅価格が下落し、2011~2014年の期間の生産のオールインコスト水準で推移している(図表2)。

図表2:1ポンド当たりのドル(セント)の銅の生産コストと売値

現時点の銅価格が安値水準であり、鉱山会社は減産すると言いたくなる。だが、結論はまだ出ていない。分析を複雑化させていることは、2015年の生産コストの数値がまだ出ていないという事実であるが、数値が大幅に低下したと考える理由は以下の3つである。

1)   銅生産国の通貨が2014年に前年比10.4%下落し、2015年も同13.4%下落している(詳細については、付表を参照)。このため、銅鉱業界の大部分で銅生産の労働コストが低下する見込みであり、世界の銅鉱石全体の31%を供給するチリは特にそうである。

2)   鉱山会社はコスト削減を進めている。2003~2014年には、中国を中心に急増する需要に対応するための増産に主な関心が集まっていた。需要の伸びの縮小、または需要が減退していることから、生産の単位当たりコストの削減が新たな焦点となるとみられる。

3)   エネルギー価格が下落基調にあり、銅の採掘/精錬は、かなりエネルギー集約的である。

そのため、今後の銅生産への投資は減少する可能性は高く、2020年代には鉱山生産量は落ち込む余地があるものの、今後数年間の銅生産量は、横ばい、または更なる増加のいずれかとなる可能性が最も高いと予想される。

付表:

鉱山生産量 単位:百万トン 世界の生産量シェア 調整後の世界の生産量シェア 2014年通貨の騰落率 2015年通貨の騰落率  2014年加重平均の騰落率  2015年の加重平均の騰落率
チリ 5800 31.0% 35.5% -13.59% -14.39% -4.83% -5.11%
中国 1620 8.7% 9.9% -2.54% -5.35% -0.25% -0.53%
ペルー 1400 7.5% 8.6% -6.53% -12.36% -0.56% -1.06%
米国 1370 7.3% 8.4% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00%
コンゴ 1100 5.9% 6.7% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00%
豪州 1000 5.3% 6.1% -8.23% -10.91% -0.50% -0.67%
ロシア 850 4.5% 5.2% -40.65% -24.82% -2.12% -1.29%
ザンビア 730 3.9% 4.5% -13.32% -41.81% -0.60% -1.87%
カナダ 680 3.6% 4.2% -8.51% -16.08% -0.35% -0.67%
メキシコ 520 2.8% 3.2% -11.60% -14.37% -0.37% -0.46%
カザフスタン 430 2.3% 2.6% -15.38% -47.27% -0.41% -1.25%
ポーランド 425 2.3% 2.6% -14.19% -10.52% -0.37% -0.27%
インドネシア 400 2.1% 2.5% -2.11% -9.63% -0.05% -0.24%
その他 2400 12.8%     前年からの騰落率合計 -10.41% -13.42%
合計 18725            
合計 - その他 16325            
Source: U.S. Geological Survey, Bloomberg Professional (CLP, CNY, PEN, CDF, AUD, RUB, CAD, MXN, KZT, ZMK, PLN, IRP)  

この質問に答えるために、銅の10年分の月足データの変動を用いて単純な回帰分析を行い、以下の様々な市場変数で回帰させた。

図表 3:

R^2=0.42 Coefficients Standard Error t Stat P-value
WTI 0.29 0.08 3.74 0%
RMBUSD 0.43 1.06 0.40 69%
EURUSD 0.50 0.25 1.97 5%
FTSE China A50 0.13 0.07 1.86 7%
S&P 500® 0.39 0.18 2.11 4%
Fed Funds Rate -0.04 0.04 -0.88 38%

Source: Bloomberg Professional for Raw Data (CL1, CNY, EUR, XIN9I, SPX, FF6)

CME Group Economics Research Calculations

* P-Value probability of achieving such a "strong" result randomly given the number of degrees of freedom.

これらの6つの変数によって、2006年1月から2015年12月までの期間における銅価格の変動の約42%を理由づけできる(図表3)。これまで銅に最も強い影響を与えたのは、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油を指標とする原油である。既知のその他の変数を踏まえると、原油価格の10%上昇(下落)は、銅価格の2.9%上昇(下落)と相関がみられ、標準偏差は0.08%となった。S&P 500® 指数の動きは、銅に2番目に強い影響を及ぼしており、既知のその他の変数を踏まえると、平均してS&P500指数が10%上昇すれば、銅価格は約3.9%上昇する傾向を示し、標準偏差は1.8%となった。FTSE中国A50インデックスでみた中国株も影響を受けているが、それほど強くはない。銅も米ドルと(USD)と相関関係にある。ドル安になれば銅価格が上昇する傾向にあり、逆もまた同様である。最後に、銅は、ほとんどの指標でみると、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げに対する反応は、かなり小幅にとどまり、統計的に有意なほどマイナスの反応を示していない。

これらの変数、つまり原油価格の大幅下落、米ドルの上昇、米国の株価停滞と中国の株価下落、12月のほぼ10年ぶりとなるFRBによる利上げは、銅が大幅安となった理由に大きな役割を果たしている。だが、今後の見通しはどうなっているのか。

原油価格:原油価格は、底形成の過程にあり、既に底打ちしたと状態とは同じではない。米国生産量は2015年にピークに達した可能性があり、2016年は減少に転じ始めるかもしれない。2000年ごろに減少し始めた北海の生産量は、増加に転じる公算が大きい。中東とロシアの生産量は、おそらくフル生産状態が続くとみられるが、中東とベネズエラを中心に地政学的に不安定化する可能性があり、大幅上昇するリスクが一段と増している。

さきほど強調したように、原油価格は、主として銅の供給サイドの問題とみなしている。採掘と精錬は共に、エネルギー集約的事業である。原油は、これらの操業に必要な唯一、または主たるエネルギー源ではないとはいえ、原油および石油精製品の価格下落により、鉱山および金属精錬事業の操業費が減少する可能性があろう。これにより、世界の銅事業の損益分岐点の低下により、供給をわずかに押し上げるとみられる。原油が需要サイドにもたらす影響は、より強弱感が強い。原油および石油精製品の価格下落は、ペルシャ湾岸諸国、ロシア、ラテンアメリカの一部、アフリカなどの原油の純輸出国である諸国の需要に打撃をもたらすと思われる。  他方、原油安は、景気を刺激する可能性があり、したがって、世界のGDP全体の約86%を占める原油の非輸出国の銅需要を押し上げる可能性がある。

中国と株式市場:米国株は、2006年から2015年までの期間に(平均して)銅価格に最も強い影響を与えており、中国株の方向性を巡る懸念は2016年初頭の銅市場に大きな影を落としている。中国は、様々な課題と不安を抱えており、要約すると以下のような多数の中長期的な問題を抱えている。

1)   中国は、生産性向上を目指した地方から都市部への移動が中間点を過ぎ、人口が高齢化しているため、構造的な景気減速が始まっている。

2)   中国は、民間部門の債務水準が際立って高く(図表 4)、それが経済成長の足を引っ張り、金融セクターの比率が極めて高い(FTSE中国A50インデックスの時価総額の69%)中国株に打撃を与えている要因である。

3)   人民元は過大評価されており、おそらく今後大幅に切り下げる必要がある。

4)   中国の成長モデルは、民間部門と公共部門の投資支出、ならびに輸出に大きく依存している。輸出は停滞している一方、収益率が低い投資支出が一段と増えている。中国は、投資支出と輸出への依存に代わって個人消費を押し上げる必要があるが、転換を促せるような計画は存在しないようにみえる。

図表4:中国の民間部門は、新興市場の諸国よりも負債比率が高い

S&P 500®指数は、より複雑な様相を呈している。マイナス面としては、米国企業の利益は停滞しており、減益に転じるかもしれない。減益は、必ずしも直ちに株価を押し下げる要因にはならないものの、いずれは弱気相場か、または少なくとも市場のボラティリティーの高まりを引き起こす。全般的に、株式市場の見通しと銅へのその影響は、2016年が進むにつれてよりネガティブになる可能性もある。

通貨:上記に概略した理由について、中国の通貨は、向こう数ヶ月にかけて対ドルでかなり大幅下落する可能性があり、同様にその他の通貨も下げ圧力にさらされかねない。こうした状況が実際に起これば、銅にとって悪材料になることが予想される。

他方、銅「買い」に経済的利害のある国は、ユーロと円の対ドルでのパフォーマンスにより恩恵を受けるかもしれない。いずれの通貨も、FRBの利上げ後に大きく動いていない。

金利:米国と中国:フェデラルファンド金利は現在、概ね6ヶ月毎の利上げを織り込んでおり、次の利上げは2016年6月頃となる可能性が最も高い。とはいえ、連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの多くは、12月の利上げは際どい決断だったとの認識を示していた。追加利上げを行うには、インフレ率が総合とコア共に目標の2%に向かって持続的に上昇する必要がある。原油価格の落ち込みが続く状態を踏まえると、FRBが市場に織り込まれた時期よりも追加利上げを前倒しせざるを得ないような時は来ないかもしれない。

ただし、銅にとってより重要な金利は、中国の金利かもしれない。しばらくの間銅を用いた雑な取引が展開しており、そのため、トレーダーは銅を人民元(RMB)とUSDとのキャリー取引を材料の資産として使っている。現在、RMBのレート管理は緩和されており、FRBは緩やか利上げプロセスにあるものの、中国人民銀行(PBOC)は利下げの過程にあり、銅を倉庫保管する取引は、必要性が段々と低下する可能性は高い(図表 5)。このため、2016年は銅価格の下落圧力を増しかねない。

そのため、金利の見通しは、特に中国の需給バランスに対して、依然として銅にとって弱材料になるとみている。米国のインフレ率は、FRBが追加利上げへの確信を強める水準まで上昇するか否かは、現時点では不明である。

図表5:PBOCは追加緩和に踏み切ることが予想され、銅が下落圧力にさらされる可能性あり。

需要サイドの銅ノミクス

2016年に入り、銅の需要の見通しにかなり強弱感が出ている。世界の銅鉱石の約45%は中国に輸送され、その銅鉱石から様々な製品が生産される。銅の唯一かつ最大の用途は、電化製品である(図表6)。銅の需要面から判断した好材料は、電化製品に対する世界の需要は、今後も伸び続ける可能性が高いことである。エンドユーザーの大部分が中国人ではないため、製品が中国で組み立てられる否かは重要ではなく、したがって中国の動向がマイナスの影響を及ぼすとは考えにくい。同様に、消費財や一般製品ならびに輸送機器向けの銅の消費量は、中国の需要の伸びの減速が大きなマイナスの影響を及ぼすとは考えにくい。

より大きな懸念材料は、建設、産業機械・機器セグメントでの銅の消費量である。中国は建築ブーム下にあり、その建設向けの銅の消費量の3分の1程度、つまり世界の需要全体の約10%を占めている(図表7)。中国の建設ブームが急停止すれば、どのセグメントが代役を務められるのかは不明である。米国の住宅市場向けの銅の消費量は、中国に比べると見劣りし、米国の建設セクターは、よくみても成長にばらつきがある。欧州と日本では回復が見込まれているが、中国の需要減退を補えるところはどこにもない。

図表6:建設向けが銅需要の最大の下落リスクである

図表7:中国は、建設向け銅の消費量3分の1 = 世界の消費量の10%を占めている

全般的に、銅の需要は急速に成長するとはみておらず、供給の伸びに遅れをとる可能性がある。そのため、2016年か2017年のある時点で銅価格が2009年安値の1ポンド1.25近辺を再び試しても意外感はないだろう。銅と正の相関関係を示す原油は、既に2009年安値を再び試しており、底を打つ前にその水準を割り込む可能性がある(図表8)。

銅価格には、上昇リスクもある。最大の上昇リスクは、中国の予想外にプラス成長を遂げて、原油市場と株式市場で持続的上昇がみられることである。

図表8:原油は2009年安値に戻っている(または割り込む)が、銅はまだ持ちこたえている

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